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人生は残機ゼロ 第3回:『3Dスペースハリアー』で蘇る思い出とトラウマ 前編

2013/01/18 23:31 投稿

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スペースハリアー


3DSの「3Dスペースハリアー」が素晴らしいと絶賛の嵐です。テレビをつけても新聞を開いてもスペハリのスの字も出てきやしませんが、マスコミの人たちはユーライアになぎ倒されるといいですね。ヘビ年にゆかりがありそうな長~いカラダにぶち当たって。

「俺たちは何度『スペースハリアー』を買うんだろう」そんな哲学的な思索に耽るツイートをしたら、3Dスペハリのプロデューサー氏にキャッチされちゃいましたが、メガドライブとの付き合いも『スペースハリアーll』が遊べるハードだったからですもの。
 
スペハリの前にセガなし。それ以前のセガはパッとした印象がなかったんですよ。『トランキライザーガン』って密猟ゲーじゃんヤベーだとか(いや野生動物の保護ですケド)、『侍』で「ムネンアトヲタノム」ってもの。好きは好きだけど、好きの中のワンオブゼムにすぎませんでした
 

 
セガに対する認識を改めるきっかけになったのがスペハリ。むしろスペハリの画面に現れたロゴで「へーっ、セガっていうの君の親」と気づいたぐらい。宇多田ヒカルの母親、藤圭子っていうのーって勢いです。

もっというと、スペハリは「ビデオゲーム」の概念そのものをひっくり返しました。それまでビデオゲームは、コンパクトとイコール。だだっ広いナスカ高原も無限の宇宙空間もブラウン管の中に収めてしまうのが、デジタルでありサイバーでしたから。


ハングオン


だからスペハリの前作に当たる『ハングオン』が、バイクまるだしの形でゲーセンにどかーんと置かれたときはあ然としたもの。デパートの屋上にある遊戯機まんまの筐体は、お世辞にも垢抜けてるとは言えませんでした。またがって全身でボディを傾ける人を遠巻きに見て、面白い試みだと思いながらもしょせん他人ごと。それが「体感ゲーム」の始まりだったとは露知らず。

スペハリの存在感はそれどころじゃない。実在する「のりもの」とは違った非現実感のカタマリです。コックピットがレバーの操作に連動してグイグイ動くムービング筐体は、店の入口すぐの10m先からも分かるド迫力。ぐるりと取り巻くギャラリーの輪に入っていたら、いつの間にかシートに座ってました。


スペースハリアー02


目の前に広がる擬似3D画面からは、宙に浮く岩石や大木、メカニックやらファンタジー生物やらをごっちゃにした敵がこちらに殺到してくる! 豊かな色数や多関節のキャラが地平線の向こうからやってくる、凄まじいまでの情報量とスピード感のラッシュ

そんな視界の外からはHIRO師匠の素晴らしいPCMサウンドが全身を包み込み、感動の漏れ出る死角なし。画面の中のハリアーと一緒にギッタンバッコンするムービング筐体に脳を揺さぶられながら、「ああ、いま俺はゲームを体感してるんだ!」って血がたぎりっぱなし。

スペハリはなんとなく固まりかけていた「ビデオゲームはこうあるべき」というタガを外した感があります。インベーダーが大ヒットしてから「ゲームは儲けてナンボ」であり、手堅いビジネスとしてやってくためにもお店が扱い易いようなパッケージにまとまってるなって空気があった80年代の半ば。テーブル筐体は喫茶店に置きやすくする配慮があったろうし、アップライトも床面積を小さくして1台でも多くの筐体を買ってもらうため。
 
でも、家庭用ゲームにないアーケードゲームの強みって「ハードウェアの段階から設計できる」ということ。ナンボ金かけてもいいから、創りたいもの創ったれや~というゲーム屋さんの願望は基板にCPUを2個乗っけたり、ループレバーやトラックボールといった特殊コンパネ(操作系)という方向でちょっぴり現れていたにすぎず。当時の我らがカリスマであるナムコだって、コスモ星丸だとかイベントものでしか造形してくれなかったわけです。

『ハングオン』はまだ「バイクに乗れるゲーム」って説明ができる。現実に似たものが何もないスペハリの超能力戦士を操るムービング筐体を、一体どうやって企画を通したんだ? かなり後で、元々戦闘機だった自機をハードの制約から人型にしたんだと知りましたが、いやドラゴンランドを飛ぶ体感ゲームってどうやって上司に説明すんの? と質問が変わるだけですよ。

1プレイ200円という、『バーチャファイター』にも受け継がれた伝統の始まりもスペハリから(たぶん)。200円を払ってもらわないとペイしなさそうな筐体(Wikipediaによればデラックス版が166万円!)を創って全国に出荷するセガと、200円で遊べるのが申し訳ないと涙を流すプレイヤー。マネーより採算より大事なもの、それはゲームの充実という甘美な共犯関係......。

スペハリがゲーム業界に与えたインパクトは、翌年(86年)3画面筐体&ボディソニックの『ダライアス』が登場したことからも明らか。体感ゲームという枠に収まらない「ビデオゲームってハードごとバカやっちゃっていいんだ」と言わんばかりの大型筐体ものブームは、80年代アーケードゲーム業界の若さのマグマが噴きだした結果でしょう。

そしてプレイヤー側としては、いわゆるセガ信者の出現。スペハリなくしてセガに強烈な思いを寄せるファンもなかったろうし、筆者も20年以上に渡るセガとの腐れ縁が続いたとは思えません。「スペハリの感動よもう一度」の夢からさめず、何回裏切られてもセガのハードや移植に手を出すことも......ほろ苦いメモリーは、また次回!


画像: スペースハリアーハングオン[YouTube]

(多根清史)

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