ユーザー視点でのSEOとはどういう取り組みなのか。ハウツーサイトnanapi(ナナピ)でSEOを担当する松本さんに、Ginzamarketsの清水がインタビューを行いました。
SEOは特別な業務ではなく当たり前のこと
清水:まず最初に、松本さんの業務の役割とこれまでのSEOのご経験を教えてください。
松本:役割は、SEO担当としてオーガニック(自然検索)流入を増やすことです。SEO専任ではなく他の業務も兼務しています。nanapiに入社したのが3年前、SEO担当となったのは半年前からです。前職においてSEOを担当していたわけではないのでSEO担当としてのキャリアは短いですが、nanapiに入社してからSEOが大切であるということは、自然と学びました。
清水:おっしゃるように松本さんが寄稿された『nanapiのSEOはチーム戦!検索流入数を前年比166%にした施策』を拝見した限りだとSEO担当のキャリアとしては短い印象があります。nanapiに入社してからSEOの重要性を自然と学んだのはどういったきっかけからだったのでしょうか。
松本:nanapiでは何をやるか迷ったら常にサービスの原点に立ち戻り、施策実行へ落とし込んでいるからだと思います。具体的には、nanapiのサービスは「やり方がわからなくて困っている人へ、解決方法を提供すること」が原点です。
nanapiへの流入経路の半分以上はオーガニック(自然検索)流入です。よってユーザーに対し情報を適切に届けるにあたり、SEOを重要視することはSEO担当者でなくても当たり前のことでした。
ハウツーをノウハウ化していく文化がある
清水:SEOを学ぶためのドキュメントやミーティングがあるのでしょうか?
松本:ハウツーサービスを展開するnanapiでは、社内においてもハウツーを残していく文化があります。SEOに関しても、100項目を超えるガイドラインがありますし、検索エンジンのアルゴリズム変更等、アップデートしたい情報についてもSEO担当がドキュメント化して定期的にミーティングで共有しています。
清水:SEO情報のアップデートと一口に言っても、どの範囲まで共有するか難しい面があると思います。どのような基準で情報を選定しているのでしょうか?
松本:SEOのアルゴリズムはブラックボックスで、情報収集していて正直、よくわからないこともあります。そんな時は、その情報が「ユーザーにとって必要な情報なのか」を基準に、SEO担当で留める情報か、共有する内容かを判断しています。
清水:2012年のCSS Nite LP24においてSEOコンサルタントの辻さんがnanapiでのSEO事例を紹介していましたが、辻さん主導で施策が決定されているのでしょうか?
松本:辻さんにはSEOの方向性についてアドバイスを頂いています。内容については、当社社長古川の『ユーザーのためが最強のSEO!nanapiのSEOで何をしているか』で紹介しています。
例えば、施策その1の「構造化」について言えば、辻さんに「構造化」という方向性を示して頂いて社内で16000テーマに設定しました。他の例では「たった7つの施策でnanapiのPV単価が144%になった話」で紹介した内容も、社内の広告担当ディレクターとエンジニアが自発的に提案し進めました。
辻さんからは大枠の方針に関してアドバイスを頂きつつ、自分たちが必要だと思うことを主体的に取り組み、不明点があれば辻さんへ確認するというスタンスです。
組織体制のあり方/時間軸で異なるキーワードの調査方法
清水:nanapiでは「開発/編集・コンテンツ制作/マーケティングでチームを構成している」と松本さんの記事にありました(参考)。以前からこのチーム体制だったのでしょうか?
松本:以前は、開発と編集・コンテンツ制作、マーケティングでそれぞれ別の部署になっていました。サービスの成長と共に、nanapi.jpチームでは開発/編集・コンテンツ制作/マーケティングが1つのチームとして動くように変わりました。役割が部署で分断されていないため、よりスピーディに細かなPDCAを回していけるようになったと感じています。
清水:松本さんが記事に書かれていたキーワード調査についても教えてください。nanapiが扱うテーマは限りがなく、日本語全てがキーワード選定の範囲と言っても過言ではないと思いますが、どのように調査しているのでしょうか?
松本:まず、キーワードの扱い方は編集チームによって異なります。編集チームは「中長期での流入獲得を目的とするチーム」と「エッジの効いたコンテンツのチーム」の2つに分かれています。後者のエッジの効いたコンテンツのチームでは、ブレストを中心に設定しているので調査という形式はあまり取りません。
対して前者の中長期での流入獲得を目的とするチームでは、時間と手間をかけて調査します。nanapiのサービスでは調査するキーワード範囲が広いですが、調査を行う軸としては「季節ニーズ」「トレンド」「メディアとして強化していきたい領域」「競合コンテンツの有無」で捉えています。例えば、『「Guider(ガイダー)」であのタレントが着ていたアイテムを探す方法』のように、新しいWebサービスのコンテンツは意識的に増やしています。
清水:キーワード調査の軸の1つである「競合コンテンツ」とは、競合サービスのことでしょうか?
松本:nanapiが考える「競合コンテンツ」とは、競合サービスといった事業上の競合ではなく、検索上での競合コンテンツです。内容によっては、既に競合コンテンツが多くある場合や、まだない場合もあります。顕在化しているニーズなのか、潜在ニーズなのかも調査の一環として確認しています。
ライターは育てていくもの
清水:nanapiのライターは数多くいると思いますが、どのように目線合わせをしているのでしょうか?
