IBMの大規模調査「IBM GLOBAL CEO Study 2012」では、ソーシャルメディア時代における新戦略として、多くのCEOが「顧客・社員・パートナー」との関係性を深め、競合優位の構築を推進していることを明らかにした。この記事では、先日開催されたセールスフォースのイベント「ドリームフォース」にて、この絆による価値創造を具体的にどのようにしていくか、発表された情報をベースに詳細に踏みこみたい。まずは第二回として、「社員との関係性を深めることによる価値創造」を、フェイスブックの事例をもとに紹介したい。
セールスフォースのCEO、マーク・ベニオフ氏は「仕事そのものが変化していることを示すものだ」として、FacebookにおけるWork.comの活用事例を紹介した。Work.comは、買収した「Rypple」をベースにしたソーシャルな社員評価システムで、 (1)目標の設定 〜 個人の目標を会社のゴールとあわせる (2)目的の管理 〜 アドバイザによるマンツーマンのコーチング (3)フィードバックと評価 〜 リアルタイムなフィードバックや感謝の意で表現する評価 で構成される。評価においてはカスタムバッジやAmazonのギフトカードにも対応する。オープンでリアルタイムな社内評価を実現するクラウドサービスだ。
このサービスを導入前のFacebookにおいては、自分のことをまわりがどう評価しているのか知る方法がなかった。現在はWork.comによって、3,900人におよぶ社員が日々どのような仕事をしているのかを誰もが知ることができるし、すばらしいことをした人に光をあてることができるようになった。FacebookのCIOであるティム・キャンポス氏は「ソーシャルが世の中にインパクトを与えているが、我々は、まだやりたいことの1%しかやっていない。そのためにWork.comを活用して、社員に投資をしていくことが不可欠だ。組織の構造や階層とは関係なく、人と人がつながる環境をつくることが必要だ。また成績評価のときだけフィードバックするのではなく、常にフィードバックをする仕組みも構築したい。そのためにWork.comは重要である」と語った。
(1)トップゴールとコミットするゴールを設定
(2) 同僚からの日常的なフィードバック
(3)上司やアドバイザーとマンツーマンのコーチング
セールスフォースにおけるWork.com責任者、ジョン・ウーキー氏の言葉は印象的だ。「人事向けソフトウェアは、管理ソリューションであり、企業の成功には関係ないと思っている人も多いだろう。しかし、組織と組織、組織と顧客を結び付け、組織のモチベーションをあげるという点で、Work.comは当分野における新たなアプリケーションだ」と、既存の人事システムとは目的自体が大きく異なることを強調した。そして、FacebookこそWork.comの最初のユーザーであり「顧客というよりも、パートナーとして一緒に仕事を変えてきた」と、両社の密接な関係を強調した。
なお、Work.comの主たる機能は次の通りだ。
- Work.comはSalesforceが提供するSales CloudやService Cloud、Chatterなどと統合することが可能。それにより、日々の業務中にリアルタイムに感謝の気持ちを伝え、共有することが出来る
- 各社員のプロフィールページには、目標や従業員からのフィードバック、コーチング、業績、報奨が表示される
- 業績目標は上司やチームと一緒に決め、現在の達成率などが表示される
- コーチングはプライベートな空間で、様々な社員からアドバイスを貰ったり、会話形式でコミュミケーションが可能。自分自身の成長に生かすことができる
- 今まで貰った報奨や様々なフィードバックが業績目標と統合された形で表示されるため、特定の人からの印象などに左右されず、その社員の職場における真の姿が浮き彫りにされる
- Work.comはAmazonとシステム連携し、ギフトカードを含めたフィードバックバッジを送ることができる
- 分析ツールでチーム内の好業績の従業員を確認し、誰が昇進するにふさわしいか判断材料にすることができる
- さらにForce.comの連携機能を利用して、Workdayなどの人事システムと連携し、業績を人事システムに反映することができる
なお、Work.com の日本における正式サポートおよび提供時期は現時点では未定となっている。(詳細はこちら)
Work.com により、企業はソーシャルテクノロジーを利用して、チームで決めた目標に基づいて社員の意識の統一を図り、日々の働きをリアルタイムに共有できる。またそれを認知し、適切な働きに対しては報奨を与えることで社員のモチベーションを高め、上司や同僚からの継続的なフィードバックと的確な評価によってパフォーマンスの向上を促進できる。またWork.comは、営業、サービス、マーケティングのスタッフが利用するSalesforce環境と統合することで、企業のミッションと社員一人ひとりの職務内容を密接につなぐことが可能になるとしている。
(5) Workdayと連動して、人事システムに業績を反映
イベントでは、人事財務のエンタープライズクラウド・サービスを提供しているWorkdayのCEO、アニール・バンリ氏も登場。「これまで以上にSalesforceのクラウドと当社の人事や財務サービスを連携させ、より良いものにしていきたい。さらにパートナーシップをChatterの領域にも拡大したい」と語った。
ちなみに、絶好調の音楽ストリーミング配信サービス、Spotify もWork.com ユーザーだ。日本語化されたビデオ (ここでは旧名 Rypple となっているのが 現 Work.com)があるので、具体的な用途などに興味ある方はぜひどうぞ。
Click here to view the embedded video.
閲覧できない方は YouTube へ [Spotify社 Ryppleでソーシャルパフォーマンスを実現]
■ セールスフォース・イベント「ドリームフォース」特集記事
・第一回「セールスフォース、全製品ラインを統合する新たなソーシャル戦略を発表」
・第二回「顧客との絆を深める。バージンアメリカが目指すソーシャル革命」
・第三回「人事は管理からエンパワーメントへ。Facebook社内のソーシャルな社員評価システム」
by 斉藤 徹
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