映画のDVDやBlu-rayを見ていると「別エンディング」が収録されていることがありますよね。あれは、完成試写会をした時の参加者の反応が悪かったために差し替えられた「オリジナルエンディング」と言われるものです。
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劇場公開版のエンディングは試写を行い、多くの人の意見を参考にしているので、オリジナルエンディングより良いものになっていることが多いのですが、中には「こんなエンディングじゃ原作に失礼だ」とか「このアレンジは台無しだ」という声が上がったものも、残念ながら存在します。
そこで今回は、io9がまとめた「有名ホラー映画の別エンディング」をご紹介します。皆さんはどちらエンディングがお好きですか? なお、各作品のクライマックスのネタバレがありますので、ご注意ください。
■『アイ・アム・レジェンド』(2007): なんて素敵にアポカリプス
この劇場版エンディングは恐ろしいだけでなく、原作であるリチャード・マシスンの小説『地球最後の男』を裏切る形になっています。
原作に沿ったオリジナルエンディングはこうです。ワクチンの実験台にするために生け捕りにした女ゾンビを取り返そうとネビル(ウィル・スミス)の研究室を襲ったゾンビ達の行動を見て、ネビルは彼らが女ゾンビを救いに来たのだということに気づきます。女ゾンビを解放すると、ゾンビのボスは彼女を優しく抱きかかえて頬ずりし、知性や感情があるといった行動を見せ、ネビルには手を出さずに去っていこうとするのです。
つまり、ゾンビは人間とは違う新しい生物としての社会生活を営んでおり、「治療」と称してゾンビを殺していたネビルは、ゾンビにとって「伝説のモンスター」だったということに気づく...というものでした。
劇場版のエンディングは、スクリーンテストを行った結果「ここまで来て、ネビルが悪だったなんて! 」と否定的意見が多く寄せられたことで急遽変更されたものです。
最後まで「ゾンビ=悪」「頑張るネビル=善」という形の方がしっくり来ると考えられたのでしょう。ゾンビに研究室を襲われたネビルは女ゾンビを実験台にして完成させたワクチンを生存者の女性に託し、ゾンビを道ずれに自爆して「伝説の男」となった、という最後に変更されました。
■『フレディ vs ジェイソン』 (2003): 危険なセックス
伝説的スラッシャーホラー映画の伝説的モンスターが激突する『フレディ vs ジェイソン』の劇場版ラストは、生き延びたジェイソンが切断されたフレディの首を持って湖から姿を現しますが、フレディは生首になっても生きていて、カメラ目線で観客に向かってウィンク、高笑いが聞こえるというものです。
本作のエンディングは何パターンか考えられていました。まず一つが撮影されていないバージョンで、『ヘルレイザー』シリーズの魔導師ピンヘッドがカメオ出演するというもの。この案がボツになったのには、ニューラインがキャラクター権利の購入に乗り気でなく、実現しなかったそうです。
そしてスクリーンテストされたのが次のもの。
ローリとウィルが初のセックスに興じている最中に、ウィルがローリを少々乱暴に扱い始め、首を押さえつけます。ローリが「ちょっと、あんたおかしいんじゃないの!? 」と叫ぶと、ウィルの右手の指先からフレディの爪が生えてきて...からのエンドクレジットというもの。
このエンディングを見た試写会参加者達は、まさに「こんな最後っておかしいんじゃないの?」という心境だったようです。
■『キャリー』 (2013): 股間から手
リメイク版『キャリー』は、キャリーの墓石に亀裂が入るというキャリーの生存を匂わせるような終わり方をしています。しかし、Blu-ray収録の差し替えられたエンディングは、よりホラーテイストでした。
スー・スネルが病院で出産に挑んでいると、股から血だらけの大人の手が出てきてスーを掴もうとする、という最後まで血まみれの終わり方だったのです。
■『ファイナル・デスティネーション』 (2000): 死神の休暇
劇場版エンディングでは、アレックスとカーターとクレアが元々の修学旅行先だったパリを訪れ、死神をやり過ごしたことについて話し合います。クレアは「もしも180便に乗っていたら、飛行機事故の生き残りは一人になってしまう。つまり、これは最初から全て計画されていたことなのでは?」と持論を立てます。
そこで再び死神の魔の手が彼らに忍び寄り、アレックスに襲いかかった悲劇からカーターが守ったことで死の順番が変わり、落ちてきた看板にぶつかってカーターが命を落とす...というところで画面が暗くなりました。
