用語説明:【CRM(Customer Relationship Managemant)顧客関係管理】
顧客接点での情報を統合管理し、顧客との長期的な関係性を構築、製品・サービスの継続的な利用を促すことで収益の拡大を図る経営手法。
年齢、性別、趣味、嗜好などの個人の情報や購入・利用履歴だけでなく、苦情や意見、要望といった問合せ履歴など、企業とのあらゆる接点でのデータに基づいて顧客をセグメント化し、顧客層別、顧客別のニーズ、ウォンツ、購買行動パターンを分析。個々の顧客に適したサービスや商品を効率よく提供し、満足度を高めることで、一人あたりの購買額を最大化、顧客維持率をあげ長期的な収益の向上を目指す。また、特定の顧客に信頼されているという状況が、新しい顧客には魅力的な企業として映るため、新規顧客をより効率的に獲得することにもつながる。
1990年代前半に米国で誕生し、アンダーセン・コンサルティング(現在のアクセンチュア)によって1998年に出版された『CRM―顧客はそこにいる』によって広く知られるようになった。同書ではCRMを情報システム(IT)を利用し、「顧客データの分析をもとに、顧客を識別し、コールセンターやインターネットなどの新しいチャネルを利用して顧客との関係を深める広義のマーケティング手法」と紹介している。
解説
「顧客中心主義」とITの進化によって急速に普及
1990年代、マーケットは消費者主導へと変化し、顧客ニーズが多様化する中で、従来のマスマーケティングは行き詰まりを見せ始めました。新規顧客獲得のためのコストは上昇し、「顧客のニーズがつかみにくくなってきた」「従来の性別・年齢などだけでは顧客のセグメント化が困難になってきた」といった状況の中、企業は「顧客中心」に考えることを求められ、既存顧客に対する対応を強化することの重要性が見直されはじめたのです。
こうした背景において、CRMは多様化する顧客ニーズを把握し、個別課題へのきめ細かい対応をすることで、良好な関係を長期的に維持・強化していくマーケティング施策として注目を集めました。
CRMの「顧客を『個』としてとらえ、十分に理解し、その顧客一人一人にあった製品・サービスを提供することにより継続したビジネスへとつなげていく」という考え方は、古くからある「お得意様」戦略と変わりありません。しかし、近年のコンピューターの高速、低価格化やインターネットをはじめとしたIT技術の進歩によって、高度な顧客情報の収集・管理・分析が可能になりました。
「ソリューション」ではなく「マネージメント」
従来のCRMは、1対1の関係性の中で顧客の利便性を向上させ、満足度、信頼度を高めることで顧客価値(Life Time Value)の最大化を目指そうとしていましたが、過去のCRMプロジェクトの実に55%が失敗に終わったとマーケターは感じているそうです。
顧客の注文履歴データベースに対してRFM分析を行い、優良顧客を抽出しディスカウントセールなどのDMを送る、あるいは一定期間利用のない顧客を抽出しクーポンつきのDMを送る、といった使い方だけでは、顧客満足が向上するどころか、消費者の立場からは嫌厭され、逆効果となる可能性があったからです。CRMは「囲い込み」や「顧客ロイヤリティ」をめざす活動であってはならないのです。
「顧客の視点に立って満足度を高め、長期的な関係性の中で成功をおさめる」という、CRMの本質を理解し活用するためには、顧客の心理面への造詣が必要であり、深い知識・ノウハウ・経験が必要です。「システムを導入すれば顧客との関係性が構築・維持出来る」ものではなく、1つのツールとしてとらえ、それを使ってどのようにマーケティングを展開するのかが最も重要なのです。
新規顧客が優良顧客になるまでのシナリオを描き、その育成パターンの類型化を行ない、状況に応じてきめ細やかなマーケティング策を実践するというストーリーを具体的なアクションに落とし込むためには、売上額だけではなくて収益やプロダクト別の利益貢献度・市場別・業種別などあらゆる側面から顧客との関係をとらえ、自社の特徴にあわせたCRMを考えていく必要があります。
ソーシャル化する次世代CRM
ソーシャルメディアと「ビッグデータ」によって、CRMは今、大きく変わってきています。
ソーシャルメディア上のデータには、ユーザー自身の趣味嗜好だけでなく、気分や感情、友人関係など、顧客理解を深化させることが出来る多くの情報が含まれています。そのためソーシャルメディアでの活動履歴を、自社の顧客データベースに取り込むことで、より詳細な顧客分析が可能になり、適切な情報提供によって顧客との関係をさらに最適化することができるようになりました。さらに今後は、顧客が持つコミュニティーやネットワーク等のソーシャルグラフをCRMに統合していく動きが活発になっていくと考えられます。
また、従来のCRMでは、企業と顧客との関係を「1対1」の関係性で捉えていましたが、ソーシャルCRMでは、ソーシャルメディアを接点として「N対N」という新しい関係性が構築されます。企業と顧客、顧客とその他のユーザー、それぞれがゆるいつながりをもつソーシャルネットワークという世界で展開されていく「N対N」のコミュニケーションによって、その企業の顧客対応能力や顧客に対する姿勢などが、不特定多数のユーザーの目に触れることになり、新しい顧客を創造するきっかけとなりうるのです。
このようにソーシャル化した次世代CRMは、もはやエンゲージメントまでも含んだ総合的な顧客関係の管理体制と考えるべきであり、企業は信頼性と透明性を高め、複雑で発展性のある関係を高度にマネージメントすることが求められています。
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イラスト:速瀬 みさき
1993年よりホラー誌デビュー。漫画家として活動しながらエッセイ、イラスト、
デザインなども手掛ける。近著コミックスは、メイド喫茶にバイトで潜入取材漫画。
広告代理店勤務の夫を持ちながらも、マーケティングなにそれ?状態で執筆中!
公式サイト : http://www.nanacom.com/
Facebookページ : http://www.facebook.com/hayase.mi
用語解説:ソーシャルメディアマーケティングラボ
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■元記事
http://smmlab.aainc.co.jp/?p=12677
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