攻殻機動隊ARISE 黄瀬和哉 


遂に6月22日に上映開始される「攻殻機動隊ARISE」。攻殻機動隊が設立されるまでの前日譚を描いたお話になります。Kotaku JAPANでは過去には草薙素子のデザインや、ロジコマに関する記事を取り扱ってきましたが、今回は本作品の総監督である黄瀬和哉さんに、攻殻機動隊ARISEに関する詳しい話や、もの作りに対する姿勢をお伺いしてきました。
 


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攻殻機動隊ARISE 黄瀬和哉 インタビュー

攻殻機動隊ARISE ビジュアル


ーー本日はよろしくお願いします、

黄瀬和哉総監督(以下:黃):よろしくお願いします。

ーーまず作品のお話から聞かせてください。「攻殻機動隊」の新作ですが、どのように総監督としての取り組みを行いましたか? まず制作に関するお話からお願いします。

:今回の「攻殻機動隊ARISE」はスタッフを一新してやっていますので、(今までの攻殻機動隊と)同じものは出来ないと思っていました。新しいものにならなくても、違うものになるという確信がありました。


スタッフには「今までの攻殻機動隊を見直したりしないでください」と言ってました。過去の作品を振り返ってしまうと「攻殻機動隊はこうあるべき」というイメージに引っ張られてしまい、イメージが固定されてしまうので、影響を受けないようにニュートラルでいてくださいと。


ーーお先に「攻殻機動隊ARISE」を見させて頂きましたが、今までの攻殻機動隊にはない新しさを感じました。新しいと言えば、スタッフの他に声優も変わってますよね。製作発表の日に声優のキャスティングはフィーリングで選んだと言ってましたがあれはどういうことですか?

:キャストは全部のイメージを取っ払って声だけで選ばせてもらいました。デモテープを聞いて、「違う...違う...」といった形で。今回の草薙素子役の坂本真綾さんには「過去に子供の頃の素子の役をやっていたから選んだのですが?」と聞かれたのですが、全くそんなことはなくって、単純に声だけを聞いて決めさせて頂きました。

ーーだからフィーリングと言っていたんですね。では今回の「攻殻機動隊ARISE」の音楽を担当したコーネリアスさんも同じような形で?

:音楽に関しては、FlyingDogの石川さんから「コーネリアスさんを使いたい」と申し出があったんです。僕も前からコーネリアスさんは知っていたので、良い意味で期待を裏切ってくれると思い、お願いをしました。この時も、今までのイメージにとらわれること無く、コーネリアスさんが思い描く攻殻機動隊の曲を作ってくださいと、お話はしましたね。


攻殻機動隊ARISE 草薙素子

攻殻機動隊ARISE 草薙素子


ーー新しいメンバーで新しい攻殻機動隊を作るということが今回のポイントなんですね。ちなみに総監督とは、どんなことをしていたのでしょうか。

:名ばかりなもので...という冗談はさておき、基本的には「ジャッジ」を常に行なっていました。先ほどシナリオの冲方丁さんとも話していたのですが、僕は野球で言えばキャッチャーの役割をしている感じです。僕がサインを出して、ピッチャーである制作スタッフに玉を投げさせるんです。

ーーちなみに首を振ったことはありましたか?

:ほとんど振ってません。こっちのサイン通りに投げてくれましたし、揉め事もなかったですよ。

ーーよい信頼関係で、作品が作られていったんですね。では続いて作品に関してお聞かせください。攻殻機動隊シリーズでは電脳化や光学迷彩など、未来の技術が沢山登場しますが、今回の攻殻機動隊ARISEでは、時代の設定が今までの作品より過去の話になっています。劇中でその辺りをどのように考えて演出を行いましたか?

:当時のことをやろうとしても、そんなに新しく見えないんですよね。時代的になにを持ってくれば新しいモノになるのかと、考えていました。今作は今までとは違い少し前の話なので、レトロっぽいモノを出してもいいかなと。さすがに黒電話は出てきませんが。(笑)


攻殻機動隊ARISEに登場するSurfaceは、劇中では古いツールにはなってしまうのですが、世界中で、標準ツールとして気軽に誰でも使えるようなものなら問題ないと思いました。


世界中から期待されている「攻殻機動隊ARISE」の総監督という重要なポジションを務めるにもかかわらず、プレッシャーをものともせずに、スタッフを信じて今回の攻殻機動隊ARISEを作り上げた黄瀬総監督の気持ちが非常に伝わってきました。

ここで黃瀬総監督自身の事についても聞いてみることにしました。

ーー過去に、沢山の原画をやってきたと思うのですが、原画に対するこだわりはありましたか?

