オンナのウラガワ ~名器大作戦~
第253回 怖い話をエンタメとして楽しみたいウラガワ(1)
◆もくじ◆
・怖い話をエンタメとして楽しみたいウラガワ(1)
・最近の志麻子さん
【配信版】オメ★コボシ 8/2まで
『業苦 忌まわ昔(弐)』角川ホラー文庫から発売中
TV「有吉反省会」にヒョウ姿でひきつづき出演中
「岩井志麻子のおんな欲」連載中
カドカワ・ミニッツブック版「オンナのウラガワ」配信中
MXTV「5時に夢中!」レギュラー出演中
・著者プロフィール
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このところの新型肺炎の流行によって、「怖い」ものの順番もがらりと入れ替わってしまった。
幽霊や妖怪に盛り上がれる夏というのがどんだけ楽しいものであるかを噛みしめる。
これからも楽しく怖がりたい……、そんな思いを込めて、
エンタメとして怖い話を怖がり楽しみたい、というテーマでのエピソードをお届け。
今から十年前、息子と近所のラーメン屋に行ったら隣に妙な母娘が居たが……。
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2014年11月~18年12月のバックナンバーは、「月別アーカイブ」の欄からご覧ください。
2019年1月「去年に縁があったあれこれのウラガワ」
2月「台湾で初めて会った人たちのウラガワ」
3月「胸に引っかかる人を思う春のウラガワ」
4月「こういう人いるよねという出会いのウラガワ」
5月「働くということについて考えたウラガワ」
6月「私なりのプロファイリングをしてみたウラガワ」
7月「芸事業界の人たちの願いごとのウラガワ」
8月「怖さひかえめな怖い話のウラガワ」
9月「まだ挽回できるかどうか気になるウラガワ」
10月「なぜか惹かれる未解決事件のウラガワ」
11月「今頃になってわかってきた出来事のウラガワ」
12月「とりあえず終えたかな、というウラガワ」
2020年1月「愛しい南国の怖い話のウラガワ」
2月「ひきつづき東南アジアの怖い話のウラガワ」
3月「どこか心残りの別れのウラガワ」
4月「未経験な世の中のあれこれのウラガワ」
5月「「あの人実は」「あの人やっぱり」のウラガワ」
6月「アマビエ的なものや人のウラガワ」
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2013年7月~12月 名器手術のウラガワ/エロ界の“あきらめの悪さ”のウラガワ/エロとホラーと風俗嬢のウラガワ/風俗店のパーティーで聞いたウラガワ/エロ話のつもりが怖い話なウラガワ/風俗店の決起集会のウラガワ
2014年1月~10月 ベトナムはホーチミンでのウラガワ/ベトナムの愛人のウラガワ/永遠のつかの間のウラガワ ~韓国の夫、ベトナムの愛人~/浮気夫を追いかけて行ったソウルでのウラガワ/韓国の絶倫男とのウラガワ/ソウルの新愛人のウラガワ/風俗嬢の順位競争のウラガワ/夏本番! 怪談エピソードの数々のウラガワ/「大人の夏休みの日記」なウラガワ/その道のプロな男たちのウラガワ
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子どもの頃から怖い話が大好きで、ホラーと名がつけば映画もドラマも漫画も、手に入れられるもの、見られるものにはすぐ飛びついていた。
幽霊、妖怪、超常現象、宇宙人、謎の生物、不吉な予言に謎めいた言い伝え、都市伝説、未解決事件、とにかく怖いと感じられるものはすべて興味津々だった。
ところが春から夏にかけての新型肺炎によって、怖いものの順番ががらりと入れ替わってしまった。いつ自分が感染するかわからない未知の疫病、もしかしたら自分がばら撒いてしまうかもしれない、得体の知れない伝染病。
移したり移されたり、それも怖かったけど。普通の人達の買い占めだの転売だののセコさ強欲さを見せつけられ、自粛警察とか正義中毒とか呼ばれた過剰な同調圧力や監視に嫌がらせも、これらは不快、不安というよりまさに恐怖だった。
こんなに病気が怖い、人が怖いと思ったことはなかったわ。
戦場や心霊スポット、治安が悪いと評判の場所ではなく、いつもの街に出ることが怖いなんて。普通に、今まで行ってたデパートやライブハウスやレストランが怖いなんて。
見るからにヤバい人、反社会的組織の人や、あからさまに私に害意や敵意を持っている人ではなく、ただ街ですれ違う人、顔見知りの人、友達や家族までが怖いなんて。
だけどやっぱり、怖いと思ってた人達も仲間ではあったわけで。みんなの頑張りでどうにか収束に向かい、日常に戻りつつある。幽霊や妖怪に盛り上がれる夏がどんだけ楽しいものであるか噛みしめ、これからも楽しく怖がりたい。
というわけで七月は、怖い話をエンタメとして怖がりたい、というテーマでいく。例によって全編に渡り登場人物や背景に、少々の脚色を加えてあるのをおことわりしておく。
※
平成22年、今からちょうど十年前、角川ホラー文庫から『現代百物語 嘘実』という本を出してもらった。その第四話として、こんな話を書いた。
「息子と近所のラーメン店に行ったら、隣に妙な母娘がいた。娘は一見すると普通のお嬢さんだが、無表情なままハイテンションで支離滅裂なことをまくし立てている。
お母さんは車椅子に座っていて、お母さんの介護をする健気な娘と見ていたが、後から息子が、実はお母さんの方が娘を介護していたんだな、といった」
……つい先日、親しい編集者とその店に行ったら、隣に一見すると普通の娘さんが来た。最初、連れがいるのかと思ったが、娘さん一人だけだった。
ずっと、しゃべり続けていたからだ。しかし耳にイヤホンもなく、スマホなども見当たらない。その支離滅裂な話を聞いているうちに、十年前の母と娘がよみがえってきた。
使っている単語、言い回し、声色、口調、間違いない、あのときの娘さんだ。でも、お母さんはいない。なのに娘さんはずっと、テーブルを挟んだ向かいの椅子に向かってしゃべっているのだった。
そのとき、あ、椅子にはお母さんが座っているんだな、とわかった。私達には見えなかったけれど、娘さんには見えていたのだ。
ちなみに娘さんは、
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