一方の別エンディングは、クレアとアレックスが浜辺でセックスし、結果的にクレアが妊娠して死を回避するという『2』で出てきた「生が死を打ち消す」アイディアが使われています。
アレックスは車の中に閉じ込められたクレアを救おうとして死亡。月日は流れ、クレアは出産し、優しい風がクレアとアレックスの息子を包みます。最後はクレアとカーターが180便の事故の記念碑の前に集まり、新しい命を誕生させることが死のサイクルを止める術だったとクレアが語るのでした。
■『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』 (1986): オードリー2無双
劇場版はオードリー2に勝利した人間が「末長く幸せに暮らしましたとさ(?)」というハッピーエンディング。
一方の、オリジナルはオードリー2がオードリーとシーモアを食べて、アメリカ国内で大暴れ(なんて言葉では済まされないレベル)。最後は自由の女神を制圧するというものです。こんなに制作費が掛かっていそうなエンディングを丸ごとカットしたのはさぞかし勇気がいたことでしょう...。
■『ディセント』 (2005): サラは脱出できない
イギリスの映画館で公開されたオリジナルのエンディング(日本公開もコレ)は、サラが洞窟から脱出して車に乗り込み勢いよく走り出すも途中で停車して泣き崩れます。落ち着くと嘔吐、そして死んだ友人のジュノの幻影を見て叫ぶが、それは全てサラの夢で、実は脱出などしておらず、まだ洞窟の中。サラは燃える松明を見つめる...というものでした。
一方、アメリカのものは、サラは洞窟の脱出に成功。そして車内でジュノの幻影を見て叫んで終わりというものでした。つまり、「夢オチ」の部分が全てなかったことになったのです。
■『エスター』(2009): エスターは死なない
あどけない顔をした冷徹な殺人鬼エスター(リーナ)は継母に顔面を蹴られ、首の骨を折って死ぬというのがオリジナルのエンディング。ハッピーエンドです。
しかし、別エンディングではエスターは死なずに凍った湖から這い出て(その部分は写っていないけれどそのはず)、傷だらけの顔に少女の化粧を施し、ハミングしながら階段を降りて警戒する警察の前に行儀よく姿を表し、「私はエスターよ」と自己紹介。再び殺戮が繰り返されるだろうということを予感させる終わり方になっています。
■『死霊のはらわたIII キャプテン・スーパーマーケット』(1992): 王様万歳
劇場版のエンディングは、元の時代に戻ったアッシュは再びマーケットで働いており、自分の経験を同僚に聞かせています。そこに彼を追ってきた死霊が襲いかかり、アッシュはショットガンを手にとって勇敢に死霊を撃退するというものでした。
しかし、オリジナルのエンディングはマーケットとは異なり、随分と規模の大きな終わり方でした。
元の世界に戻すマジック・ポーションを飲んで眠りについたアッシュでしたが、目覚めたのはビッグベンは瓦礫の山に埋もれる荒廃した世界。アッシュは「寝過ぎたー!」と叫ヴというもの。
ブルース・キャンベルとサム・ライミ監督はこちらのエンディングを気に入っていたそうです。そして、このシナリオなら次の作品にも繋がり易かったであろうことが想像できますが、壮大すぎたのかもしれません。
■『ホステル』 (2005): 少女誘拐
※注:他の作品と違い、劇場版の最後はグロテスクです。
公開された『ホステル』のエンディングは、パクストンが駅構内のトイレに入った猟奇ビジネスマンの後をつけて、指を2本切断してから便器に顔を押し付けて溺れさせようとし、最後に喉を切って殺すという残虐なものです。
別エンディングはここまでの残虐な描写はないものの後味が悪いものでした。それは、パクストンが猟奇ビジネスマンの愛娘を誘拐し、汽車で去るというものだったのです。
MTVのインタビューで、監督のイーライ・ロスはエンディングを変更した理由を次のように語っています。
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ロス:「これは完璧なエンディングだ」と自信が持てるものを撮ったんですが、いざ観客に見せてみたら300人中10人が「これはヤバいぜ!」という感じで、残りの290人が「は!?」という反応でした。
MTV:私は、監督はパクストンにビジネスマンの娘を殺させることで復讐させたいのだろうと思っていました。しかし、別エンディングは単にパクストンが娘と一緒に汽車で去っていくところだけ見せていましたね。つまり、彼女を殺したのでしょうか?
