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かく言う訳者も、そう思った事があるひとりです。VFXが今程洗練されておらず、やたらめったら使われ始めていた頃は、その無機質で自己主張が強く、下手するとストーリーを陳腐に見せてしまいかねない視覚効果にへきえきしたものです。
しかし、SFXやVFXは効果的に使われると、言葉だけでは表現出来ないモノを上手い具合に語ってくれるようになります。そのような視覚効果が素晴らしいからこそ面白い映画をio9がまとめていたので、皆さんにも紹介したいと思います。
それでは、以下から詳細をどうぞ。
『メトロポリス』(1927年)
この壮大なスケールをここまでリアルに表現出来たのは、特殊効果担当のオイゲン・シュフタンが考案した「シェフタン・プロセス」のお陰といえるでしょう。
シュフタン・プロセスとは、裏面の付いていない鏡をカメラの前に45度の角度で設置し、ミニチュアのセットを鏡に映るように置き、その反対側で、あたかも巨大なセットの中で俳優達が演技しているように撮影するというものです。鏡に映ったミニチュアをカメラで撮影している為、カメラの位置を動かす事が出来ないという難点はありますが、この技法はVFXがここまで発展した今でも使われています。
なお、1927年に制作された『メトロポリス』は、現在パブリックドメインになっているため、Youtubeでも視聴出来るようです。
『禁断の惑星』 (1956年)
シェークスピアの『テンペスト』を原作とする『禁断の惑星』の成功は、エイリアンの世界と美しい宇宙船、そしてロビー・ザ・ロボットと、モービアスの潜在意識を具現化したイドの化け物の存在無くして、なし得なかったでしょう。
ミニチュアとマットペイントを多用しただけでなく、アニメーションと実写を混合させてモンスターをフレームに重ね合わせたことで、不可思議でスケールの大きな世界観を作り出しました。これら全ての技術が、この物語を語る上で必要不可欠でした。
『2001年宇宙の旅』(1968年)
それまでのSF映画のイメージを根底から覆す事となったスタンリー・キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』には、モンタージュやスリット・スキャンといったスペシャル・エフェクトが使われています。
このスリット・スキャンという技法は、抽象映画作家であるジョン・ホイットニー氏が、同作のラストで登場するスターゲートのシーンの為に考案したもので、スリットを入れた黒い紙を被写体とカメラの間に置き、被写体の後方からライトを当ててカメラを開放。そしてスリットをずらしながら撮影するというもの。こうすることで、被写体がブレているように映るのです。
『スター・ウォーズ』(1977年)
『スター・ウォーズ』はVFX業界のマイルストーンであり、SFやVFXに興味がある人にとって決して避ける事の出来ない作品です。エイリアン、ロボット、数々のユニークな形をしたスペースシップ、そして宇宙戦争に観客は熱狂。
中でも、激しい空中戦とデススターのトレンチ・ラン(溝の滑走)は手に汗握るスリルがありました。本作は、間違いなくVFXを多用した映画を量産するきっかけとなったと言えるでしょう。
『E.T.』(1982年)
『未知との遭遇』のクライマックスシーン、『ジュラシック・パーク』の恐竜、『マイノリティ・リポート』や『A.I.』の未来の世界...、スティーブン・スピルバーグ監督は、常にSFXやVFXをストーリーテリングのツールとして使ってきました。
中でも『E.T.』は、素晴らしい効果をもたらしています。メインとなったE.T.は、一歩間違えば気持ち悪くて馬鹿げたエイリアンになってしまう恐れがありましたが、観客から愛されるキャラクターにすることに成功しました。これは、特殊効果が正しく使われたという証明と言えるでしょう。
『ゴーストバスターズ』(1984年)
多くのクリーチャーが宙を自由に舞い、ラストでは巨大なマシュマロ・マンがニューヨークの街を破壊します。今だったら、その全てをVFXで作るだろうと思いますが、『ゴーストバスターズ』ではデジタルエフェクトは使われていません。
