エンタープライズ・クラウド・コンピューティング企業として、世界の「ソーシャル」をリードするセールスフォース・ドットコム社のイベント「Cloudforce Japan」のレポート第二弾は、株式会社ループス・コミュニケーションズ斉藤 徹氏と株式会社ソーシャルメディア研究所の熊坂仁美氏によるスペシャルトークセッションをご紹介します。
こんにちは、SMMLabの藤田です。
「2013年のソーシャルメディアはどうなるのか?」をメインテーマに、ソーシャルメディア研究の第一人者であるお二人が、来年のソーシャルメディア動向を大胆に予測した注目セッションをレポートします。
※前回記事はこちら
・【Cloudforce Japan レポート(1)】
トヨタ自動車社長 豊田 章男氏・前米国務長官 コリン・パウエル氏・
セールスフォースCEO マーク・ベニオフ氏が語る
「イノベーションとグローバルリーダー」とは?
http://smmlab.aainc.co.jp/?p=16172
今回の「Cloudforce Japan」最後のセッションでしたが、ソーシャルメディアコンサルタントとして著名なお二人の対談ということで多くの参加者が集まりました。オープンなスペースでのカジュアルなトークでしたが、FacebookとLINE、PinterestなどのSNSをはじめ、ソーシャルメディアが来年どうなっていくのか、企業はこんな点に注目したらいいのか、大変興味深い対談でした。
株式会社ループス・コミュニケーションズ代表取締役社長 斉藤徹氏(写真左)
株式会社ソーシャルメディア研究所代表取締役 熊坂仁美氏(写真右)
2013年末のFacebookアクティブユーザーはMAX3,000万人弱を予想
最初の話題は、今年大きくユーザーを増やし、日本のソーシャルメディアでも主流となったFacebookついて。まずはFacebookユーザーはまだ増えるのかという質問に対して、自社サイトで定期的にインターネット利用動向調査を分析している斉藤氏は、今年の年末に1,800万人程度のアクティブユーザーが、来年末で2,500万人ぐらい、もしかすると3,000万人程度まで行くのではと予想しました。
「Facebook疲れという言葉も出てきているが、数字で見ると日本では昨年夏から今夏までの1年間で、アクティブユーザー数が1.5倍、利用時間は2.3倍になっている。一人ひとりの利用時間が伸びているという状況からは、まだまだ日本では伸びると予想できる。ただ、アメリカではネットユーザーの70〜80%までFacebookが浸透したが、日本でそこまで浸透するかというとおそらくネットユーザー人口の50%ぐらいまででは? 日本のネット人口は約9,000万人と言われているので、4,500万人ぐらいまではジワジワ増えていく。」としながらも、日本ではもっとプライベートなネットワークであるLINEの存在が大きいため、それ以上の大衆化は難しいのではないかと語りました。
株式会社ループス・コミュニケーションズ 代表取締役社長 斉藤徹氏
Facebookの使われ方が変わってくる?
熊坂氏はFacebookがビジネスシーンで使われることが多くなったと指摘します。「仕事関係の人と色々なグループが出来て、Facebookが仕事場のようになった。Facebookにログインしている時にニュースフィードや友達のタイムラインを見ているのではなく、仕事をしていることが多い。メールが減り、Facebookメッセージやチャットのほうが話が早くなっている。そういう使い方をするユーザーが増えていくのではないか? ただ、Facebookメッセージは開封時間が分かってしまうので、早く返信しなくてはというプレッシャーにちょっと疲れているかも。返信するときに開封するという新しい習慣が出来た(笑)」と自身の体験から、Facebookがビジネスインフラとして浸透していくのではないかという予想を語りました。
■今年急伸したLINEはどうなる?
斉藤氏「Facebookはパブリックなソーシャルネットワークであることに対して、LINEは電話やメール、SMSの延長線上にあるもので、非常にプライベートなソーシャルネットワーク。使い方が全然違うわけだが、一般的なネットユーザーはあまりパブリックなソーシャルネットワークを必要としないのではないだろうか?その点でLINEはプライベートなネットワークとして重宝されるだろう。LINEは今年年末で登録ユーザー数4,000万人、アクティブ率が70%程度とかんがえられるのでアクティブユーザー数は約3,000万人。来年Facebook以上に普及する可能性があり、2013年末アクティブユーザー数4,000万人ぐらいまでいくのでは?
ただし、LINEは基本的にスマホの登録台数が上限になる。スマホの伸びは今年来年がピーク。1,000万台程度づつ増えて、その後はやや鈍化し、2017年ぐらいに約8,000万台と予想されている。そのためLINEの普及も2014年以降はやや鈍化傾向になるかもしれない。」
株式会社ソーシャルメディア研究所 代表取締役 熊坂仁美氏
動画コンテンツがプラットフォームの勝敗を分ける?
熊坂氏は「ソーシャルネットワームがどんどんプラットフォーム化することによって、そこにどんなコンテンツが提供されるかがポイントでは?その主役として動画、特にYouTubeが注目だろう」と予想しました。
「今年PSYの『江南スタイル』のPVが、半年足らずで再生回数10億回を記録し話題となったが、来年はさらに動画コンテンツがTVの代わりに消費されるようになり、YouTube発のスターやビジネスが注目されるようになるのでは?」という熊坂氏に対し、斉藤氏は「動画は視聴に時間が掛かる“重い”コンテンツ。見たいという欲求を刺激する“強い”コンテンツでなければダメだろう。」と答えました。
動画コンテンツとの視聴時間を取り合うことが予想されるTVですが、こちらはPCやスマホ、タブレットなど、いわゆるマルチスクリーン型の視聴が進み、一方的な情報発信メディアから、コミュニケーションを重視した形に変化していくのではないかということで二人の意見が一致しました。
ソーシャルメディアに新しいトレンドはあるか?
