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まもなく公開となるマーベルのスペースオペラ・ヒーロー映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』。
今回は本作を手がけた、『ドーン・オブ・ザ・デッド』(脚本)や『スリザー』(監督・脚本)、『スーパー!』(監督・脚本)、そしてゲーム『ロリポップチェーンソー』(脚本)などの作品でもお馴染みの、ジェームズ・ガン監督にインタビューして参りました。
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の製作秘話から、新人時代に映画作りを学んだトロマ・エンターテインメントへの思いまで、たっぷりお話を聞かせていただきました。
――原作の『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー』はそれほど知名度の高いヒーローチームではありませんが、最初に彼らの映画を撮るという話を持ちかけられた時、どう思いましたか?
ジェームズ・ガン(以下ガン):正直、最初は良い企画かどうかわからなかったですね。少しイカれてるんじゃないか? とか、他にも映画に登場していないヒーローはいっぱいいるのに、「なんでガーディアンズなんだ!?」とさえ思いました。
でも改めて考えてみたら、だんだんと興奮してきたんです。僕の大好きな「スペースオペラ」、「マーベルのスーパーヒーロー」、そして「アライグマ」。その全てが入っている作品ですからね。
そして、すでに存在するマーベル映画の世界の一部でありながらも、自由な発想で新しい世界観を作り上げる機会を与えてくれる映画だということにも興奮しました。
――そういった新たな世界観の映画を作る上で、一番大変だったことはなんでしょうか?
ガン:ストーリーを語る前に、この作品の世界に存在する沢山のアイデアやキャラクターを、冒頭25分で一気に説明しなければならないという点ですね。
観客はおかしな人名や未知の惑星だらけの不思議な世界に投げ込まれるわけですから、恐らく最初は圧倒されます。なので、そういう世界観を作りながらも、なるべく説明はシンプルにするように努力しました。
――本作は監督の今までの作品と比べ、製作費もスケールもかなり大きいかと思います。これまでの作品に比べて何か特別苦労したところはありますか?
ガン:製作費が大きいことはすごく安心出来ることでした。今まではアイデアがあっても製作費の関係で実現できないことは多々あったんです。でも、この映画ではすごく自由に、思い描いたものをそのままスクリーンに実現できました。
苦労したことといえば、とにかく作るのに時間がかかったことでしょう。マラソンみたいにずっと作り続けるわけですからね。とはいえ、作ること自体は楽でした。
作りたいものを作れましたし、そのために世界中から最高の人材を集めることができたんです。プロダクション・デザイナー、助監督、撮影監督、とにかく全員が最高の才能の持ち主で、僕がやりたいことをすぐに理解してくれました。
監督によっては、低予算映画から大作に移って精神的に圧倒されることもあるようですが、僕は大丈夫でしたね。それは僕が映画を撮り始めて20年経っていて、映画作りにすっかり慣れているからかもしれません。現場にいるのが快適なんです。
――本作の上映時間は2時間ほどですが、世界観の説明に加えてストーリーを語るのに十分な時間でしたか?
ガン:十分だったと思います。ある面では「足りない! もっと語らせてくれ!」とも思っていますが、それを言い始めたら、いくら時間があっても足りないですからね。
キャラクターたちの間に友情が芽生え始めるという部分を描くには、2時間で十分だったと思います。複雑なものだらけの中で、シンプルなストーリーを語っている作品なので。
――入れたくても入れられなかったシーンはありますか?
ガン:ドラックスのシーンです。ドラックスの身体には、近くで見ると骸骨が殴りあってるように見える恐ろしいタトゥーが入っています。そのシーンでは、ドラックスがロケットにそれぞれのタトゥーの意味を説明するんです。
実はそれぞれのタトゥーは、娘が生まれた日や初めて一緒に泳いだ日、彼が家族と過ごした思い出を意味しています。ただ、彼らの文化ではそれが骸骨っぽくなると。
このシーンはどうしてもタイミングが合わず、入れられませんでした。カットするのは悲しかったですが、そうすることで映画のテンポは良くなりましたね。
――そのシーンは今後ソフト化された際に特典映像などで見られるのでしょうか?
ガン:ええ。きっと見られますよ。
――クリス・プラットをスターロード役に選んだ経緯を教えて下さい。
ガン:当初クリス・プラットは候補ではなかったんです。その頃の彼はヒーロー体型ではなく、ぽっちゃりしていましたからね。
ある日、キャスティング担当のサラ・フィンがクリス・プラットを薦めてきました。当時すでに150人以上の役者をチェック済みで、有名な人から無名な人まで、20人くらいの役者はスクリーンテストをしていたんですが、それでもスターロードに合う人物は見つかっていませんでした。
そういう辛い状況でもクリス・プラットには会うつもりがなかったんです(笑)。でも何度も何度もサラは彼を推薦してきて、どうにか僕を騙して、突然、彼と会うことになったんです。それでオーディションをして、20秒で彼こそがスターロードだとわかりました。
彼はスターロードというキャラクターに、それまでにオーディションした役者には無かった要素である、不思議な魅力と脆さをもたらしたんです。それで彼に決めました。スターロードをやるには体重がありすぎでしたが、例え太ったままだったとしても、彼はきっと最高のスターロードを演じてくれたでしょう。
――本作の脚本はどのようなプロセスで作られたのでしょうか?(本作は脚本もジェームズ・ガン監督が担当)
ガン:まず、(ニコール・パールマンによる)基礎となる脚本があり、そこへ僕がより細かいキャラクターの描写、音楽の要素、ソニーのウォークマンなどを加えました。ほとんど書き直したと言ってもいいかもしれません。
元の脚本には、ロナン、ネビュラ、ヨンドゥ、ノヴァ・プライム、コレクターといったキャラクターたちはいませんでした。我々にも通じる人間ドラマが描かれていたんですが、それをよりユニークなものにしたんです。
――ヨンドゥといえば、原作よりも悪党寄りなキャラクターになっています。なぜそのように変えたのでしょうか?
