「X‐rated」、それは成人向けに指定されてしまったコンテンツで、普通ならハードコアのポルノ映画がそれにあたります。しかし、世の中には劇場で公開されるポルノではない映画でも、「X‐rated」になってしまったものがゴロゴロ存在するのです。
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そこで今回は、成人向けSF/ファンタジー映画の名作を16作品ご紹介。もちろん、この記事の閲覧も成人の方のみでお願いします!
■『WR:オルガニズムの神秘』 (1971年)
ユーゴスラビア出身のドゥシャン・マカヴェイエフ監督が、西ドイツと合作で撮影した、前衛的かつブラック・ユーモア溢れる風刺的な作品。
ドキュメンタリー調で性文化について描いています。そしてタイトルの「WR」は、オーストリアの性科学者であるウィルヘルム・ライヒの頭文字です。
どこらへんがSFなのかと言いますと、ライヒは性の解放を唱えた人物なのですが、「オルゴン」と呼ばれる性的な宇宙エネルギーを発見したことでも知られています(それが元でナチスに追われ、亡命したアメリカで獄死)。しかし、最初の20分以降はドキュメンタリーではなく、マカヴェイエフ監督がその辺りからアイディアを得たフィクションです。
チ○コの型を取るシーンに、スメタナの『モルダウ』が流れるのが珍妙な取り合わせですが、監督なりのジョークなのでしょうか? アメリカの映画評論家ロジャー・イーバートさんは、この映画を「アナーキーな視点から観たセックスと奇妙な科学の映画だ」とおっしゃっています。
■『時計じかけのオレンジ』(1971年)
スタンリー・キューブリック監督による傑作ですが、暴力とセックスのシーンがとても多く、1971年の公開時に映画史上初のX指定を受けてしまいました。その後レーティングの区分けが細かくなり、ポルノ業界が自主的に好んでX指定を付けるようになったため、1973年には編集無しにR指定へ下がったという経緯があるそうです。
動画は、政府が主人公アレックスを洗脳して、女体に触れようとすると吐き気を催すようにした成果を披露するシーン。そこには当然のように女性のオッパイが登場します。
この映画が公開された後、イギリスで少年が浮浪者を殺害する事件が起こりましたが、それは少年がこの映画の話を聞いて影響を受けたことがわかり、監督のもとへ数多の脅迫状が届いたそうです。結果、我が身と家族の安全を心配した監督からの要請により、上映が禁止されたというエピソードもあります。
■『ウィッカーマン』(1973年)
我らがニコラス・ケイジ主演で2006年にリメイクされた作品。オリジナルは1973年の作品で、映像がもっとオカルティックでダークでした。
当時イギリスでは、ヌードとショッキングなラスト・シーンが含まれているのがダメだったため、X指定を受けてしまいます。現地のレーティング機関BBFCでは、オカルトをテーマとしたホラーで、裸の描写だけでなくセックスのシーンも盛り込まれているのが、その理由だとしています。
アメリカでも、つい最近まで編集された映像しか公開されておらず、未編集のものはお蔵入りしていたそうです。
■『処女の生血』(1974年)
現代アーティストのアンディ・ウォーホルが監修したホラー映画。意外にもウォーホルは60作品以上もの映画製作に関わっており、1973年には『アンディ・ウォーホルズ・フランケンシュタイン』、またの名を『悪魔のはらわた』などのホラー映画にも手を出しています。
非処女の血を飲むと、悶え苦しむドラキュラ伯爵は処女の血液以外、身体が受け付けません。母国ルーマニアでは女性たちのお股がユルくなってきたので、敬虔なカトリックが多いであろうイタリアなら堅い処女が多いだろうと、処女の血を求めて遠征します。
こういった内容のため、処女だの非処女だのという登場物たちの会話が多く、「女性は身体が清らかじゃないと」などと女優さんがスッポンポンで語るシーンが映し出されます。ということで、動画のようにヌードが頻繁に映し出されるのと、暴力的なシーンも入っているため、X指定にされてしまったそうです。
少しの後、それらのシーンが編集されたバージョンが、R指定となって劇場公開されたのでした。
