たとえばこんな映画のワンシーン。家族連れが森のなかの一軒家に引っ越してきて、楽しそうに家の中に入ります。そこからカメラが引いて、木に止まった大きなカラスが「カー! カー!」と鳴く...。
もうこの家族には絶対に不吉なことが起こります。
動物はただの動物のはずなのに、私たちはその見た目や行動、古くからの言い伝えを元にして固まったイメージを持ってしまうもの。そのイメージを最大限に活用しているのが、映画や小説、マンガ、アニメなどのポップカルチャー作品です。
今回は「io9」から、そんな決まりきったイメージで描かれる12の動物たちをご紹介します。
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1. 猫:意地悪、不吉、魔女の仲間、化けて出る
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登場作品
『ウォーターシップダウンのうさぎたち』、『ペット・セメタリー』、『ハリー・ポッター』、『呪怨』、ほか多数の化け猫映画
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最近でこそ、モッフモフの可愛い生き物としてのステータスを得ている猫。でも古来フィクションに登場する猫は、不吉な予兆を表したり、意地悪な役回りをさせられたりしてきました。
音もなく現れ、気づけば塀の上からじっと見ている猫には、人を不安にさせる何かがあります。瞳が細くなるところや、細長い舌でペロリペロリと何かを舐める姿を不気味に思う人もいるでしょう。
西洋では魔女とセットにされることが多く、お供として周りをうろついていたり、魔女自身が猫に変身したりします。猫のミステリアスな雰囲気が、魔女の怖くて近づきがたいイメージにぴったりなんでしょうね。
猫好きだったことで知られる作家、H・P・ラヴクラフトは、猫の不思議なイメージについてこう書いています。
それというのも、猫は謎めいた生きものであり、人間には見えない不思議なものに近いからだ。猫はアイギュプトスと呼ばれた太古から流れるナイル河の魂であり、古代エチオピアのメロエやアラビア南部はオフルの忘れ去られた邑(まち)の物語をいまに伝えるものである。
密林の支配者の血縁であり、蒼枯(そうこ)たる不気味なアフリカの秘密を継承するものでもあるのだ。スフィンクスは遠戚にあたり、猫はスフィンクスの言葉を解するが、スフィンクスよりも齢を重ね、スフィンクスが忘れはてたことをおぼえている。
ーH・P・ラヴクラフト/大瀧啓裕訳 ラヴクラフト全集〈6〉「ウルタールの猫」
日本映画の初期には「化け猫」をテーマにした怪奇映画が年に何本も作られました。当時の作風が醸しだすオドロオドロしい雰囲気は、現代のホラーとはまた違った恐ろしさ。その頃の映画を見た人は、猫にもっと怖いイメージを抱いていたかもしれません。
2. 犬:忠実、正義感が強い、おバカ
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登場作品:『ラッシー』、『フランダースの犬』、『ハチ公物語』、『マッドマックス』、『カールじいさんの空飛ぶ家』
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猫の勝手気ままさが人を不安にさせるとしたら、その対局にいるのが犬。よくしつけられた犬はどこまでも主人の後をついて来て、言いつけを守り、時には命まで救ってくれます。
そんな犬と人間の友情物語は、実話もフィクションも数え切れないほど。誰もが子どもの頃に涙した映画やアニメの1本や2本はあるはずです。
『カールじいさんの空飛ぶ家』には、命令に忠実だけどどこか間抜けな犬達が出てきます。実際、ちょっぴりドジな犬もかわいいんですよね。
3. オオカミ:どう猛、孤独、崇高
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登場作品:『ナルニア国物語』、『白い牙』、『野生の呼び声』、『もののけ姫』、『おおかみこどもの雨と雪』
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猫とはまた違った意味で、犬の対極にいるのがオオカミ。人に慣れることはなく、群れで黙々と狩りをするイメージです。
本来は群れで行動する動物ですが、「一匹狼」という言葉のように、なぜか孤独も似合います。見た目のかっこよさもあり、気高さを感じさせるからでしょうか。
オオカミを題材にした最近の作品といえば、『おおかみこどもの雨と雪』。狼男との間に生まれた子どもたちと母親の日々を描いたファンタジーですが、野生のオオカミの姿もリアルに描かれていました。
4. (ドブ)ネズミ:汚い、悪党
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登場作品:『オリビアちゃんの大冒険』、『チキン・ラン』、『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』
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人の食料を食い荒らし、病気をもたらす動物に「汚い」、「悪党」というイメージがつくのも無理はありません。日本を代表するネズミキャラ、『ゲゲゲの鬼太郎』のねずみ男はその王道ともいえますね。
ちなみに西洋では、マウス(mouse=ハツカネズミ)とラット(rats=ドブネズミ)でそのイメージは大違い。マウスに悪いイメージはありません。『トムとジェリー』のジェリーも、ミッキーマウスもマウスのほう。
上の画像のディズニー映画『オリビアちゃんの大冒険』では、主人公のバジルと仲間たちはマウス、犯罪王のラティガンはラットという設定でした。
日本にはネズミが主人公として活躍した作品に『ガンバの冒険』があります。あのネズミたちはどちらにあたるんでしょう...?
