コタク・ジャパン・ブロマガ

『ギアーズ』のCM監督が建築と映画の関係を語る! 映画『オブリビオン』のコシンスキー監督にインタビュー 

2013/05/27 21:07 投稿

  • タグ:
  • 登録タグはありません
  • タグ:
  • 登録タグはありません
オブリビオン


いよいよ公開されるトム・クルーズ主演のSFアクション映画『オブリビオン』。今回は、今作の監督・脚本・原作・製作を務めた、ジョセフ・コシンスキーさんにインタビューして参りました。

映画『オブリビオン』誕生のきっかけから、高い評価を集めた『Gears of War』のCMの話、さらには建築学を学んだ監督が語る建築と映画の関係性などなど、沢山語っていただきましたよ!
 


【大きな画像や動画はこちら】

 
ジョセフ・コシンスキーさんは、スタンフォード大学工学部機械工学デザイン科を卒業後、コロンビア大学建築大学院修士課程を修了。その後、建築学から映像の分野へと進んだという異例の経歴の持ち主です。

映画監督になる以前は、ナイキやアップル、シボレーなど多くのCMを手がけていますが、Kotaku JAPAN読者の皆さんはコシンスキー監督のCM作品だと、こちらの『Gears of War』のCMを覚えているのではないでしょうか?



映像と共に流れるゲイリー・ジュールズの曲『Mad World』が最高でしたね。また、こちらの『Halo 3』のCMもコシンスキー監督の作品です。



その後、2010年に公開された『トロン:レガシー』にて抜擢され、長編映画監督デビュー。ネオン輝く『トロン』の世界を、現代の技術で超かっこ良く表現した映像が高い評価を集めました。Daft Punkが手がけたサントラも最高でしたね。

そして今回、コシンスキー監督は自らストーリーを手がけたグラフィック・ノベル『オブリビオン』を映画化。エイリアンとの戦争で荒廃した地球を監視し、監視用ドローンを修理するという任務を毎日こなしている男ジャック・ハーパー(トム・クルーズ)が任務の途中で墜落した宇宙船の残骸から謎の女性を発見し、それをきっかけに今まで教えられてきた歴史や自分自身の過去を疑うようになり、真実を求めていく中で、人類を救うための戦いに向かっていくというストーリーを、独創性溢れる映像で美しく描いています。

――まずはストーリーについてお伺いしたいのですが、今作のストーリーを思いついたきっかけはなんですか?

ジョセフ・コシンスキー監督(以下コシンスキー):2005年にロサンゼルスに移住した時、私はTVCM業界に足を踏み入れようとしていました。しかし、TVCM業界は入り込んでいくのがなかなか難しく、最初の1年はあまり成功しませんでした。何本かCMを作ってみたものの、仕事はもらえないという状況で、苛立っていたんです。

そこで自分の創造性を維持するためと、気が変にならないようにするために、小さな映画のためのストーリーを考えました。私は『トワイライト・ゾーン』やヒッチコックの映画に触発されて、予想外の展開があるミステリー作品を作ろうとしました。そして、最近あまりみかけなくなった、日光が照りつけ、空気の澄んだSF世界を舞台にしたストーリーを書いたんです。

最初は小さな映画のために作ったストーリーが、こんなに大きな映画になるとは思っていませんでしたね。


オブリビオングラフィック・ノベル版

――そしてそのストーリーを、グラフィック・ノベルにしたんですよね?

コシンスキー:ええ。本当は映画の脚本にしたかったのですが、ちょうどその当時、全米脚本家組合がストライキをしていて、1年ほど映画の脚本を書いてはいけないという時期だったんです。

そして、私のエージェントがこのストーリーをビジュアル化するために、グラフィック・ノベルにするというアイデアを思いつきました。映画の脚本にはできなかったので、そのアイデアを採用したんです。

その後、ラディカル・スタジオと協力し、グラフィック・ノベル化を進めました。その頃、『トロン:レガシー』も製作中で、『オブリビオン』はその合間に作っているような状態でした。そして『トロン:レガシー』の製作が終わった頃に、『オブリビオン』のグラフィック・ノベルも完成し、イメージを固まったので、改めてこのストーリーを映画会社に持ち込もうと決めたんです。

――しかし、その完成したグラフィック・ノベルを発売しなかったのは何故ですか?

