ステディな健ちゃん
九十三年のバレンタインデーに、私はお兄ちゃんにチョコレートを送った。
白と黒のフェルトとパンヤで実寸大のサッカーボールを作り、チョコと一緒に送った。私はフェルトを縫いながら「もう恋なんてしないなんて言わないよ、絶対」と歌っていた。
徹さんの件で傷心していた私は、ずっと変わらず思い続けてくれるお兄ちゃんの優しさに甘えていた。
入社試験の結果は、すぐに学校に連絡がきた。本社で一度挨拶を交わした人事課の男性職員が、わざわざ高校までやって来た。
さすが東京の企業は違う、と校長は舞い上がり、教頭がしゃしゃり出て校内を案内しているのが見えた。
建て替えが決まっているこんな田舎のおんぼろ校舎に取り立てて自慢できるところはない。教頭は廊下を歩きながら方言丸出しで陽気に話している。私は、学校と教師を見て内定を取り消されるのではないかと、本気で心配した。
それが杞憂に終わり採用
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