5. コウモリ:不気味、吸血鬼
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登場作品:『キング・コング』(2005年)、『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』、『バットマン』、吸血鬼を題材にした映画
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コウモリもまた嫌なイメージのある動物。人間はどうも小動物がたくさん群れている様子に嫌悪感を覚えるようです。暗くてじめじめした洞窟はただでさえ怖いのに、そこにコウモリがビッシリ! なんて、想像しただけでも恐ろしい。
吸血鬼とコウモリを最初に関連づけたのは、小説『ドラキュラ』の作者ブラム・ストーカーでした。彼は吸血コウモリについての新聞記事を読み、コウモリに血を吸われて自力で立てなくなった馬の話を小説に書いたそうです。
とはいえ、動物の血を吸うのはコウモリの中でもごく一部。また吸血コウモリは実は非常に小さく、馬が立てなくなるほど血を吸うことはできないそうです。
6. ワシ:気高い、無敵
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登場作品:『ハムナプトラ』、『ハリー・ポッター』、トールキンのミドルアース作品
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実際はどう猛なハンターでも、ワシには崇高な雰囲気が漂っています。あの目やクチバシ、大きな翼。力強く羽ばたく姿が、誇り高い王者の風格を感じさせるのです。
フィクションですぐに思いつくのは、J・R・R・トールキンの『ホビット』や『指輪物語』に登場する大ワシ。『ハリー・ポッター』では動物のワシの姿はありませんが、ホグワーツ魔法学校のレイブンクロー寮はワシがシンボルに描かれています。
またアメリカではハクトウワシが国鳥だということもあってか、権威の象徴としてさまざまなモチーフに使われています。
7. カラス:不吉な報せ
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登場作品:『バットマン』、『ティム・バートンのコープスブライド』、『鳥』、『マトリックス リローデッド』、エドガー・アラン・ポー作『大鴉』
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ホラー映画やサスペンス映画でカラスが鳴いている姿は、「これから悪いことが起こるぞ―」、「この場所は不吉だぞー」という観客へのメッセージ。カラスは大昔から不吉な鳥とされてきました。
主な理由は、色が黒いことと、鳴き声が不気味なこと。その効果を最大限に使ったのがヒッチコックの映画『鳥』でした。
そういえば日本では「夕焼け」や「日暮れ時」も連想されますが、海外ではそういった印象はないようです。まあ今は日本でも、夕暮れ時より朝方ゴミをつついている姿の方がよく見るような...。
8. フクロウ:賢い、物知り
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登場作品:『くまのプーさん』、『王様の剣』、『ニムの秘密』、『ナルニア国ものがたり 銀のいす』、『バンビ』、『ガフールの勇者たち』
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実は鳥類ではカラスの方がよっぽど賢いらしいのですが、なぜか賢いことになっているフクロウ。森の動物達がキャラクターとして登場する作品では、大抵フクロウが物知りおじいさんの役です。
理由として考えられるのは、ギリシア神話で知恵を司る女神、「アテナ」の聖なる動物とされるのがフクロウだということ。しかし、アテナの鳥だから賢いというイメージになったのか、もともと賢いと思われているからアテナの鳥になったのか、定かではありません。
フクロウ先生に聞いてみたいところです。
9. ヘビ:ずるい、悪の化身
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登場作品:『ハリー・ポッター』、『アラジン』、『アナコンダ』、『キル・ビル』、『インディ・ジョーンズ』、マーベル・コミック作品
