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科学で「不死」は実現できるのか? 科学者たちの戦いと研究の今ここ

2013/09/09 22:30 投稿

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科学で「不死」は本当に実現できるのか?


近い将来、人は200歳まで生きるようになるかもしれません。

先月アメリカで、「不死」に関する1冊の本が出版されました。タイトルは、ずばり『ザ・ブック・オブ・イモータリティ』(The Book of Immortality)、「不死の本」です。

本書の著者アダム・リース・ゴルナーは、不死、または人間の寿命の延長について、現代の科学がどこまでその可能性に迫っているかを、多くの科学者の研究成果や発言とともに考察しています。

今回は、「Salon」に掲載された本書の一部から「io9」がピックアップした、興味深い事実をいくつかご紹介しましょう。
 


【大きな画像や動画はこちら】

 
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1912年、生物学者のアレクシス・カレルは、ノーベル生理学・医学賞を受賞したその年、ニワトリの胚の心臓から採取した細胞の組織培養を開始した。培養された組織はその後35年間生き続け、これからも死ぬことはないと確信したカレルは、「死は必然ではない」と結論づける。

将来的には細胞から人間の臓器を作成することも予測しつつ、カレル自身は1944年に世を去った。ニワトリの心臓の細胞が徐々に弱って死んだのは、それから15年後のことだった


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品種にもよりますが、ニワトリの寿命は10年~20年。その細胞が47年も生き続けたのは驚異的なことだったはずです。「細胞は死なない」というカレルの予測は必ずしも当たりませんでしたが、もうひとつの予測である、人間の臓器培養はすでに現実のものとなりつつあります。

本書によると、ある研究者は「培養した臓器を使うことにより、人間の寿命は数十年、最長で120~130年は伸ばすことができる」と話しているそうです。

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2011年、科学誌『ネイチャー』は、黄色の蛍光色素であるチオフラビンTを全体に塗った線虫が、通常より60~70%長く生きたという実験結果を報じた。


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だからと言って、自分の体を真っ黄色に塗っても長生きはできませんので、悪しからず。

長寿を求める人間の心は何千年も前から変わりません。現代でも多くの大学や研究機関が、テキサスの洞窟に住むコウモリやイースター島の土、人間の精子などに長寿への鍵を求めて研究を続けているそうです。

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「単純な方法にまず効果はありません。私たちにはわからないことが山ほどあるのです。」

―アメリカ国立老化研究所(※)のある研究員
(※アメリカには老化と寿命について研究する正式な国の機関があります。)

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どれほど多くの食品や化学物質に長寿効果があると謳われていても、決定的な「長寿薬」は今のところ見つかっていません。それでも多くの人が、抗酸化物質がいいと聞けばブルーベリーを食べ、コエンザイムQ10が効くと聞けばサプリメントを買いに行きます。

本書の著者はプラシーボ効果にも注目。効くと信じれば砂糖の錠剤でも効いてしまう、それが人間の信じる力です。

私たちの周りには若返りや長生きに効くという、さまざまな「新成分」を配合した化粧品やサプリメントが次々に登場します。販売する側がもっともらしく宣伝して、人々がそれを信じれば、よほど粗悪な製品でない限り、ある程度の効果は出ると著者は言います。

ただ、思い込みの力や健康を促す何らかの成分だけで、「不死」が可能になるとはまず考えられません。人体の寿命に直接関わる研究を行っている科学者たちは、「不死」をどう捉えているのでしょうか?

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「たとえば車を車庫に停め、ずっと使わずにおいても、車が永久にそこに在ることはなく、最後は古びて朽ちていく。それは避けることのできない物理の法則だ。」

―レオナルド・ヘイフリック、科学者

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「老朽に基づく理論は真に科学的な理論ではない。問題は、人間は車よりもはるかに複雑だということだ。」

―レオナルド・ガレンテ、科学者

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寿命の延長について真っ向から対立する2人の著名な科学者。ヘイフリックは、細胞が一定の分裂回数に達すると増殖しなくなる「ヘイフリック限界」を1961年に発見し、一方ガレンテは、「長寿遺伝子」とも呼ばれるサーチュイン遺伝子の活性化による寿命延長の可能性を1999年に見出しました。

ヘイフリックの考えは、熱力学の第二法則に基づいています。自然界にあるすべての物はエネルギーの移動により変化を生じ、人間の場合、この「変化」の蓄積が最終的に「老化」ということになります。

車と人間の違う点は、人間に治癒する能力があるということ。しかし本書によると、ヘイフリックはその点についても、「時間が経過し、人体を構造的に良好な状態に保つエネルギーが減少するのにともなって、分子レベルでの機能不全が起こる」と述べています。彼はつまり、不死は実現できないという考えなのです。

ヘイフリックが物理の法則で老化を説明する一方で、ガレンテは「老化」を医学的に「治療可能な病」として捉えようとしています。先のサーチュイン遺伝子を活性化することで生物の寿命が伸びるとすると、問題は活性化の方法です。ガレンテの研究グループは、人間に適用できる方法さえ見つかれば、寿命の延長は可能だと考えています。

実は、この遺伝子は飢餓状態までの極度なカロリー制限で活性化されることがわかっています。かと言って、長生きのために何十年も飢餓状態で過ごすのは現実的ではありません(念のために言いますが、決して試さないでください)。摂取カロリーを減らすことなく、サーチュイン遺伝子を活性化させる方法を発見できるかどうか、ガレンテの研究グループに注目が集まっています。

そして、もし人間の寿命延長が実現されれば、その研究成果は莫大な富を生むことになります。本書によると、製薬会社大手のグラクソ・スミスクラインは2008年、約720億円の巨費を投じて、ガレンテの研究に基づいた薬品を製造する権利を手に入れたそうです。

いま、大企業のバックアップを受ける有力な科学者はガレンテだけではありません。人類の夢である不老不死を実現しようとする科学者と、その研究に大金をかける大企業。一昔前ならSFかおとぎ話だった世界は、未だに論議を呼びつつも、はるかに現実的なテーマとなっているようです。


Salon via io9

(さんみやゆうな)

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