マットエフェクトやミラーエフェクト、ストップモーションやアニメーション、またライトエフェクトを使って、ゴーストバスターズが特殊な武器を使いながら超常現象を相手に戦っているように見せているのです。
『ターミネーター2』(1991年)
『ターミネーター』から『エイリアン』、『アビス』から『アバター』まで、ジェイムズ・キャメロン監督は情け容赦なくVFXを使い、望んだストーリーや表現したい絵を作ってきました。
しかし、VFXを使った事で映画のストーリーのレベルを飛躍的にあげたのは、何と言っても『ターミネーター2』でしょう。少年とロボットが友情を育めると観客に信じ込ませる事が出来た上に、T800よりも断然手強くて執念深い「液体金属」のT1000という敵を生み出す事に成功しました。
『ベイブ』(1995年)
本作のラストで涙を流した人は多いのではないでしょうか? しゃべる子豚が登場する『ベイブ』は、VFXを使うことで情熱的で感動的なストーリーが作り出せるのだと言うことを証明してくれました。この『ベイブ』には、本物の動物にCGの頭をあて込むという、今までに無い技術が使われています。そうすることで、観客に動物達が本当に話しているのではないかと錯覚させたのです。
『マトリックス』(1999年)
VFX映画に革命をもたらした作品のひとつに、『マトリックス』が挙げられるでしょう。
被写体の周りを囲むようにして設置したカメラで連続撮影する「バレットタイム」も特筆すべき技術ですが、何よりも観客を驚かせたのは、仮想現実と現実の世界をあのような世界観で描いた事ではないでしょうか。多くの映画が、バーチャルの世界を非現実的な電子の世界として描いてきました。しかし、『マトリックス』は、仮想現実こそが、私たちが普段暮らしているような社会なのだと主張したのです。
『アイアンマン』(2008年)
『スーパーマン』、クリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト』シリーズ、『キャプテンアメリカ』に『アベンジャーズ』、そして『アイアンマン』...。
マーベルのヒーロー物の殆どにVFXが使われています。しかし、今回のリストには、トニー・スタークの胸部が破壊された後、車のバッテリーで心臓を動かすサイボーグになる「サイボーグ・ボディ・ホラー」を描いたという点で、『アイアンマン』を入れたいと思います。他のマーベル作品と比較すると、少々地味な印象の映画ではありますが、飛行シーンの美しさや、トニーの器用さが語られているという点でも見るべき作品と言えます。
『猿の惑星:創世記』 (2011年)
『ロード・オブ・リングス』や『アバター』を始め、モーションキャプチャーを巧みに使って素晴らしい効果をもたらした作品は数多く存在します。
『猿の惑星』のリブート作とされる2011年公開の『猿の惑星:創世記』もそのひとつ。動物実験の末に生み出された驚異的な知能を持つサルの苦悩と頭脳を上手く表現しています。本作は、VFXブロックバスター映画の価値の基準と言えるかもしれません。
『ゼロ・グラビティ』(2013年)
エイリアンの船が静止しているヨハネスブルクの空とエビと呼ばれて差別されるエイリアンたちがシュールな『第9地区』や、超能力を手に入れた平凡な3人の少年を描いた『クロニクル』、『ブラック・スワン』といった作品も候補の内でしたが、最終的に、ひとりの女性の逆境に立ち向かう姿を描いた『ゼロ・グラビティ』をリスト入りさせました。
この映画は、ストーリーを重視して脚本が執筆されているため、それを実際の絵にする為に「ライトボックス」という新しい技術を開発する必要があったのです。
ちなみに、今回のリストは「SFXやVFXの凝った傑作映画」であると同時に、所謂「後のVFX業界を突き動かした(また、そうなるであろう)作品」や「後のVFX業界の人達が真似する技術を生み出した作品」でもあります。視覚効果に興味がある方にとってはお馴染みのタイトルばかりではないでしょうか。
[Sources: Animation Magazine, Creative Bloq, Empire Magazine via io9]
(中川真知子)
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