:とにかく直されたくなかったんですよ。なるべく自分の書いた素のもので通してもらいたかったんです。手を入れられてしまったら、それは下書きの様なモノになってしまうので。あと、若いころはどれだけ目立つかとか考えてましたね。「あのシーン良かったでしょ? あそこ僕がやったんだよ!」って。

ーー場面で記憶に残るのは大事ですし、嬉しいですよね。いままでに影響された作品等はあるんですか?

:アニメだと「宇宙戦艦ヤマト」や「銀河鉄道999」、「AKIRA」とかですかね。映画は沢山みてるのですが、見てる途中からドンドン忘れていっちゃうこともあるんです。(笑)その中で、よく覚えているのは「ブリキの太鼓」とか「17才のカルテ」かな。人間ドラマに寄った様なモノが好きなんですよ。ちなみに最近は朝ドラの「あまちゃん」にハマってます。


音楽もいろいろ聞いていて、少女時代とか、AKB48の「UZA」のPVとかか好きです。できるだけ好き嫌いをしないで、偏ったものばかり見ないようにしてます


ーー意外でした! 本当に幅広いですね。様々なエンターティメントを楽しんでいますが、監督にとってエンターティメントとは何でしょうか?

:僕にとっての最大のエンターティメントって、よしもと新喜劇なんですよ。泣かして、笑わせて、そして最後に笑って終わるのが最高です。どういう形であっても、楽しんでもらうってのがエンターティメントだと思います。見終わった後にスッキリして、とにかく「楽しかった!」と思って欲しいですね。

ーー作品をみて「あ〜...楽しかった...。よし!明日も仕事がんばろう!」といった感じですね。

:ちなみに今の僕のそれが「あまちゃん」なんですけどね。(笑)

黄瀬総監督とはまだまだ趣味のお話を沢山出来そうな感じでした。他には大河ドラマや、特撮など、本当に幅広く様々な作品に触れているようでした。最後にKotaku JAPANのインタビューということで、ゲームに関するお話を聞いてみました。

ーーゲームで遊んだりはするのでしょうか?

:ゲームセンターではよくテトリスやバーチャファイター、R−Typeとかよくやってましたね。あの頃はドット絵だったり、3Dでもポリゴン数が限られていたりして、大まかなキャラクター像だったじゃないですか。そこに自分の中でキャラクターを美化したものを乗っけることができる、創造性があるのが良かったですね。

ーーそのキャラクターを見た時に、人それぞれの感想や、妄想が生まれる...と。

:あんまり答えは求めていないんですよ。あやふやだったり、ミステリアスであることで人気がでるキャラクターもいるじゃないですか。遊びの幅があると、いろんな場所で盛り上がれますよね。ヒールキャラが人気がでるってそういう部分が強いのかもしれませんね。

ーー沢山の謎を持っているダークヒーローとかもそうですよね。

:ダークヒーローには、過去にどんなことがあったのだろうか、と想像させる部分が魅力の1つなのかもしれません。出自がわからない感じとか。逆に正義のヒーローには「敵をやっつける」という大前提があるじゃないですか。不透明な部分があるからこそ、長く人に愛され続けてるんでしょうね。

ーーなるほど、同人誌じゃないですが、ifを考えるのってとても楽しいですよね。ありがとうございました。では最後に「攻殻機動隊ARISE」を楽しみにしている方に一言お願いします。

:今回の攻殻機動隊ARISEはスタッフが頑張ってくれて、良い作品になっています。機会があれば是非みてください。もし攻殻機動隊のシリーズに興味を持っていただけたのなら、攻殻機動隊には違う作品があるんだよって、引っ張りだすのもありだと思います。どうぞよろしくお願いします。

ーー本日はありがとうございました!



攻殻機動隊ARISEはお先に見させて頂きましたが、攻殻機動隊の始まりの物語に相応しい作品でした。今回の黄瀬総監督のお話を聞き、1つ1つの話がこの作品に散りばめられているなと感じました。ぜひ皆さんも6月22日の劇場上映開始を楽しみにしていてください。


(c) 士郎正宗・Production I.G/講談社・「攻殻機動隊ARISE」製作委員会

攻殻機動隊ARISE

(エドワード長谷)

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