『2001年宇宙の旅』は何通りもの見方が出来る映画です。しかし、本作を「食べ物の話」だという主張を聞いたことがあるでしょうか?
今回は、この荒唐無稽なようで非常に興味深い、『2001年宇宙の旅』は「食べ物の話」説をご紹介します。
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io9のチャーリー・エディ記者は『2001年宇宙の旅』を繰り返し視聴した結果、映画の尺に対して、やたらと食事シーンが多いと感じたそうです。そして、「The Hidden Meaning of 2001: Space Odyssey」というエッセイ(2007年)を書いた、ジョッシュ・ロンセンさんも同様の意見を持っていました。
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モノリスが「食べ物の神」でないとするなら、「銀河系宇宙空間の食べ物活動家/評論家」と言えます。モノリスは、ヒトザルが小枝や草を食べていること、ヒョウの餌となっていること、水を巡って領土争いしていることを知り、どれほど驚いたのでしょうか。そして、モノリスはヒトザルを被食者から捕食者へと進化させたのです。
The Hidden Meaning of 2001: Space Odysseyより一部抜粋
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ロンセンさんは、モノリスがヒトザルに食べ物の美味しさを教えたと主張しています。つまり、肉の旨みを教える為に、道具の使い方を伝えたと言うのです。道具の使い方を知ったからこそバクを殴り殺したというのは、あまりにもストレートな物の見方だったのかもしれません。
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それから400万年が経過し、観客はPAN AMシャトルの中での展開を見ることとなります。フロイド博士はミーティングの前に、遠く離れた娘にビデオ電話をかけます。
誕生日を迎える娘がほしがったものは「ブッシュベイビー」。これは、ヒトザルが食べていた(小枝や草)ブッシュから来ているのではないでしょうか? つまり、暗に「食べ物のことを忘れるな」というメッセージが込められている言葉なのです。
そして、ミーティングに参加するフロイド博士。彼は「お茶でもいかか?」という誘いを無下に断ります。非常に失礼な行いです。共に何かを口にすることで得られる仲間意識というものがあります。この飲み物を「勧める」「断る」というのは、かつてのヒトザルの水を巡った諍いを思い起こさせるのではないでしょうか。
The Hidden Meaning of 2001: Space Odysseyより一部抜粋
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次に、パックに入った液体状の食べ物が登場した後のやり取りに注目してみましょう。月面に着陸する前の船内にて、フロイド博士と2人の乗組員は軽食を取ります。そこでのやりとりは以下の通り。
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「腹減っている奴はいるか? 」
「それは一体なんだ? チキンか?」
「そんなもんだ。味は変わらない。」
「ハムはあるのか?」
「ハム、ハム、ハムか......。」
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ここでロンセンさんが着目したのはハムという食材を選んだ理由。スタンリー・キューブリック監督はユダヤ人の両親の元に生まれており、ユダヤの考えではハムは禁じられた食べ物とされています。
モノリスがユダヤ教を重んじていて、ハムを食べことに対して怒ったとは考えにくいですが、完璧主義者として有名なキューブリック監督がユダヤ教の禁じる「ハム」を映画に登場させたのには意味があると主張しています。
そして乗組員が禁断のハムを食べた直後、モノリスは無線信号を発し、人間は木星に向かうこととなります。モノリスはここで人類に食べ物のレッスンをしようとしたと、ロンセンさんは書いています。
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「木星使節」では、人々が食べ物をおざなりに扱っている様が描かれています。まず、木星探査メンバーの5人の内、3人が人工冬眠中。つまり、「食べ物を口にしなくても生きていける状態」です。
次に、「目で楽しむ」ことを無視したペースト状の食べ物。これらは「銀河系宇宙空間の食べ物活動家/評論家」モノリスにとって、屈辱の他なかったでしょう。
また、HAL9000とフランクが興じているチェスは、「Roesch - Schlage Hamburg 1913」の局面を抜粋したものです。では、なぜこの試合だったのか? それは対局者の名前が「ハンバーグ」だったからとは考えられないでしょうか。
The Hidden Meaning of 2001: Space Odysseyより一部抜粋
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こじつけとしか思えないような話ですが、完璧主義者のキューブリック監督なら理由があったはず。そしてその理由が「全てを食べ物のキーワードで」だったのかもしれません。
食べ物の描写はまだまだ続きます。
プールは誕生日を迎え、両親から誕生日を祝うビデオメッセージを受け取ります。その中に映し出されたのは大きなバースデーケーキ。しかし、ポールはそれにありつくことはありません。
ここで、ロンセンさんは「3年間のミッションということがあらかじめ分かっているのに」と、最先端技術を搭載した宇宙船なら長期保存可能の(ペースト状)バースデーケーキを用意するくらいできたにも関わらず、そうしなかったことに違和感を持ったと書いています。
その後すぐにHALは不可解な動きを見せ始め、ポールと3人の人工冬眠中だった乗組員を殺し、デイブの命も奪おうとします。しかしデイブに反撃されたHALは切断され、薄れゆく記憶の中で『デイジー・ベル』を歌います。
以前にも、なぜHALは『デイジー・ベル』を歌うのか? に関してはご紹介しましたが、ロンセンさんはヒトザルが食べていた草を思い起こさせるための選曲だと主張しています。
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モノリスは、木星についたデイブを歓迎していなかったことでしょう。だから彼を不思議な空間へ送り込み、そこで素晴らしい食事を目の前に数十年間も老いさせるという拷問に近い仕打ちをしました。そして、デイブはここで初めて目にも美しく美味しいと感じることの出来る食事を口にし、モノリスが現れ、デイブはスターチャイルドとなって生まれ変わったのです。
The Hidden Meaning of 2001: Space Odysseyより一部抜粋
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ロンセンさんとエディ記者は共に、「他のSF映画と比較すれば分かりますが、『2001年~』には食事シーンが異常なほど登場します。しかも、それらのシーンは尺が長く、食事の内容、食事を取る様子、それに関係する会話も丁寧に描かれているのです」と、この作品において食事がどれほど重要視されていて、またキューブリック監督のスタイルを考えると、決して偶然ではなく、『飯テロ映画』ではないにしても、食べ物が大きなポイントとなっていると、この説の正しさを主張しています。
そして、多くのセリフや事柄が食べ物に関係していると「元ネタ」をバラしているロンセンさんは、ある重要な数字についても触れています。それはモノリスの各辺の比、1:4:9。
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モノリスの面は1:4:9の比...、実は、これはあるレシピに関係しています。ズバリそれはチョコレート・ファッジ。チョコレート・ファッジの材料の分量の比率の数字なのです。
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いかがでしたか? 突飛な説ではありますが、キューブリック監督のことだから無くはないかも......と感じる部分はあったのではないでしょうか。
(中川真知子)
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