コシンスキー:それは今作には沢山の予想外の展開があるので、映画の前に発売してしまうと、ネタバレが起きてしまうと考えたからです。私は映画がこのストーリーを最初に体験する一番の方法だと考えていました。なんといってもこのストーリーは映画用に作られたものですからね。

――グラフィック・ノベル版と映画版のストーリーに何か違いはありますか?

コシンスキー:グラフィック・ノベル版の方が、より暗い話を含んでいますね。恐らくそれを映画でやったらR指定の映画になっていたでしょう。しかし、ジャック・ハーパーのストーリーは同じです。

――グラフィック・ノベルやコミックは多く読まれるのですか?

コシンスキー:いいえ。子供の時はコミックよりも本を読み、沢山の映画を見ました。先ほどの『トワイライト・ゾーン』や『007』シリーズが好きでしたね。


――では、『トワイライト・ゾーン』の他に、そのような本や映画の中で、『オブリビオン』に大きな影響を与えたのはものはなんですか?

コシンスキー:本当に沢山ありますよ。まず、子供の時に見た『スターウォーズ 帝国の逆襲』ですね。『オブリビオン』のスカイタワーは幼い頃にみた作品ですが、クラウド・シティの影響を受けています。

そして、スタンリー・キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』からは明らかに影響を受けていますし、私の大好きな『ブレードランナー』からは人の記憶と人間の本質についての考えという面で影響を受けました。

他には『サイレント・ランニング』や『12モンキーズ』の原案になったフランス映画の『ラ・ジュテ』、さらに『猿の惑星』もそうです。とにかく、私が子供の頃好きだった映画からの影響が『オブリビオン』には表れていますね。


オブリビオンドッグファイト

――なるほど。私が『オブリビオン』を観た時、バブルシップとドローンのドッグファイトのシーンなどは、TVゲームっぽいなと感じたのですが、ゲームは遊ばれるのですか?

コシンスキー:子供の時には遊んでいました。ニンテンドー(NES/ファミコン)やコレコで遊びましたね。コレコビジョンはわかりますか?

――ええ。

コシンスキー:コレコ・ビジョンは私が最初に遊んだゲーム機でした。たくさん遊んだわけではないですが、ゲームで遊んで育ったと思います。バブルシップのシーンはそんな影響も受けているんでしょう。一人称視点的なシーンもありますしね。

バブルシップをあのようなデザインにしたのも、観客にバブルシップのコックピットからの眺めを見せ、パイロットの感覚を味わってもらうためです。ゲームのような印象を受けるのは、その一人称視点的なシーンがあるからでしょう。

しかし、最近はゲームが映画に取って代わるという話が多いですよね。

――そうですね。

コシンスキー私はそういったことは絶対に起こらないと思います。ただ、映画とゲームは明らかに互いに影響を与え合うことになるでしょう。昔から映画はゲームに明らかな影響を与えています。そしてこれからは、ゲームがどのようにして映画に影響を与えていくかを見るのが楽しみです。


――監督が以前手がけた『Gears of War』のCMでは『Mad World』が使われ、今作ではプロコル・ハルムの曲『青い影』が使われています。どの曲も非常に印象的だったのですが、監督はそれらの曲をご自分で選んでいるのですか?

コシンスキー:『Gears of War』の時は、広告会社が何曲か候補を持ってきて、例えばその中には『地獄の黙示録』でも使われたドアーズの『ジ・エンド』もありました。しかし、その中でも『Mad World』が映像に一番合っていると思ったんです。

『オブリビオン』では、あのシーンで使うための曲を何百もの候補の中から選びました。あからさますぎる曲は観客を映画の外の世界へ連れ出してしまうので、皆が知っているけど分り易すぎない曲を選びました。

そして、ジャック・ハーパーはクラシックなものが好きという設定もあります。『青い影』のオルガンでのバックメロディーは、時代を超える良さがあるので、終末世界でもきっと生き残る曲だと思います。

