「有害図書問題」後編、いよいよ「鳥取県のやらかし」に触れていきます。

皆さんこんにちは、薬理凶室法務部の倫獄です。
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前編では問題の前提である「有害図書とは何か」、そして「表現の自由」「検閲の禁止」について解説しました。

後編である今回は、有害図書にまつわる判例に触れつつ、問題視された鳥取県の有害図書問題について触れていきます。

長くなるのでご挨拶はこの辺にして、早速本題に移りましょう。

◆◇◆エロ本規制とイタチごっこ◆◇◆



さて、鳥取県が云々を前に、実は有害図書指定の前提となる「青少年保護育成条例」そのものの合憲性を真っ正面から争った憲法判例が存在します。

それが「岐阜県青少年保護育成条例事件」です。平成元年とだいぶ昔の判例ですが、今なお有効な最高裁判所の判断ですので、その概要をまずは見ていきましょう。

まず問題視されたのが、全国各地で件の条例が制定されたのち、1970年代に入って全国的に広がった(今では絶滅の危機に瀕している)「エロ本自販機」です。

これによって、有害図書販売の規制に自販機を盛り込んだ条例または改正が全国的に行われ、規制が強化されることになりました。

とはいえ業者側も黙っている訳はなく「一夜本」というものが流通。これは、有害図書に指定された場合、表紙だけを一夜にして差し替え、別の本扱いでごく短期間に再販売されるというものでした。

当時の有害図書指定は、審議会の諮問を要する個別指定の方式しかなかったため、一夜本には対応ができなかったのです。まさに規制のいたちごっこ。

この一夜本に対応するため「包括指定」の仕組みを全国に先駆けて取り入れたのが岐阜県です。そしてこれが、憲法二十一条違反なのではないかと争われたのが「岐阜県青少年保護育成条例事件」です。

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