世界的怪物・モンスターを演じた気ぐるみ役者たちに迫るドキュメンタリー『メン・イン・スーツ』


モンスターや怪獣が登場する映画は山ほどありますが、その怪獣達を演じる着ぐるみの中の人のことを、私たちはどれくらい知っているでしょうか?

彼らは映画のメインともいえる役を演じているにもかかわらず、その素顔はスーツで覆われているため、スポットライトを当てられる機会は少ないのが現実。しかし、着ぐるみ役者は素顔で出演している俳優達と同じくらい、注目されるべき人たちです。そんな彼らの活躍を追ったドキュメンタリー『メン・イン・スーツ』をObservation Deckが紹介しています。

それでは、以下から『メン・イン・スーツ』のハイライト的動画をどうぞ。
 


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モンスターや怪獣のスーツの下には、血の通った人間が入っています。しかし、少し前まで、中に人が入っていることはタブーの如く伏せられていました。それらモンスターや怪獣が本当に存在すると観客に信じ込ませたかったということもあるのでしょうが、それ以前に彼らの演技があまりにもリアルで、観客は人が演じていることを忘れてしまっている節もあります。

しかし、着ぐるみの中の人として最も有名だと思われるダグ・ジョーンズ氏が動画の中でも語っている「着ぐるみを吊るして撮影すれば、それはそれで良い絵がとれると思いますが、俳優が演技し、心を入れなければ単なる精巧に作られた着ぐるみがつり下げられているだけでしかない」のです。

人間の造形から離れれば離れる程着るのが大変」という着ぐるみ。次の動画では、常に痛みや不快感と戦う俳優達の苦労に焦点を当てています。



『ドラキュリアン』で半魚人を演じたトム・ウッドラフ・Jr氏は、「自分自身とは切り離して考えるようにしている」ということで乗り切っていると語っています。

そして『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』でウィンクを演じたブライアン・スティール氏は、撮影の間、毎日2時間泳ぎ40マイル(約64キロ)の距離を自転車で通勤し、常にウィンクのベストやブーツ、マスクを身につけて行動し、顔はタオルで覆うことで、体や肺に負担を与えた状況に慣れさせる努力をしていたそうです。

また、前出のダグ・ジョーンズ氏は、時に18から20時間にも及ぶ撮影でも、常に「必ずやり遂げてやる」という強い意志を持って挑んでいるとのこと。

ダグ・ジョーンズ氏と仕事とすることが多いギレルモ・デル・トロ監督は、「ダグは絶対に文句を言わない。血を流していても、苦痛を訴えることが無い。だから、彼がギアから血を流しているのを見つけたら、撮影を中止するんだ。『ヘルボーイ2 ゴールデンアーミー』のエンジェル・オブ・デスのリグは酷いもので、ダグは血を流していた。だから、結局ワイヤーに変更したんだよ」と語っています。

この話からは、ダグのパフォーマーとしてのプライドだけでなく、多くの人間が関わる撮影現場を自分だけの為に止めてなるものか、という必死さが伝わってくるようです。

次に、日本が誇るスーツアクター、ゴジラの中の人としても有名な中島春雄氏の逸話。中島氏は、『大怪獣バラン』の撮影の最中に火傷を負う怪我をしたにも関わらず、助けを呼ぶことも無く演じ続けたそうです。その根性と俳優としてのプライドには、ただただ頭が下がります。



そして、最後は俳優達が着用するスーツについてです。スーツは制作とデザイナー、そしてスーツアクターがチームとなって作り上げていきます。デザイナー達はアクターからのアウトプットを元に、より良いものにしていくのです。

しかし、ここでのアウトプットはスーツを心地よくするものではありません。アートとして、如何に洗練されたものを作るかであって、心地よさは求めていないのだそうです。

通常、スーツはダメージを考慮して2着作成され、頭部は表情等を撮影する為にメカを入れたものと、スタントヘッドというアクション用のメカを入れていないものをつくるとのこと。

Men in Suits』はAmazonで販売中。執筆時現在、評価している12人全員が満点を付けています。これまで注目されてこなかった人たちにスポットライトを当てている作品だけあって、怪獣・モンスターファンなら絶対に持つべき作品と、熱烈にプッシュされている模様です。日本版も発売されることを願いましょう。


[via Observation Deck

(中川真知子)

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