ガン:ヨンドゥに関しては、正直に言うと僕の友人であるマイケル・ルーカーがきっといい仕事をしてくれると信じて、彼のために書いたキャラクターなんです。
僕は原作でのヨンドゥのパワー(弓で放った矢を口笛を吹き自在に操る能力)が大好きで、彼をどうしても出したかったので、ストーリーに合うように設定を変えました。
僕はずっとコミックの大ファンなんです。ふらっとやってきて、(原作のことは)気にせず全部書き換えちゃうような人ではなくね(笑)。
でも、原作通りにやるのもいいんですが、より面白くなる改変をして、ファンには再現も違いも楽しんでもらいたいとも思っています。本作ではそういう違いがあっても、原作のファンが受け入れてくれているのがとても嬉しいです。
――原作との違いといえば、ヨンドゥは弓無しで腰のベルトに付けた矢を口笛で飛ばします。なぜ弓を無くしたのでしょうか?
ガン:口笛で矢を操作できるのなら、弓は無くてもいいんじゃないか? と思ったんです。その方が筋が通っていると思います(笑)。
――マーベルの中で一番好きなヒーローとヴィランは誰でしょうか?
ガン:一番好きなヒーローはロケットです。僕の映画にも出ていますしね。でも、もう一人挙げるとしたら、あまり有名ではないかもしれませんが、ムーンナイトですね(エジプトの月の神と契約したことで超人化した、月の満ち欠けで力が増減する元傭兵の多重人格ヒーロー)。
ヴィランは......難しいですね。グリーン・ゴブリンが一番好きだと思います。あと、ちょっと間抜けなヴィランだけど、ブーメラン(その名の通り様々なブーメランを投げて戦う元野球選手のヴィラン)も好きですね。ヴィランは好きなキャラクターが沢山います。
――アメリカでは、本作は過去のマーベルの映画に比べて女性の観客の割合が多いとのことですが、それはなぜだと思いますか?
ガン:この映画には怒りっぽくって可愛いアライグマが登場するからでしょう。女性はアライグマが好きですから、アライグマに魅力を感じ、家族の繋がりや友情を描くストーリーを気に入ってくれたんだと思います。
他のマーベル映画に比べると男っぽい雰囲気ではなく、ユーモアが沢山詰まっていて、優しさや脆さを感じさせる映画でもあります。そういったところも女性に人気の理由かもしれません。
――監督の映画人としてのキャリアのスタート地点である、トロマ・エンターテインメントのファンが日本には沢山います。監督がトロマで学んだことは、今映画を撮るにあたってどのように役立っていますか?
ガン:映画作りの基礎は全てトロマで学びました。『トロメオ&ジュリエット』(監督の処女作)では、脚本以外にもキャスティング、ロケハン、助監督、ラブシーンの撮影、編集、配給の手伝いやポスターのデザインなど、色々やって、映画に関わる全てのことを経験しました。
製作から完成後の配給のことまで経験している映画製作者は珍しいと思います。トロマは全てを教えてくれました。トロマとロイド・カウフマン(トロマ・エンターテインメントの創設者)には感謝しています。
――本作にはそのロイド・カウフマンが出演していますね。どういった流れで今回の出演は決まったのでしょうか?
ガン:彼はいつも僕の映画に出たいと連絡してくるんですよ。本作でも、出演するためにわざわざイギリスまで来てくれました。
――トロマのファンも今回の出演をきっと喜んでいると思います。
ガン:僕も嬉しいですよ。ロイドは僕の第二の父のような人で、すごく親しい関係です。彼が今まで撮ってきた映画とはちょっと違うものですが、彼は僕の映画に出るのが大好きなんですよ。
撮影現場にいる時、皆にロイドを「僕に最初のチャンスをくれた人」と紹介したら、拍手が起こって、彼は涙を浮かべていました。ロイドが現場にいてくれるのは本当に嬉しいです。
――本日はありがとうございました。続編も楽しみにしています!
ガン:僕もだよ!
監督の言葉からは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』を撮るのが楽しくて仕方がなかったということと、アライグマが大好きなんだということが伝わってきました。本作のような大作を撮り、大ヒットさせても、お世話になったトロマとカウフマン先生への感謝を忘れていないのも素晴らしい!
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』は宇宙のチンピラたちが、一握りの正義感を発揮して、宇宙を滅ぼそうとする巨悪に立ち向かう姿を、70年代中心の音楽に乗せて描く、最新作なのにどこか懐かしいスペースオペラ。
原作愛に溢れていながらも、原作や今までのマーベル作品の事前知識は一切不要な作品なので、スペースオペラが好きなら劇場に見に行くしか無い一本です!
映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』は9月13日(土) 2D・3Dロードショー。
(C)Marvel 2014 All rights reserved.
(傭兵ペンギン)
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