■『地球に落ちて来た男』(1976年)
デヴィッド・ボウイ初出演の映画ですが、アメリカでX指定を受けてしまったため、完全版はイギリスでしか公開されなかったのだそうです。
主人公は、水を探しに宇宙から訪れ、トーマス・ジェローム・ニュートンという地球人になりすました異星人です。動画は、彼が本当の姿となってキャンディ・クラーク演じるメアリー・ルーの前に現れ、その異形の者に恐怖し、失禁してしまうシーン。
ちなみに、このシーンはアメリカではカットされたとのこと。
■『スルー・ザ・ルッキング・グラス』(1976年)
日常の性生活に不満を抱く主人公、キャサリンが鏡の中の世界でその欲望を満たしていくファンタジー要素の強い、前衛的なアダルト映画。
ポルノ男優が出演しており、エロティックなシーン、性的な虐待シーン、そして暴力的かつ超自然現象がもたらすホラー要素がたっぷりとあったため、見事にX指定を受けました。
同じ年に作られた『地球に落ちて来た男』よりも、ザ・70年代って感じがしますね。
■『ランディー・ザ・エレクトリック・レディー』(1980年)
単なるポルノにしかみえませんが、実はサンフランシスコ・アート・インスティテュートという、有名美術学校で撮影された作品。脚本は、キューブリック作品『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』のテリー・サザーン氏です。
性的に不能な人々をコンピューターと催眠療法で治療する研究所を舞台に、主人公のランディーがその治療を受けにやってくるというストーリー。
治療中に催眠にかかったランディーですが、絶頂を迎えた時のパワーが強力過ぎ、電流が逆流したらしく、制御室のパンチ・カードが部屋を埋め尽くすほど溢れ出てきてしまいます。セックスに夢中でそれに気付かない研究員2人も大概ですが...。
その結果、彼女の絶頂がきっかけで新しい酵素が発見され、科学の進歩に寄与することとなります。確かにX指定は免れない内容ですが、しっかりサイエンスしていますね。
■『ナイトドリームズ』(1981年)
ポルノでありながら、ホラー映画でもある作品。2人の科学者が眠っている女性に電極を装着し、淫夢を見せようと実験するといった内容です。
脚本は、テレビドラマ『ツイン・ピークス』、『アルフ』、『CSI科学捜査班』や、映画『バッド・ボーイズII』、『パーマネント ミッドナイト』、そして後ほど出てくる『カフェ・フレッシュ』も書いたジェリー・スタール氏が共同で参加。
アダルト業界及び、プレイボーイ誌やハスラー誌などでは、この作品が前衛的で素晴らしいと評価され、興行的にも大成功。集客などの記録も更新した名作とのことです。シュールを超えて面白おかしいシーンもあります。
■『死霊のはらわた』(1981年)
未成年にアッシュの顔はギリOK
全作が成人指定を受けた期間がありながらも、大ヒットを記録したシリーズ。特にこの1作目はカルト・ホラーの名作として扱われているのはご存知の通りです。なお、1作目と2作目はリリース当時「未指定」か「指定なし」として劇場公開されたとのこと。
タイム誌は『死霊のはらわたII』の広告を、時にはページ全面を使って何度か掲載したため、1987年に「劇場公開にはレーティングがあるのに、広告だったらX指定でもその規制を回避して載せることができるのか?」という問題を提起する記事がL.A.タイムズ誌に載ったことがあるそうです。
■『カフェ・フレッシュ』(1982年)
「【閲覧注意】史上最高のお色気SF映画(1961年~1991年)」でも紹介したこの作品は、核戦争後のディストピアが舞台のシュールなハードコア・ポルノ。
この映画では、人類のほとんどが性行為の出来ない「セックス・ネガティヴ」となり、ほんの僅かな、性行為が出来る「セックス・ポジティヴ」の人たちを無理矢理、珍妙な方法でセックスさせ、「セックス・ネガティヴ」はカフェ・フレッシュでそれを鑑賞するという世の中になっています。
白い全身タイツにネズミのお面を着けた男が舞台でセックスし、顔を黒く塗って赤ちゃんのような格好をした男たちが鑑賞するといった、混沌とした世界のお話です。