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日本では古来「神の使い」とされ、幸運をもたらすとも言われるヘビですが、海外では主に「悪の化身」とされてきました。細い目に細い舌、ヌルヌルと床を這う姿を考えると、ポジティブなイメージにならないのもうなずけます。
インディー・ジョーンズは大のヘビ嫌い。『ハリー・ポッター』では物語全体にわたって、ヘビが悪の象徴となっていました。またアメコミにはヘビをシンボルにした敵キャラや悪の組織がたくさん出てきます。
10. カバ:太っちょ、陽気、コメディアン
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登場作品:『ファンタジア』、『マダガスカル』
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本物のカバが踊ったり人を笑わせたりするわけではないのに、海外ではなぜかそんなイメージが定着しています。どこかユーモラスな外見と、優しそうな目と、のんびりした動きが太っちょのコメディアンを想像させたんでしょうか。
また英語でカバはヒポポタマス(hippopotamus)。名前の語感もなんだか可愛いし、普段はヒッポという愛称で呼ばれるので、そういう親しみやすさもあるのかも。
しかし、本物の野生のカバは怒るとライオンでも攻撃するどう猛さを持っています。アフリカではこれまで、ライオンよりもカバに襲われた人間の方が多いのだそうです。
11. イルカ:人懐っこい、遊び好き
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登場作品:『わんぱくフリッパー』、『ジョーズ 3』、『アクアマン』、『シークエスト』
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いつも笑っているように見え、ショーで楽しい曲芸をして見せるイルカは、人とも友達になれる楽しい動物というイメージがあるようです。
60年代の米テレビドラマ『わんぱくフリッパー』は日本でも人気になり、70年代にはイルカを題材にした手塚治虫原作のアニメ『海のトリトン』が放送されました。
海外のフィクションにはイルカが人を救う話もたびたび出てきます。そんなこと本当にあるの? と思ったらコレがあるようで、検索するとイルカが人間、犬、迷子のクジラ等を救った数々のエピソードが見つかります。
とはいえイルカにも多くの種類があり、人を襲う種類もいます。溺れたときにイルカが近づいてきても、すぐに安心してはいけません。
12. サメ:海の殺し屋
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登場作品:『ジョーズ』、『オースティン・パワーズ』、『怪盗グルーの月泥棒 3D』、ほか多数のサメ映画
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人を襲う海の動物といえば、サメ。海面から背ビレを出して迫ってくる様子は、映画定番の演出手法となってますね。
アメリカではスピルバーグの映画『ジョーズ』以来、海が怖くなったという人もいるとか。ジョーズと同種のホホジロザメは実際に非常に危険で、人の手足などは簡単に食いちぎられてしまうそうです。
そんな恐怖を描いた数々のサメ映画は、パニック映画の1ジャンルとして立派な地位を築いています。『シャーク・アタック』、『ディノシャーク』、『シャークトパス』、『フライング・ジョーズ』、『ダブルヘッド・ジョーズ』などなど。B級パニック好きにはたまりません。
今夏アメリカで出た新作『シャークネード』(原題:Sharknado)は、トルネード(竜巻)に乗って人喰いサメが上陸するという、とんでもない設定でした。
サメ映画のサメは本来の動物の姿とはどんどんかけ離れていってますが、こうなったらとことんやってほしいと思います。
[io9]
(さんみやゆうな)
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