歴史的恐怖作品『シャイニング』を思わせる画面と、Jホラーを思わせる静かな日常的恐怖で観客をその世界観へと引きずり込むホラー映画『フッテージ』が、5月11日より公開中です。
ホラー初主演となるイーサン・ホークの演技も話題の今作ですが、今回は製作に名を連ねる、『パラノーマル・アクティビティ』や『インシディアス』などの低予算ホラー映画を大ヒットさせたプロデューサー、ジェイソン・ブラムさんにインタビューさせていただきました。
低予算・高クオリティな映画へのこだわりと誇りの感じられる言葉の数々は以下より。
【大きな画像や動画はこちら】
ーー『フッテージ』ではイーサン・ホークがホラー初主演を果たしています。彼の怖がったり驚いたりする演技は非常に新鮮かつかわいげがあり、見ていて主人公に感情移入しやすいと感じました。イーサン・ホークを起用するに当たって、彼にどういった演技を期待したのでしょうか?
ジェイソン・ブラム(以下、ジェイソン):彼とは長年の友人で、何度もオファーしてやっと出演してもらえたんだ。彼はとてもキャラ作りが上手いから、主人公がどういう気持ちでいるか、手に取るように観客が理解できる演技をしてくれると思っていたよ。
ーー音楽がいわゆる西洋風ではないものが多く、強烈に耳に残ったのですが、どういった狙いでこういった音響を使用したのでしょうか?
ジェイソン:音楽のクリストファー・ヤングは実績も実力もある。音楽に関しては彼に託したよ。
ーー今作が8ミリフィルムが一つの鍵になっていますが、8ミリフィルムに対して何か特別な思いはありますか?
ジェイソン:たまに映像関係者が、フィルムでもう映画が撮れないと悲しむけど、それはくだらないことだと思う。進歩は悪いことだとは思わない。それによって、多くの人へ映像制作の門戸が開かれたからね。
ーー今作もそうですが、担当されている作品の多くが、ジャンピングスケアーが10数分に一度炸裂するといったホラーではなく、静かにじわじわと恐怖感が高まっていくものが多いように感じます。そういった種類の恐怖が、ご自身の考える「怖い」ホラーなのでしょうか?
ジェイソン:ホラー映画にだって人々を惹きつけるストーリーが大切だと思うんだ。現在の多くのアメリカのホラー映画は、恐怖シーンを中心にストーリーが作られるケースが多くあるけど、私は逆のアプローチをしていて、良いストーリーを軸に、どこに恐怖を盛り込んでいこうかと考えるんだ。
ーー静かな恐怖の持続もそうですが、本作からはJホラー作品『リング』、『呪怨』などのテイストを感じました。好きなJホラー作品、影響を受けたJホラー作品があれば教えてください。
ジェイソン:『リング』かな。Jホラーは好きだけど、スコットやカーギル(共同脚本家)は私と比較にならないくらいJホラーをよく観ているし、とても詳しいんだ。彼等と仕事をするとホラー映画に関して知識を深めることができて楽しいよ。
ーーホラー映画において、人を恐怖させるのに一番重要なポイントはなんだと思いますか?
ジェイソン:普段の生活に関連性があるものだと思う。身近なシチュエーションがもっとも怖いね。
ーー現代では現実が物騒なため、仮に殺人事件などが起きた場合に「ホラー映画の影響」などと言われることは多く、そういった点からホラーはやや風当たりの強いジャンルだと思います。そのような意見にはどういった印象をお持ちですか?
ジェイソン:低予算でも高いクオリティーを維持できて、たくさんの観客に観てもらえるジャンルはホラーだと思っているんだ。このモデルに沿った映画製作を私は愛してやまないから、多少風当たりは強くとも、今後もホラーは製作すると思うよ。
ーーホラーというのは恐怖を体験することでさまざまなことを学べるジャンルだと思うのですが、どういった人に『フッテージ』、そしてホラー映画を見てほしいと思いますか?
ジェイソン:できるだけ多くの人に観てもらいたい。ホラー映画というジャンルだからといって食わず嫌いにならないでほしい。
ーー『フッテージ』がヒットしたことからもわかりますが、現在アメリカではホラー映画シーンが盛り上がっている印象を受けます。一方で昨今の日本ではジャンル映画、ホラー映画はやや苦戦してるのが現状です。ホラーに抵抗のある観客に『フッテージ』をすすめるとしたら、どのような言葉をかけますか?
ジェイソン:『フッテージ』はホラー映画だけど、主人公の野心が大切な家族に悪い影響をもたらすという、しっかりとした物語を背景に恐怖を最大限引き出している作品で、イーサンの恐怖演技もすごくいいので、是非観てください!
『フッテージ』は全国順次公開中。
(C)2012 ALLIANCE FILMS (UK) LIMITED
配給:ハピネット
(スタナー松井)
関連記事
- 日本式ホラー映画の重鎮かく語りき。『クロユリ団地』の監督・中田秀夫さん、脚本家・三宅隆太さん、加藤淳也さんにインタビュー
- 胴体、首から離れるってよ? 美人女性監督による和製スラッシャー映画『クソ素晴らしいこの世界』予告編
- ボードゲームを500タイトル以上作り出したデザイナーが、アイデアを生む秘訣を語る! ライナー・クニツィアにインタビュー【後編】
コメント
コメントを書く