■『死霊のしたたり』(1985年)
H・P・ラブクラフトの『死体蘇生者ハーバート・ウェスト』の映画化。エロ・グロ要素が突き抜け過ぎて、コメディになっています。
劇中では生ける屍となった身体から斬り離された生首が、全裸の女性のアソコをペロペロするシーンも登場するのですが......成人指定を食らったのはそれが理由ではなく、オリジナル版にはとにかく大量のゴア・シーンがテンコ盛りで、それが主な理由なのだとか。
執拗な死体解剖シーンに蘇るネコの死体、公開時よりも長めに映し出されたグロ・シーンなどなど、全部で83箇所も編集の手が加えられ、やっとR指定になったのだそうです。
それらの違いが、スクリーン・ショットで比較されているサイトがありますので、グロ耐性のある方はどうぞ。
■『ロボコップ』(1987年)&『トータル・リコール』(1990年)
どちらも普通のSF映画として親しまれている名作ですが、実はR指定を獲得するまでにアメリカ映画協会と18回に及ぶやりとりがあったのだそうです。
ディレクターズ・カット版では未編集のものが全て観られますが、R指定時でも残ったグロ表現の一つとして、後に『ER緊急救命室』のドクター・ロマーノ役でブレイクするポール・マクレーンの顔が溶けるシーンが上の動画。
■『コックと泥棒、その妻と愛人』(1989年)
妻の愛人の丸焼き、一丁上がリ
アメリカでは「指定なし」か「17禁指定」を受けた英仏合作映画。殺された挙句、丸焼きになった男も、さらにその性器を食べるシーンもエグいですが、他にも眉をしかめるシーンが多く登場します。
この作品では、ピーター・グリーナウェイ監督が放つ独特の感覚で、人間の持つ食欲や性欲、さらには名誉を満たしたい欲望などが、観る者に強烈なインパクトを残します。一応、終末ものとして見られてはいるので、今回のリストにも選ばれています。
ちなみに、この映画で暴力的かつ粗野な泥棒アルバート・スピカを演じたマイケル・ガンボンは、後に『ハリーポッター』シリーズのダンブルドア校長となり、泥棒とは真逆の人格者を演じることとなります。
■『クラッシュ』(1996年)
みんなで触り合い
『スキャナーズ』や『ヴィデオドローム』のデヴィッド・クローネンバーグ監督による、交通事故をきっかけに性欲を掻き立てられる人々が登場する作品。
ファンタジー作品として今回のリストには選ばれたようです。例に洩れず、R指定に落ち着くまで全部で8分ほどのシーンがカットされたとのこと。ほとんどが性描写の部分ですが、それらのシーンの比較もぜひどうぞ。
■『I.K.U.』(2000年)
「【閲覧注意】最も珍妙で笑える仮想空間でのセックス・シーン12選」でもご紹介しました、台湾人のシュー・リー・チャーン監督による和製SFポルノ映画。
人間とセックスしてその体験データを集めるようプログラムされた、レイコという7体のタイプ別ロボットたちが、彼女たちをコントロールしている「アイ・ケー・ユー」システムから逃れようとするストーリーです。
それらの体験データは、チップとして自動販売機で売られており、利用する人々はVRゴーグルをかければ、肉体に触らずともヴァーチャルから絶頂体験が得られるようになっています。そこで競合他社が別のアンドロイドを開発し。レイコたちにウイルスを仕込み、体験データを盗み出して自社の製品としたからさぁ大変......。
ロボットたちの起用は、『ブレードランナー』のレプリカントたちに影響を受けたであろうシナリオだと考えられますが、この作品はポルノでありながらも、紛うことなきSF映画といえるでしょう。
以上、「io9」が選んだ16本の「名作な未成年禁止SF/ファンタジー映画」でした。
補足ですが、公開当時にアメリカとイギリスで成人指定になったものの、その後に規制が少し緩くなったり、編集によりR指定や17禁のNC-17などにレーティングが下がったりした作品も入っています。時代やアメリカ映画協会の考え方で変わることもあるのですね。
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(岡本玄介)
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