岩井志麻子「オンナのウラガワ ~名器大作戦~」

第193回 しみじみしんみりな出来事のウラガワ(1)

2018/11/30 17:00 投稿

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オンナのウラガワ ~名器大作戦~
第193回 しみじみしんみりな出来事のウラガワ(1)


◆もくじ◆

・しみじみしんみりな出来事のウラガワ(1)

・最近の志麻子さん 
 河崎実監督映画「シャノワールの復讐」DVD発売
 TV「有吉反省会」にヒョウ姿でひきつづき出演中
 「岩井志麻子のおんな欲」連載中
 カドカワ・ミニッツブック版「オンナのウラガワ」配信中
 MXTV「5時に夢中!」レギュラー出演中

・著者プロフィール

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さまざまな人との出会いを振り返ると、ちょっと感傷的になることもある。
岩井さんをしみじみと物思いさせた出来事をつづります。

ある取材で知り合った同世代の紳士は、何人もの女性と付き合って来た。
その中の一人とは娘さんももうけているのだが、それはあるときふっといなくなった女性が、「あんたの子よ」と連れて帰ってきた子だった。
そしてまたしてもその女性は居なくなったのだが、成長した子供が進んだ道は……。
え、これってちょっとぞっとする話のような……。

バックナンバーはこちらから↓
http://ch.nicovideo.jp/iwaishimako/blomaga

2014年11月~16年12月のバックナンバーは、「月別アーカイブ」の欄からご覧ください。
2017年1月「自分を重ねてしまう若者たちのウラガワ
2月「冬に聞いた奇妙な怪談のウラガワ
3月「春のさなかに聞いた怖い話のウラガワ
4月「木の芽時な人達のウラガワ
5月「五月だけどさわやかになれない人たちのウラガワ
6月「面識なしでも喜怒哀楽を喚起する人々のウラガワ
7月「ほんのり怖い人達のウラガワ
8月「真夏なのに秋の予感な有名人たちのウラガワ
9月「私が見たテレビの中の人のウラガワ
10月「大人だけど枯れるには早い人たちのウラガワ
11月「年下韓国人夫とのアジア旅のウラガワ
12月「捨ててもいいじゃないかのウラガワ
2018年1月「命や生きることについて考えたウラガワ
2月「人はなかなか変わらないのウラガワ
3月「きれいに卒業できない女たちのウラガワ
4月「新たな出会いの不気味なウラガワ
5月「良い季節でも人は病むウラガワ
6月「『有名な男の女』だった二人のウラガワ
7月「怪談の季節! ゾッとする実話なウラガワ
8月「嘘と本当のあわいの怖い話のウラガワ
9月「大人になりきれない人達のウラガワ
10月「ベトナム旅行チン道中のウラガワ


※2014年10月以前のバックナンバーをご購入希望の方は、本メルマガ下部記載の担当者までお知らせください。リストは下記です。

2013年7月~12月 名器手術のウラガワ/エロ界の“あきらめの悪さ”のウラガワ/エロとホラーと風俗嬢のウラガワ/風俗店のパーティーで聞いたウラガワ/エロ話のつもりが怖い話なウラガワ/風俗店の決起集会のウラガワ
2014年1月~10月 ベトナムはホーチミンでのウラガワ/ベトナムの愛人のウラガワ/永遠のつかの間のウラガワ ~韓国の夫、ベトナムの愛人~/浮気夫を追いかけて行ったソウルでのウラガワ/韓国の絶倫男とのウラガワ​/ソウルの新愛人のウラガワ​/風俗嬢の順位競争のウラガワ​/夏本番! 怪談エピソードの数々のウラガワ​/「大人の夏休みの日記」なウラガワ​/その道のプロな男たちのウラガワ​

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 私は一年のうちで十一月が、なんというか最も感傷的になってしまう。十二月に入ると誕生日もあるし、忘年会にクリスマスに大晦日にとなんだかんだ忙しくて、感傷的になっている暇もないからか。

 そんなわけで今月は、私をしみじみさせた人や物語、しんみりしてしまった出来事を書いてみる。全編に渡って、本人を特定されない程度に設定などの脚色をしつつ。

                    ※

 ある取材で知り合った同世代の美島さんは、長身の細身で物静かで穏やかな紳士で、一見すると学校の先生とか銀行員とか、そのような雰囲気なのだが。
 普通のバーや喫茶店だけでなく、風俗すれすれの店も経営しているので、そっちの筋の人達との交渉などもしなければならないし、厄介な客もたびたびやってくるしで、見た目に反してなかなかコワモテの顔も持っておられるのだった。

 そして美島さんは日本国籍だが、すでに亡いご両親は東南アジアA国の人達だった。先祖の墓もA国にあり、親戚もたくさんA国にいる。

「日本で生まれ育って日本の学校に通ったんで、あまりA国の言葉はできません。圧倒的にA国人より日本人の友達の方が多いし、付き合った女も日本人ばかりだった」

 そんな美島さんは正式な結婚は一度もしたことはないが、何人もの女性と付き合ってきた。籍を入れてないだけで奥さん同然だった女性も何人かいて、その中の一人とは娘さんももうけている。

「ぼくが大学を出てレストランに勤めながら、水商売のバイトもしていた頃ですね。同い年の女と一緒に暮らし始めた。結婚はしなかったけど、まぁ、元妻と呼びます。
 ともあれ三年くらい経った頃、元妻はふいっと出てったまんま帰ってこなくなった。
 正式な結婚じゃないから、元妻の本籍地も出身校も知らなかった。ぶっちゃけ風俗嬢だったし、実家とも縁切りしてたし。でもって、かなりのホラ吹きで嘘つきだった。
 パパはフランス人だとかお祖父ちゃんはロシアの血が入っていたとか、確かに目パッチリで鼻の高い顔ではあったけど、かなり整形してましたからね。
 その元妻がふっといなくなっても、探しようがなかったんです。本名も実家もわからないし、本当の素性を知る友人知人もいない。今みたいにSNSもなかったしね。
 それから十年近くの月日が流れた頃、突然その元妻が舞い戻ってきた。しかも、十歳く
らいの女の子を連れて。
 お前の子かと聞いたら、あんたの子よと返されました。

 元妻がいうには、出ていった直後に妊娠していることに気づいたけど、ぼくんとこに戻るのも嫌だったし新しい男もいたから、そいつの子ってことにしたんだそうです。
 どうしても普通の結婚をして、普通の家庭を持ちたかったと泣くんです。だけどその男にもすぐ捨てられ、娘を連れて家と男を転々としたようです。
 歳とって風俗も苦しくなって、いい男もひっかからなくなって、どうにもならないとなったとき、ぼくを思い出したんだなぁ。

 うーん、いきなり見たこともない十歳の子を目の前に置かれて、あんたの子よっていわれても、普通はすんなり受け入れられないですよね。
 百歩譲って元妻が、ぼくと一緒になったとき処女で、ものすごく身持ちの堅い女だった、というならともかく。ほんとにぼくの子かなぁ、というより、ぼくの子じゃないだろ、とは思いますよね。
 だけどその子、葵っていうんですが、初めて見たときからぼくに似てなくもない、とは感じました。体型もすらっとして、大人びた雰囲気で。
 

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