――分り易過ぎない曲を選んだとのことですが、今回選ばれた曲の歌詞は『オブリビオン』とリンクしている部分もありましたね。

コシンスキー:それは確かにそうですが、あくまで無意識的なものなっていたはずです。あのシーンであの曲よりももっとシーンにピッタリ合う曲......例えば我々はギリギリまでビートルズの『サムシング』を使おうとしていましたが、もし『サムシング』を使っていたら、あのシーンで起こっていることをそのままナレーションしているようになっていたはずです。

しかし、それでは注意を引きすぎてしまっていたでしょう。そうなってしまうと、観客は役者の台詞ではなく曲に集中してしまいます。バランスを取るのが難しいんですが、あそこでの台詞はとても重要なので、曲が完全には同調しないようにしました


オブリビオン撮影現場に立つコシンスキー監督

――デザインや建築学を学んだ後に映像の道へ進んだ監督から見て、デザインや建築と映画の製作に繋がりはあると感じていますか?

コシンスキー:もちろん。特にSF映画の場合、世界を構築しなければならないので、過去にデザインを学んだことは非常に役に立っています。SF映画はたくさん作ることがあって、本当に楽しんでいますよ。

それ以外にも、プロジェクトへの取りかかり方にも、建築家と映画監督に共通する部分があります。例えば建築家にとっての設計図は映画監督の脚本に似ています。さらに、どちらの場合も、自分一人では作ることができないのです。

建築家は自分一人では建物を作れませんし、映画監督だって一人で映画は作れません。数百、数千の人と協力しなければならないのです。これらの仕事で大事なのは、関わる全員と何を作ろうとしているのかをやり取りし、共通のゴールに向かって進んでいくこと。なので、非常に似ている点の多い仕事だと思いますね。


オブリビオンバブルシップとスカイタワー

――そして、今作ではバブルシップやスカイタワーなど壮大なセットを実際に作って撮影されていますが、なぜCGで作るのではなく、実際のセットで撮影したのですか?

コシンスキー:それは実際のセットを作って取る映像には、CGでは真似の出来ない独特の見た目と雰囲気があるからです。それを映し出せるように我々は努力しました。

さらに役者にとっては、セットとCGでは大きな違いがあります。今回、スカイタワーの外の景色は実際にスクリーンに映し出して撮ったんですが、それによって役者はその世界により深く入り込むことが出来たと思います。実際にそこにあるものを見ながら演技したのであって、無いものを想像して演技したわけではないですからね。

なので私は、可能な限りセットを作って映画を撮りたいと強く思っています。ブルースクリーンを使った合成ではない、映画の幻想、世界の幻想を作り出す冴えたやり方を探しているんです。

――本日はお忙しい中、ありがとうございました。

コシンスキー:ありがとうございました。


グラフィック・ノベルが作られた背景にはあんな話があったとは...! しかし、グラフィック・ノベル版の暗いバージョンのストーリーも非常に気になりますねぇ(日本語版出ないかな?)。

そして、『オブリビオン』は監督がSF映画ファンであるということがひしひしと伝わってくるようなシーン満載の映画でした。なんといっても映像が美しく、監督がSFファンとして撮りたいシーンを全力で撮っているかのよう

実際にセットを作って撮影したスカイタワーやバブルシップのシーンはグッとくるものがあるので、ぜひ映画館の大きなスクリーンで見ていただきたい。トム・クルーズがパイロットシートに座っているというだけで、『トップガン』ファンとしては胸が熱くなりました。そして劇中に流れる音楽も世界観にマッチしていて良かったです。特にエンディング曲が素晴らしい!

ちなみに、監督の次回作となる『トロン3』はシリーズにおける『帝国の逆襲』になると、海外のインタビューで語っていました。『帝国の逆襲』が監督に与えた影響は大きいのかも。『トロン3』も楽しみだなぁ......!

映画『オブリビオン』は5月31日(金)TOHOシネマズ日劇他、全国ロードショー。



(C) 2013 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.


映画『オブリビオン』公式サイト
Oblivion[Radical Studios]

(傭兵ペンギン)

関連記事

コメント

コメントはまだありません
コメントを書き込むにはログインしてください。

いまブロマガで人気の記事

コタク・ジャパンチャンネル

コタク・ジャパンチャンネル

このチャンネルの詳細