海外のアニメオタクと違法アップロードアニメは切っても切れない間柄?
最新アニメの登場人物たちのコスプレをした若者たちで賑わうフィンランドのコンベンション。でもよく見ると、フィンランドで放送されていないはずのアニメのキャラがたくさんいます。
私がよく行き来しているフィンランドでは、『楽しいムーミン一家』を始め『ニルスのふしぎな旅』、『ポケモン』、『デジモン』などの日本で制作されたアニメが合法的にテレビで放映される一方、多くの若いアニメファンたちは、オンライン上に違法アップロードされた最新の日本のアニメを楽しんでいます。
日本でソフト化されているアニメを違法アップロードサイトから視聴するのと、フィンランドでお金をいくら出そうが正規に見ることができないアニメを、違法アップロードサイトから視聴するというのでは、同じ違法行為でも少し性質は違うといえるかもしれません。でも、そんなアニメを試聴するフィンランドのファンたちも、どこかしらやましさを感じながら見ているようです。
日本人として見ていても、日本の文化を楽しんでいる彼らを見て嬉しいような、でもアニメを製作する側に海外での人気に見合うだけの利益が渡っているのか心配になるような......
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例えば、『ジョジョの奇妙な冒険』などのアニメが日本で放映された次の週には、フィンランドのアニメファンももう最新エピソードを見て、その内容について語っているといった状況があります。『輪るピングドラム』や『TIGER & BUNNY』だって、日本で放映されてすぐにフィンランドのファンは認知していました。
放映から大体半年後くらいに開催された「ですコン フロストバイト」では多数のコスプレイヤーたちがそれらの番組のコスプレをしていましたが、それらの作品はフィンランドでは放送されていません。もちろん、該当するコスプレイヤーたちが違法サイトでアニメを見ていたという証拠にはなりませんし、これは彼らを非難する意図で示した例ではありません。
ただ、オンライン上にそれらの最新アニメがアップロードされていることが違法行為であることは、それらを楽しむフィンランドの視聴者たちにも認識はあります。少なくとも、私が接してきたフィンランドの「オタク」たちは違法行為であろうことは知っており、中には「フィンランドでソフト化されたら必ず買うよ」と言っている人もいました。
とはいうものの、無料で違法アップロードされたアニメが視聴されることが、どれだけの金銭的/非金銭的な利益を製作者、業界、日本にもたらしているのかは私には想像がつきません。一方で、日本のアニメが放送されてから即座に海外のアニメサイトにファンメイドの字幕とともにアップされ、それが視聴されることが、現代日本のポップカルチャーへの関心を支えている面も否定出来ないとも感じています。また、こういったファンメイドの字幕の多くが英語での字幕が多いことから、この現象がフィンランドに限ったものでは無いということも推測出来ます。
こういった違法行為は、日本で放映中の最新アニメの海外での版権を持っている会社がまだ存在していないから起きている現象なのかもしれません。海外に版権を持つ会社がいない状態では、海外で番組が見られようが見られまいが、現時点では金銭的な損害が生じていないため、日本の版権を持つ会社もいちいち相手にせず、違法行為がのさばっている可能性もあると思います。しかし、将来その国で放送なりソフト化される場合は、違法アップロード版を視聴したことでそれらを視聴/購入しなければ、「損害」と考えることもできるでしょう。
私はこの違法行為を助長するつもりもありませんし、違法アップロードを認めるべきだと言っているわけでは毛頭ありません。ただ、私の目には、フィンランドを始めとする海外での日本のポップカルチャーへの憧れの中には、違法アップロードを通して成り立っている部分も少なからず存在するように見受けられます。
これが世界的に見て、金銭的にどれだけの損害となっているかはわかりません。ですが、ここから生じるその作品への関心によって、アニメ系コンベンションなどで関連フィギュアやグッズへの購入へとつながっていることは、それら合法的には未放送の作品の関連商品が、その購入を見こまれコンベンションなどで販売されていることからも推測されます。
そして日本のアニメ文化、ひいては日本文化への関心を持った若者たちが、日本へ旅行へ行ったり、日本語を勉強したり(※)、日本へ留学したりしているのもまた事実だと思うのです。つまり、違法にアニメがアップロードされていることは、そのアニメを制作した会社にとってはマイナスとなっている可能性もありますが、もしかしたら関連商品の販売で見たり、国レベルで見れば大いにプラスとなっている可能性もあるのではないでしょうか?
※ 「フィンたん」としてお馴染み、駐日フィンランド大使館ツイッターアカウントもヘルシンキ大学での日本学と日本語の人気のほどをツイートしています。アニメや日本のポップカルチャーとの関連性は指摘されてはいませんが、フィンランド内外で見、聞き、触れた日本の文化や言語へ関心を持ってのことでしょう。
正規の手段ではお金を払っても手に入らないものを違法に手に入れ、それによって日本に関心を寄せる海外のアニメファンたち。そして、今では日本政府も「クールジャパン推進会議」などを開いてアニメなどポップカルチャーを含む、日本の文化を海外に推進していこうとしています。
今後日本で海外のアニメ違法アップロードに対する認識が広まれば、もしかしたらアニメ制作会社も違法行為の取り締まったり、海外向け公式ストリーミング配信を始めるなどして、これまでに取りこぼしてしまった利益を取り戻そうとする動くかもしれません。そうなった時、これまでまかり通ってきた違法行為が生み出してきた、長い目で見れば利益となりうる部分を損なわずに、製作する側と海外ファンとのウィンウィンな環境を整えることはできるかどうか、注目していきたいところです。
(abcxyz)
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