ホラーなのか、SFなのか、コメディなのか......さまざまなジャンル映画の「最高!」な要素をミックスしてハリケーンな映画『キャビン』。
今回は、変化球を通り越したビーンボールのような衝撃、そしてド級の「してやられた感」を味わえる爽快な作品となっている本作を生み出した、ドリュー・ゴダード監督(脚本も兼任)にインタビューして参りました。
さすが、かのジョス・ウェドン監督とタッグを組んだ男。期待を裏切らない言葉の数々は以下より。
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ーー『キャビン』にはホラー、SF、コメディなど、実にさまざまな要素が混在していますが、観客にどういった反応を期待して作ったのでしょうか?
ドリュー・ゴダード(以下、ドリュー):まず何よりも、ただただ楽しんでもらいたい。自分がホラーが好きなのは、仲間と一緒に見たり、叫んだり、笑ったりと、体験を共有するのが楽しいジャンルだからで、本作ではそういったアトラクション型のホラー体験を作ることを目指したんだ。だから、是非誰かと一緒に見て、一緒に叫んで、一緒に笑ってほしいね。
ーー本作はホラー初心者へのホラー入門、そしてホラーとしばらく距離をとっていた人をホラーへ引き戻す作品としても最適だと感じました。『キャビン』には「みんなにホラー映画を見てほしい」といった思いも込められているのでしょうか?
ドリュー:そうだね。もちろんハードコアなホラーファンが楽しめるようにいろいろな仕掛けをしたけど、それだけの映画にはしたくないと思っていたんだ。今言ってくれたように、全くホラーやジャンル映画を見たことがない人にとって、本作が入門、そして他のジャンル映画に興味を持つきっかけになったらいいな、という思いが『キャビン』の作りには反映されているね。
ーー『キャビン』では街中の血のりをすべて買い集めるくらいの勢いで、血の表現にこだわったとのことですが、血の表現で何か参考にした、インスピレーションを受けた作品はあるのでしょうか?
ドリュー:血には本当にこだわったよ。やっぱり現実の血と同じで、流れてすぐの鮮血は真っ赤で、乾いていくとともに色が濁っていかないとダメ!(笑) そういう点ですごく参考になったのはアレクサンドル・アジャ監督の『ハイテンション』だね。あの作品での時間経過とともに変化していく血の描写は本当に素晴らしいんだ。
ーー『キャビン』、そして監督が以前たずさわった『クローバー・フィールド』を見ても、日本文化からの影響が強く感じられますが、特に影響を受けた、もしくは好きなJホラー映画、怪獣映画、その他日本の娯楽があれば教えてください。
ドリュー:いやあ、本当にたくさんあるから困るな......。『クローバー・フィールド』のプレミアの時に東京に滞在したんだけど、実はその時、滞在時間を2週間くらい伸ばして、ビデオ屋に通っては毎日延々とタイトルもわからない大量のJホラー映画をホテルで見続けてたんだよね。それでわかったのは言語がわからないと、意外に特別な恐怖感があるってこと(笑)。
具体的にいくつか作品を挙げるのであれば、やっぱりクラシックである『リング』、『呪怨』、『オーディション』は大好きだね。
ーー『キャビン』を中心に、現在ホラーシーンが盛り上がっている印象を受けます。リメイクも多く製作されていますが、監督が個人的にリメイクしてみたいホラー作品があれば教えてください。
ドリュー:基本的に自分はリメイクは作らずにオリジナルなものだけを作りたいと思ってるから、パッとは思い浮かばないんだけど......。ただ、『キャビン』はリメイクを監督する気持ちに一番近い精神で作った映画だと思う。サム・ライミやジョン・カーペンターからものすごく影響を受けているし、本当にたくさんの映画にオマージュを捧げて作った作品だからね。
ーーホラー映画といえば、続編が次々と作られていくのが伝統ですが、『キャビン2』、『キャビン3』、挙句の果てに『キャビン7』くらいまでシリーズ化できたら......といった思いはありませんか?
ドリュー:個人的にはパート1、パート2~といった続編映画の作りはあんまり好きではないから、『キャビン』もシリーズ化は意識して作ってない。むしろ起承転結がしっかりある、独立した作品として機能するように気を使ったんだ。でも、『キャビン』の世界観は本当に気に入っているから、この世界観を壊さずに成立する何かが思いつけば、続編を考えるかもしれない。
ーー監督が作るスラッシャー映画やアニマルパニック映画を見てみたいのですが、今後違ったテイストのホラー、ジャンル映画を撮りたいという思いはありますか?
ドリュー:映画を作っていて、「一本一本を大切に作ることが大切」ということを学んだから、先のことはまだわからないな......。でも、いつかはホラーに戻るだろうし、作るだろうなとは思う。
ーー人はなぜホラー映画に惹かれるんでしょうか? 人は現実でも怖い体験を十分にできる、するにもかかわらず、創作物の中でも怖い体験をしたい、残酷なものを見たいという欲求を持つのはなぜだと思いますか?
ドリュー:きっと人間には原始的な本能のようなものがあって、それがショッキングな体験を求めるのかもしれない。現実には直面したくない怖い、残酷な出来事を心の底では「本当は体験しなければいけない」と思っていて、それを映画館という安全な場所で、ホラー映画を通して体験することで我々は満たしているんじゃないかな。
ーー現実が物騒なので、仮に殺人事件などが起きた場合に「ホラー映画の影響」などと、ホラー映画を中心にポップカルチャーは昔から攻撃の対象になりがちです。そういった点でホラーは風当たりの強いジャンルだと思うのですが、そういった意見にはどういった印象をお持ちですか?
ドリュー:これは非常に複雑な問題だから、簡単にこうだとは言えないけど、自分個人としては映画が直接的に何かの事件の引き金になるとは思っていない。一方で、社会的な問題と結びついたり、複合的な要因の一つになることはあると思う。だから、我々ものづくりをする人間は作品を通して何を伝えようとしているのか? について、真剣に考えなければいけないし、責任を持たないといけない。
ポップカルチャーというのは「ただただ面白いからやる」という思考に陥りがちだけど、ものづくりはただ搾取するだけではダメで、何か貢献できるところがないといけないと思うんだ。
ーー最後に、監督は恐らくご自身が「オタク、ナード、ギーク」といった人種であると自覚していると思うのですが、自分が「オタク、ナード、ギーク」であるということに誇りを持っていますか? ちなみに、監督が『キャビン』でタッグを組んだジョス・ウェドンさんに同じ質問をしたことがあるのですが、彼は「もちろん!」と力強く答えてくれました(笑)。
ドリュー:もちろん! 僕もジョスと同じだよ(笑)。これで日本の「オタク、ナード、ギーク」の仲間入りができるなら、嬉しいね(笑)。
ーー本日はどうもありがとうございました!
ドリュー:こちらこそ、ありがとう。
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(スタナー松井)
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