木野龍逸の「ニッポン・リークス」

避難解除に向けた住民説明会は政府の演出か?

2014/07/21 08:19 投稿

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木野龍逸の「ニッポン・リークス」


                   2014/07/21(No.005)


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[目次]

1.東電福島第一原発事故トピック

(1)避難指示解除に向けて川内村で住民説明会開催

━━━経産省が取り仕切る避難解除に疑問

(2)東電会見の情報公開度が低下

━━━テレビ会議会見の意味不明さ

(3)日弁連が応急仮設住宅の期限延長に関して、新たな立法措置を求める

━━━現行法と実態が乖離した中、被災者が追い詰められる

2.気になる原発事故ニュース

3.今号のQ&A

4.編集後記

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1.東電福島第一原発事故トピック

(1)避難指示解除に向けて川内村で住民説明会開催

━━━経産省が取り仕切る避難解除に疑問

 2014年7月13日と14日、政府は福島県双葉郡川内村の避難指示区域再編に向けた住民説明会を開催した。説明会は川内村コミュニティセンターと、郡山市といわき市にある仮設住宅集会場の3か所で開催され、川内村役場によればそれぞれ60人、14人、7人が参加した。

 川内村は東部の地域が、線量が高く当面は戻ることができない居住制限区域と、比較的線量が低いために早期の解除を目指すことになっている避難指示解除準備区域に指定されている。政府は、避難指示解除準備区域の解除と同時に、居住制限区域を避難指示解除準備区域に再編することを目指している。

 説明会に先立って新聞各紙は、政府が7月26日の解除を目指していると報道。説明会ではこの日程が先送りされるかどうかが最大の焦点になるはずだった。

「はすだった」というのは、説明会の流れを見る限り政府が期日をポイントにしていたとは思えず、説明会の前から結論は決まっていたのではないかと感じる進行だったからだ。

 住民からは、仮置き場の除染廃棄物を持っていく先が決まっていないのに戻れない、山間部の生活インフラは富岡町や大熊町なので川内村だけ解除されても生活できない、生活道路も所々で崩れたりしていて危険、などの意見が出ていた。

 これに対して内閣府原子力被災者生活支援チームの井上博雄参事官は、「仮置き場は政府としてしっかりやる」「村の道路は通行不可能なところはない」「フォローアップ除染はやる」と回答。住民からは、避難指示解除準備区域と居住制限区域の一括解除を求める声もあったが「準備区域は先に解除して、線量が低減若干高い居住制限区域は別枠にした方がいい」と述べ、「我々としての考え方は、そういうこと」だと言い放った。

 つまり、住民側からの要望はすべて処理済みであるという考えだった。

 結局、川内村コミュニティセンターでの説明会で政府は、住民から不安の声が多いことをもって解除の延期を表明したが、除染によって空間線量率が下がっているので「解除の環境は整っている」という考えは変えなかった。

 これにより政府は、いつでも解除できる余地を残したことになる。そしてこの延期が想定内だったことは、河北新報の記事からもうかがわれた。

避難指示解除9月以降 住民の反発で延期 福島・川内村東部(2014年7月14日 河北新報電子版)

http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201407/20140714_63020.html

 記事は、次の一文で締めくくっている。 

━━「26日解除」を正式提案し、住民に押し切られた政府側だが、反発は織り込み済み。政府関係者は「都路同様、正式提案後、数カ月間延期し解除する政府シナリオに狂いはない」と話した。━━

 つまり住民説明会は、意見を聞いたという証拠を残すための演出だったということになる。

 コメントある都路地区は、4月1日に避難指示が解除された田村市の地区だ。ここで簡単に、都路地区と川内村の経緯を振り返ってみる。


田村市

13年6月末 除染完了

8月1日 3か月間の特例宿泊開始

10月14日 住民説明会(政府は11月1日解除を提案。反対意見を受けて延期)

14年2月23日 住民説明会(4月1日解除を通告)

4月1日 避難指示解除

川内村

14年3月末 除染完了

4月27日 3か月間の特例宿泊開始

7月13日、14日 住民説明会(7月26日解除を提案。反対意見を受けて延期)

〇月×日 住民説明会で解除決定?

△月□日 避難指示解除?


 こうして見ると、田村市と川内村が同じパターン、同じ期間、同じシナリオで進んでいることがわかる。まるで演劇を見ているような錯覚に陥る。

 では、政府が考える川内村の解除はいつなのか。田村市と同じペースであれば、遅くとも今年末ということになりそうだ。あるいはもっと早いかもしれない。来年の正月を故郷で過ごすことができるよう解除するという、政府の説明が聞こえてきそうだ。

 解除に当たっての説明も、似通っている。都路地区の説明会で、原子力災害現地対策本部の熊谷敬副本部長は、「避難指示は憲法22条の居住の自由を阻む例外的な規制で、我々は帰れる方の権利を守りたい」と述べた(14年2月23日 毎日新聞電子版)。

 川内村では、7月4日に復興庁に異動していた熊谷統括官が、「政府が出している避難指示は、帰りたいと思う人の居住の自由を制限する極めて強い規制。一定の環境が整い次第できるだけ早く解除すべきものだ」と、ほとんど同じ主旨の理由を説明した。場所が変わっても、説明者と内容は変わらなかった。

 こうして2つの町の状況を振り返ると、政府はほんとうに住民の意見を聞く気があるのか、疑問が大きくなるばかりだ。

 

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