ロス:あれの含みは、パクストンが彼女を救ったというものなんです。私が元々書いた脚本では、ジェイ・ヘルナンデス(パクストン)が少女の喉を切るというものだったんですが、そんなのはパクストンの起こす行動ではありません。
その代わり、少女を攫うという方法を取らせようと思ったんです。彼は、結果的にそれがビジネスマンにとって拷問になると知っていたんです。しかし、(試写会参加者は)汽車が発車した後、少女に何が起こるかのロジックに気づかなかったんです。それは私が望んだ結果ではありませんでした。
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■『ハンニバル』 (2001): 脳みそ機内食
この別エンディングでは、ハンニバルは腕を失うことなく、クラリスに愛情を抱いていたことを観客に伝えるためにキスしてから逃げるということになっていました。そして、飛行機の中でレクターの食事(ネタバレですが、まんま脳みそ)に興味を持った少年に一口味見させてみるという流れにつながります。
■『1408号室』 (2007): 死者を見た
劇場公開版のエンディングは、マイクが死んだ娘と再開した様子を録音した場所である悪魔のホテルルーム1408号室に火を放ち、脱出に成功(本当に無事に脱出したのかについては様々な解釈がありますが)。その後、マイクはリリーとの生活に戻ります。
リリーは火災の中で無事だった荷物を見つけ、処分したほうがいいとマイクに言いますが、マイクは「これは残しておくべきだ」と箱の中のテープレコーダーを取り出して再生します。するとテープレコーダーから、死んだはずの娘の声と「どこへも行かせない」というマイクの言葉が流れてくる...というものでした。
一方の別エンディングは、ホラーらしい終わり方です。
マイクは火事で死に、葬式の直後にホテルのマネージャーであるオリンがリリーの元にやってきて、「マイクは次の犠牲者を出さないようにと自分の命を投げ出してくれたのだ」ということを伝えます。そして彼の遺留品を渡そうとしますが、リリーは拒否。オリンは車に戻り、テープを再生して死んだ娘ケイティとマイクの会話に耳を傾けていると、バックミラーには少女とその父親らしき人物が写ります。その様子をミラー越しに見ていると、突然現れる皮膚が焼けただれた死者。
そしてシーンは変わり、今度は1408号室へ。幽霊となったマイクが窓辺でタバコを吸っています。そして娘の声に誘われるまま、ドアの方に向かって歩いていく、というものです。
■『パラノーマル・アクティビティ』 (2009): カメラに向かってニッコリ
オリジナルバージョンは、警察がやってくるまでケイティがベッドルームで緊張した感じで座りこんでいる、やたら尺が長いものでした。
そして、DVDに収録されている差し替えられたバージョンは、悪魔に取り憑かれたケイティがカメラに向かって来て、包丁で自分の喉をかっ切って絶命というもの。
その後、スティーブン・スピルバーグ監督の助言があって作られた劇場公開バージョンが、カメラに向かってケイティが笑顔を見せたと思ったら、突進してきて画面暗転。その後のエンドクレジットで、ミカの死体が後日警察によって発見されたものの、ケイティーは行方不明との旨が表示されるというものでした。
■『28日後...』 (2002): ジム死亡
劇場公開のエンディングでは、セリーナとハンナが廃墟と化した病院で腹部を撃たれて重傷を負ったジムの命を懸命に救おうとし、ジムは回復。そして、3人は布で作った「Hello」の文字を偵察機に見せることに成功し、最後は救助隊に救われるというもの。
しかし、別のエンディングではハンナとセリーナの努力も虚しくジムは死んでしまいます。
悲しみにくれるハンナは「これからどうするの?」とセリーナに聞きます。セリーナは涙を拭い、決意の目をして「行くのよ」と一言。そして二人は共に病院を後にするのです。
実は、フィルムメーカーはジムが病院のベッドで目覚めたことで始まり、病院のベッドで眠ることで終わるというジムのサーガとなるこのバージョンの方を気に入っていたようです。
いかがでしたか?
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[via io9]
(中川真知子)
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