オンナのウラガワ ~名器大作戦~
第157回 年下韓国人夫とのアジア旅のウラガワ(1)
◆もくじ◆
・年下韓国人夫とのアジア旅のウラガワ(1)
・最近の志麻子さん
12/16(土)「オメ★コボシ40」開催
太田出版よりイヤミス『嘘と人形』発売中
角川ホラー文庫より『現代百物語 不実』発売中
TV「有吉反省会」にヒョウ姿でひきつづき出演中
「岩井志麻子のおんな欲」連載中
カドカワ・ミニッツブック版「オンナのウラガワ」配信中
MXTV「5時に夢中!」レギュラー出演中
・著者プロフィール
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この連載でもたびたび登場している、岩井さんより十八歳年下で韓国人の夫・ジョンウォン。
失踪騒動などもありながら、結局は元のさやに収まっている。
夫を連れてのアジア旅行のお供は、詩人の金子光晴の著作。金子先生も夫婦仲の修復を目的に旅をしていたのだ。
とはいえ、ほとんど文無しで放浪していた金子夫妻とは異なり、ホテルも航空券も予約済みの岩井夫妻の旅。だが、それらのお金はすべて岩井さんが出していて……。
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2014年11月~15年12月のバックナンバーは、「月別アーカイブ」の欄からご覧ください。
2016年1月「会えなかったけど気になる女たちのウラガワ」
2月「接点がないのに気になる人たちのウラガワ」
3月「嘘をつかずにいられない人たちのウラガワ」
4月「春のおかしなお便りの数々のウラガワ」
5月「距離感のおかしい人たちのウラガワ」
6月「台湾から連れてこられたある女性のウラガワ」
7月「大人の夏の観察日記のウラガワ」
8月「大人だからわかる怖い話のウラガワ」
9月「『志麻子のヤバモンGO』なウラガワ」
10月「取り返せない夏の思い出のウラガワ」
11月「常夏の国で生きる女の秋のウラガワ」
12月「冬を生きながら春を待つ女達のウラガワ」
2017年1月「自分を重ねてしまう若者たちのウラガワ」
2月「冬に聞いた奇妙な怪談のウラガワ」
3月「春のさなかに聞いた怖い話のウラガワ」
4月「木の芽時な人達のウラガワ」
5月「五月だけどさわやかになれない人たちのウラガワ」
6月「面識なしでも喜怒哀楽を喚起する人々のウラガワ」
7月「ほんのり怖い人達のウラガワ」
8月「真夏なのに秋の予感な有名人たちのウラガワ」
9月「私が見たテレビの中の人のウラガワ」
10月「大人だけど枯れるには早い人たちのウラガワ」
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2013年7月~12月 名器手術のウラガワ/エロ界の“あきらめの悪さ”のウラガワ/エロとホラーと風俗嬢のウラガワ/風俗店のパーティーで聞いたウラガワ/エロ話のつもりが怖い話なウラガワ/風俗店の決起集会のウラガワ
2014年1月~10月 ベトナムはホーチミンでのウラガワ/ベトナムの愛人のウラガワ/永遠のつかの間のウラガワ ~韓国の夫、ベトナムの愛人~/浮気夫を追いかけて行ったソウルでのウラガワ/韓国の絶倫男とのウラガワ/ソウルの新愛人のウラガワ/風俗嬢の順位競争のウラガワ/夏本番! 怪談エピソードの数々のウラガワ/「大人の夏休みの日記」なウラガワ/その道のプロな男たちのウラガワ
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この連載でたびたび、十八歳下の韓国夫ジョンウォンとのあれこれを書いてきた。五年くらい前、韓国に若い女ができて、彼もいっとき本気になったのよ。んで私も別れようかと考えたり、私が長年のベトナム愛人のとこに逃避したり。
おまえも浮気してんじゃないかよ、という突っ込みも虚しい、最も読者をあきれさせるコンテンツだ。なんだかんだあっても腐れ縁で、結局は元の鞘に収まってしまったし。
……さて。私はいったい、いつ頃から詩人の金子光晴先生を知り、代表作の一つである『マレー蘭印紀行』と、妻との放浪が主題の自伝三部作といわれる『どくろ杯』『ねむれ巴里』『西ひがし』を読むようになったのか。
なんとなく学校の教科書でその名前は知っていて、でもちゃんと著作を読んだことはなくて、三十五を過ぎてからベトナムがきっかけで東南アジア全般にハマり、その過程で名著『マレー蘭印紀行』を知った、という感じではないかと思う。
それが五年前から、夫と旅行に出るときは必ずこの四冊をカバンに入れるようになってしまった。金子先生は、ベトナムには行ってないんだけど。
時代とともに街や人や暮らしは大きく変わってしまっても、マレーシアやシンガポールの獰猛にして美しい密林の描写、上海や香港の情熱的な猥雑さ、日本とは明らかに違うアジアの空気と風と雨、現地の人々の雰囲気、独特の料理に文化や言葉などは、彼が旅した大正から昭和初年にかけての頃と変わりないものも多くある。
なんといっても金子先生が放浪の旅に出たのは、別の男と恋仲になってしまった妻を連れて行くことでその男と引き離し、夫婦仲も修復するという目的があってのことだった。
そういう私も、夫を連れてあちこちアジアを旅行するようになったのは、そんな気持ちがあったからだ。日本と韓国にいれば、いろんな感情がすべて生々しくなるし、互いの当事者達がやってきたりする。
どちらも等しく外国人になってしまう第三国にいれば、二人は運命共同体の実感も湧き、とことん二人きりにもなれ、愛憎ともなう関係者達はとりあえず遠くに去ってしまう。
さすがに私の愛人がいるベトナムには夫とは立ち寄らないが、金子夫妻が旅した街を夫と一緒に歩いていると、『マレー蘭印紀行』ではなく『マレー乱淫紀行』なんて不埒な不逞な言葉がよぎる。
金子先生のような才能も実力もない私だが、暴力的なほどの東南アジアの詩情と、野蛮な泰平の中の人の営みは私なりには書けると信じる。
夫は、あちらの女とは完全に別れたという。これは本当だと思う。やみくもに夫を信じて期待しているのではなく、当の女からもぴたりと連絡は途絶えていた。数年前までは必死に私に、夫と別れてと明け方まで連日しつこく電話してきていたのに。
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