Pinterestへの期待と不安
「視覚的な魅力で女性の人気が高いPinterestは、コマースサイトとの親和性も高く、来年以降も普及が期待されるSNSの一つ」(熊坂氏)としながらも、徐々に表面化しつつある「著作権問題が気になる」(斉藤氏)と、不安要素があることを紹介しました。
社内SNSが企業自体のソーシャル化を推進する
2人は新しいトレンドとして、企業内でのSNS活用が進むと予想。「従来の人事評価システムでは見えづらかった縁の下の力持ち的な功績を、企業SNSでのポジティブフィードバックによって浮かび上がらせることが出来るようになる。オンラインでのポジティブフィードバックが、オフラインの業務環境を向上したり、精神衛生バランスを改善するという取り組みは、企業を内側からソーシャル化させていくのでは?」(斉藤氏)
ソーシャルゲーム市場は国内から海外へ
ここで、斉藤氏が主宰するループス・コミュニケーションズのコンサルタントで、ソーシャルゲーム領域に詳しい岡村健右氏が登場。今年のソーシャルゲーム市場の概況を紹介した上で、「進撃のバハムート」が全米1位を獲得したことから、日本初のソーシャルゲームが海外で通用するかというテーマに言及しました。
株式会社ループス・コミュニケーションズ コンサルタント 岡村健右氏
「『進撃のバハムート』のヒットは広告によるところが大きいという見方もあり、他社では海外向けに日本とは違うコンテンツを作るところも多い。日本でヒットしたコンテンツがそのまま海外でも通用するかはまだわからない」としながらも、日本のソーシャルゲーム市場はピーク期を迎えており、今後は海外進出が各社の課題になることは明らかだと語りました。
シリコンバレーで今注目されているGoogle+とTwitter
続いて斉藤氏の旧友であり、今回のCloudforceでスピーカーを務めたシリコンバレー在住のコンサルタント渡辺泰宏氏から、シリコンバレーの現状が紹介されました。
LAJET Business Consulting チーフエグゼクティブ 渡辺泰宏氏
「ソーシャルメディアに関して、アメリカでは今2つの大きな動きがある。ひとつはソーシャルメディアが個人のネットワーク形成からビジネスでの活用へと広がってきていること。そしてもうひとつは、先ほど熊坂さんの話にも出てきたモバイルデバイスと動画。この2つの組み合わせで優れているものは何かというと、実はGoogle+だ。アメリカでは12,3歳ぐらいから携帯電話を持つことが多いが、その世代ではAndroid OSのスマホが人気が高い。Android Phoneを選ぶとデフォルトでGoogleアカウントを取得することになり、そこからGoogle+を使い、ハングアウト、Gtalkを楽しむ低年齢層が増えている。そしてもうひとつ、Twitterが発信メディアとして無視できないマーケティングツールになっている。」という渡辺氏に対して斉藤氏は、「日本の場合はTwitterが先に入ってきたので、後になったFacebookの方が新しいものと捉えられ、アーリーアダプターがTwitterからFacebookに移ったが、アメリカでは正反対で、FacebookからTwitterへという流れがあった。加えてTwitterはシリコンバレーを中心に、実名で使われていることもあって、マーケティングに使いやすいツールになっていることは確か。しかし、シリコンバレーのような最先端を好むイノベーターの集団エリアでは常に新しいものが好まれるが、ごく一般的なネットユーザーにとっては友人関係がある場所が一番大事なので、Facebookのソーシャルグラフの強力さは、そう簡単に揺るぐものではない。Google+にしてもこれからのお手並み拝見といったところだろう」と日本とアメリカの環境の違いと今後の展望について補足しました。
熊坂氏が「いずれにしろ、鍵となるのは高校生や中学生などの若い世代ではないか?彼らに支持されるのがFacebookなのか、LINEなのか、はたまたGoogle+なのか。」と次世代に目を向けると、斉藤氏は「高校生はLINEで十分だと思っているのでは? そういう意味で日本ではアメリカのようにFacebookが普及しないかもしれない。しかしLINEのソーシャルグラフは電話帳がベースなのでリプレイスされやすい。すでに強力なライバルとして登場したcommは、LINEとFacebookの良いとこ取りの戦略で来ているので、台風の目になるかもしれない。」と、来年注目すべきソーシャルメディアとしてcommの名前をあげました。
ソーシャルメディアの動向に敏感なお二人の対談からは、ソーシャルメディアが一時的なブームではなく、コミュニケーションのインフラとして確実に浸透してきているという実感が感じられました。もはやソーシャルメディアが流行に敏感な人たちだけの、特別なものではなくなってきたからこそ、企業のマーケティング活動にとって、今後どのメディアに一番ユーザーが集まるのかが重要なポイントです。自社が付き合うべきユーザーはどこにいるのかという視点で、来年のソーシャルメディア動向に注目してみてください。
■参考記事
・【Cloudforce Japan レポート(1)】
トヨタ自動車社長 豊田 章男氏・前米国務長官 コリン・パウエル氏・
セールスフォースCEO マーク・ベニオフ氏が語る
「イノベーションとグローバルリーダー」とは?
http://smmlab.aainc.co.jp/?p=16172
・斉藤氏登壇:SMMLabセミナーレポート
『ソーシャル時代が加速する2012年のマーケティング戦略とは?
~透明性の時代が企業に求める新しいコミュニケーションの形~』
http://smmlab.aainc.co.jp/?p=2989
・LINEがプラットフォーム化!スマホユーザーのポータルを目指す
http://smmlab.aainc.co.jp/?p=9879
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