映画でもアニメでも漫画でも、プロジェクトが計画されたは良いけれど、日の目を見ることなくボツになるということは決して珍しいことではありません。そして、中には「これは実現しなくて残念だ」と思わせてくれるようなボツ作品もあるのです。
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そう、『ファイナルファンタジー4』のアメコミのように。今日紹介するのは、Toyboxが取り上げた、幻となった『FF4』(アメリカ初リリース時『FF2』)の公式アメコミです。
カート・ビュシークとデル・バラス、そしてマイク・ミニョーラの3人によって描かれる予定だった『ファイナルファンタジー4』のアメコミは1992年後期にリリースされる計画でした。
この計画にアサインされたビュシークは、『ファイナルファンタジー』の世界を舞台にしたオリジナルのストーリーのアウトラインを書いたところ、依頼主のスクエアソフトは非常に気に入ったそうです。
しかし、新しいバージョンの『FF』ゲームを作ろうとしていたこともあり、ビュシークは「『FF4(北米版FF2)』のストーリーになるように書きなおして欲しい」と言われたのだとか。
corporate-selloutに、当時のことを回想したビュシークのコメントが次のように掲載されています。
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「つまり、最初から書きなおしだというわけだ。『FF』のキャラクターは戦士たちでアドベンチャーものなのに、『FF4』はお姫様やリーダーなんだから。全く違った内容にしないといけなかった。」
「『FF2』を基に、ベル・バラスが日本のデザインをアメリカのスタイルに変更させたりしたよ。」
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4話構成で、ビュシークは全ての脚本を仕上げ、著名なコミックアーティストのデル・バラスが絵を描き、マイク・ミニョーラが表紙を付けました。しかし残念なことに、出版を計画していたディズニーのハリウッドコミックが1933年に破産してしまったために、シリーズの計画は白紙に戻ってしまったのでした。
この幻のアメコミの存在は、数年前にcorporate-selloutのサデウス・ボイドさんが、当時の事に触れたビュシークのtumblrの書き込みと共に紹介したことで注目されるようになりました。
この時、「この作品は誰の手に渡っているのか、それとももう無くなってしまっているのかも分からない」といったことが書かれていましたが、先日になってポップカルチャーの鑑定士であるアレックス・チャンさんがtumblrにミニョーラによる表紙をアップし、それをビュシークが転載したことで再び話題になりました。
ミニョーラの表紙
天野喜孝氏のキャラクターデザインとは程遠いテイストではありますが、これはこれでアメコミとしてはアリではないでしょうか。
今や超有名アメコミアーティストになった3人が、まだ若かった頃に作ろうとしていたアメコミ版『ファイナルファンタジー4』。この企画の後、ビュシークは「マーベルズ」で有名になり、ミニョーラは2年後に『ヘルボーイ』をヒットさせました。この2人がどんな『FF4』を作ろうとしていたのか...。
「発行されなかったことが残念でならない」というアレックス・チャンさんのコメントをビュシークがそのまま転載していましたが、きっと手がけていた本人もお蔵入りになってしまったことを残念に思うくらいの物だったのでしょうね。
[Corporate Sellout via Robot 6 via Toybox]
(中川真知子)
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