近頃、バットマンと言えば『ダークナイト』シリーズばかりが取り上げられがちですが、ティム・バートン監督の『バットマン』も忘れてはいけません。
今見ても、古さを感じさせないのは、バートン監督の流行に流されることの無い独特な世界観と、俳優とスタッフの努力と技術の賜物! 今回は、そんな『バットマン』のメイキング映像をご覧頂こうと思います。
io9が紹介したその映像は、『バットマン』で新聞記者ノックス役を務めたコメディアンのロバート・ウールがホストを務める25分強のものですが、当時の雰囲気や現場の様子、俳優陣の作品への思い入れなんかを知ることが出来て、長さを感じること無く楽しめると思いますよ。
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ティム・バートン監督が『バットマン』でメガホンを握っていたのは30歳の時。この映画には、ジャック・ニコルソン、マイケル・キートン、そしてキム・ベイシンガーという大物3人を出演させ、なおかつ、500人以上ものスタッフが様々なポジションで雇われていました。
その内、400人程のスタッフから寄せられる幾千もの質問に直ぐさま答えることができたというのだから、彼の天才ぶりが伺えます。
元々、ティム・バートン監督は高予算の映画に全くと言っていい程興味を持っていませんでした。しかし、学生の頃からパワフルなイメージを抱いていた『バットマン』ならと参加を決意したのです。
それまで『バットマン』の製作には、多くの脚本家や素晴らしい監督が関わっていましたが、ティム・バートン監督の出現で一変。プロデューサーのピーター・グーバー氏とジョン・ピーターズ氏は、バートン監督の世界観とクリエイティビティに魅了されました。そして、ふたりの思い描いていたバラバラのビジョンが、バートン監督によってひとつにまとめられ、新しく作り上げられていったのです。
配役にあたり、プロデューサーのピーター・グーバー氏とジョン・ピーターズ氏は、元々ブルース・ウェインにビル・マーレイを考えていましたが、ティム・バートン監督の『ビートルジューズ』に出演するマイケル・キートンを見て、彼が最適だと判断したのだとか。
元々、キートンを推していたバートン監督は、「彼は素晴らしい俳優なんだ。生身の人間くささがある。彼は、アーノルド・シュワルツェネッガーじゃない。アーノルドだったら、マスクで姿を隠す必要がないだろう?」と、マスクで素顔を隠さなくてはいけないというバットマンの設定をすんなり伝えられる俳優であると絶賛。
一方、プロデューサー陣と監督に惚れ込まれたブルース・ウェイン役のマイケル・キートンは、完成した映画を見て「これは素晴らしい映画だ!」と自分が主役だったこともすっかり忘れて感動し、「いやいや、これは俺が出演した映画じゃないか。」と我に返ったと言うから、『バットマン』が作品としてどれほど面白いのかが分かります。
当然、監督や俳優だけでなく、プロップやコスチューム、メイクスタッフの努力も計り知れません。大物俳優のジャック・ニコルソンが演じるジョーカーのメイクを担当したニック・ダッドマン氏は、「俳優の皮膚の動きひとつひとつを忠実に再現できるように、細心の注意を払った」と語り、その細かな作業を披露しました。
その他、スペシャル・ビジュアル・エフェクトを担うデレック・メディングス氏は、「リフレクションを得たいが為に、路上での撮影では、毎回、路面を水で濡らした上に、テカりを再現しようとオイルも吹きかけた」と知られざる苦労を話しました。
CGが一般的で無かった時代に、これだけのものを作ったのだから、当時『バットマン』を見た人はさぞかし驚いたことでしょう。マイケル・キートンが感動したのも頷けます。
いかがだったでしょうか。訳者は久しぶりに、あのコテコテのティム・バートン監督色の『バットマン』を見たくなってきました。そして、見た後に、自分が30だった頃を思い出し、ティム・バートン監督とのあまりの違いに少し落ち込みたいと思います。
[via io9]
(中川真知子)
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