松本:編集チームは、社員とライターで構成しています。ライターは社内にもいますし、nanapiワークスや、クラウドソーシングサービスも利用しています。得意分野やライティングスキルも様々なので、nanapiではライターを育てていくためのステップを用意しています。
まずはじめに、ライティングの心構えのオペレーションマニュアルを読んでもらいます。その後は記事を書いてもらう毎に、ライティングスキルに応じて社員からフィードバックを続けることで、目線合わせをしています。中長期で流入を獲得するコンテンツの場合は、一定の枠を設けてその中でライティングをしてもらいますが、エッジの効いたコンテンツでは、ガチガチに枠を作ってしまうと面白くなくなってしまうので、ある程度自由に書いてもらうようにしています。
清水:SEOライティングの基礎知識や、情報のアップデートについて、どのようにライターへ伝えていますか?
松本:SEOライティングの基礎知識については、オペレーションマニュアルに盛り込んでいます。情報のアップデートについては、SEO担当からライターへ直接伝えるよりは、日頃からコミュニケーションを取っていて信頼関係のある編集担当から伝えることが多いです。
機械的にアップデート情報を渡していくのではなく、相手のレベル感に応じて、必要なときに必要なことを伝えるように心がけています。もちろんライターからSEOについての質問を受けることもあり、SEOを意識して取り組んでいるのがわかります。
SEOは手段であって、目的ではない
清水:松本さんの記事に書かれている『拡散に強いコンテンツ作りで良リンク獲得』の中で、カード型コンテンツが紹介されていました。SEO視点では、イメージよりもテキストを優先的に使う傾向があると思いますが、その点はいかがでしょうか。
松本:nanapiでは、コンテンツを作るだけでなく、どうやって届けるかの部分も工夫しています。例えば、『プリンで作るフレンチトースト』のカード型コンテンツは、既にテキストコンテンツが記事としてあったのですが、既にテキストコンテンツが記事としてあったのですが、スマートフォン時代のコンテンツの見せ方とはどういうものか? を考えた時に、PCとは違って、瞬間的に理解できるものがいいのではないかというところから生まれました。
その上で、被リンクが集まりづらい、バズりにくい記事でも、TwitterのRTなどが広がりやすいコンテンツの見せ方を作れるとSEO的にもいいのではないか? というように拡散手法として用いたという経緯です。
これもSEOから考えるのではなくコンテンツと届け方から考えた結果だと言えそうです。SEOは大事な集客経路の1つですがあくまで手段の1つです。もし仮にSEOを目的としていたならば、テキストではないイメージは使わない、という判断になったことでしょう。
ただ、nanapiの原点は「ユーザーに課題解決をしてもらうために、どうコンテンツを作り、届けるか」です。ユーザーの悩みを解決するために必要かどうかを、判断基準としています。
KPIは柔軟に設定
清水:nanapiでは10万以上のコンテンツがありますが、過去のコンテンツを掘り起こす取り組みはしていますか?
松本:過去コンテンツを新たな形でパッケージ化することはあります。複数の同じようなコンテンツをまとめてボリューム化し、新しい切り口を加えて再構成したり、そのままのコンテンツで価値があればタイトル等の表現方法を変えることもあります。
清水:では、nanapiのKPIについて教えて下さい。
松本:中長期の流入獲得を目的としたコンテンツでは、キーワード順位と流入数、エッジの効いたコンテンツではソーシャルでの拡散を指標とすることがあります。ただ、必ずこのKPIを追いかけるということではなく、目的に応じてチームでKPIを設定しています。
例えば、一般的に直帰率は低い方がいいと言われますが、nanapiの場合、課題解決を目的としたコンテンツのため、直帰率が高ければすぐに問題解決が出来たというポジティブな指標にもなり得ます。ただ、カテゴリーページの直帰率は低い方がいいということになりますので、目的を明確にするように意識しています。
清水:KPIを柔軟に設定するということですが、上司へ報告するKPIはどうでしょうか?
松本:SEO担当という視点ですと、現在検索流入数以外に定期的に上司に報告するKPIはありません。ルール化はされていませんが、自分が必要だと思えば、それぞれ随時、報告・連絡・相談をします。KPIはあくまでチーム内での活動指針であって、自分たちで設定しています。
清水:定型化したKPIはないということですが、コンテンツのパフォーマンスはSEO担当者が確認しているのでしょうか?
松本:パフォーマンスの確認は、SEO担当者だけではなく、編集担当者・ライターも含めそれぞれが確認しています。ユーザーのWebでの動きは数値化されます。作ったコンテンツが人に届いているか確認することは、サービスへの思いがあれば当たり前のことで、それがグロースハックにつながります。
nanapiでは現在Webディレクターを募集していますが、Webを通じた先にいるユーザーと関係性を築いていける人にジョインして欲しいと思っています。
清水:いまのタイミングはまさにサイトの成長を実感できるタイミングだと思いますので、腕に覚えのある方はぜひチャレンジしてほしいですね(募集サイト)。本日はありがとうございました。
■株式会社nanapi
たくさんの「やり方」が集まる百科事典、ハウツーサイトnanapiを提供する。nanapiの他、あなたの今にみんなが即レス!「answer」、日頃のもやもやQA「モヤモヤnanapi」を運営する。
マーケティングの精鋭を募集中とのこと。募集ページ:http://nanapi.co.jp/job/15
■Ginzamarkets株式会社
コンテンツマーケティング&SEO分析ツールのGinzametricsを提供する、サンフランシスコを本拠とするツールベンダー。日本でも多数の大手コマース/大手企業がGinzametricsを導入している。
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">by 清水 昌浩