ユーザーエクスペリエンス (UX) 設計においては、ユーザーの心理を理解し、望んだ行動パターンを喚起させる事が重要なポイントとなってくる。例えば、ボタンをクリックさせたり、フォームを送信させせる等のユーザーに運営側が望んだ動きを導き、サイトに戻ってくるようなエクスペリエンスを与えるのが、いわゆるエンゲージメント設計の最終目標である。
その為にはユーザーに対して:
- 説得材料の提示
- 感情に訴える要素
- 信頼性を与える
の要素を含んだサイト設計が重要になってくる。この3要素を含む事で、ユーザーに対して精神的ハードルを出来るだけ取り払い、高いエンゲージメントを達成する事が出来る。そして上記の3要素を構成する7つの心理学的構成要素があるのでご紹介したい。
1. ユーザーに沢山の選択肢を与え過ぎると何も選ばなくなる
選択肢は多ければ多い程良いというわけではない。以前にとあるスーパーにて2つの試食テーブルを利用した実験が行われた。左側のテーブルAには6種類ジャムのビンを置き、右側のテーブルBには24種類のジャムを置いた。そうしたところ、40%の客がテーブルAのジャムを試食し、残りの60%はテーブルBのジャムを試食した。より多くの客が沢山の種類があるテーブルBに興味を持ったのだ。しかしながら、驚くべき事に6種類しか置いていなかったテーブルAに来た客の実に30%が商品を購入。4倍の種類のあるテーブルBの客の中で実際に購入したのはわずか3%。結果として選択肢が1/4しかないテーブルAの方が売り上げが6.5倍以上も高い結果となった。
選択肢が多過ぎるとユーザーは迷ってしまい、こちらが望む行動を起こさないという好例といえる。おそらく一般的には選択肢を多く提示した方がユーザーが喜ぶと思われがちであるが、エンゲージメントを高めたいのであれば大きな間違いである。彼らは選択肢が多過ぎると精神的プレッシャーを感じ、行動を起こさなくなってしまう。”選ぶ” という行動自体がハードルになってしまうのが理由。従って、商品やコンテンツが沢山ある場合は、なるべく小出しにして、ユーザーに無駄なプレッシャーを与えない事。
2. 集団心理を活用し安心感を与える
人間は今までに誰もやった事の無い行動を起こすのには勇気がいる。サイト上のアクションも同じ。もしユーザーが購入したい商品をこれまでに誰も購入していない場合、恐らくそのユーザーも行動を起こさないだろう。逆に他にも多くのユーザーが同じ行動を起こした事を知れば、あまり躊躇無く同じアクションを取りやすくなる。集団心理を活用するわけである。
これは英語ではソーシャルバリデーション (Social Validation) と呼ばれる手法で、例えば他のユーザーからのレビューやクチコミコンテンツがその代表コンテンツであり、そのコンテンツ内容は詳しければ詳しい程良い。そしてもちろん見知らぬユーザーよりも、自分の友人やいわゆる専門家やエキスパート等のカリスマからの情報の方が効果が高い。実はこれは集団行動が得意で有名人からの影響を受けやすい日本人ユーザーが最も影響されやすい導線である。
3. “限定” ものは行動を喚起させやすい
商品の数に限りがあったり、期間限定コンテンツ等、今しか手に入らないものは価値が高いと思ってしまうユーザー心理。例えば格安航空券のサイトに”あと4日限り!”と書いてあったり、”残り3商品!”と書かれていると、今すぐ買わないとお得な商品が取られてしまうとの心理が働き、ユーザーは急いで買ってしまいがちになる。また、最近だと “このページは現在他にも3人のユーザーが見ています” など、ユーザーを”焦らせる” コンテンツが表示されるEC系サイトも増えてきている。
このようなコンテンツに対して人間の脳は “今すぐ行動を起こさないと失ってしまう” というシグナルが無意識に発せられ、失う恐怖から行動を起こさせるのだ。これらはユーザー心理を巧みに操った導線設計となる。
4. ユーザーは食べ物、エロ、危険な香りのするコンテンツに弱い
悲しいかな、人間には野生の本能が無意識レベルで残っており、生存、子孫繁栄、安全を最優先する様にプログラムされている。Webサイトのコンテンツに対しても同じ事が言える。食べ物の写真が掲載されているサイトはユーザーの注目を集めやすいし、エロ系は言わずもがな。そして何か危険な香りのするコンテンツ内容にもユーザーは弱い。これらの導線はあくまで参考にして、悪用しない様にしたい。
5. 無意識のうちに人間の顔に目がいってしまう
人間の目は無機的なものよりも、より有機的なものに引き寄せられる。そのなかでも最も注目を引くのが人間の顔である。これは脳の中に、紡錘状回と呼ばれる人間の顔だけを認識する為に存在する器官が備わっているのが理由。人間の脳は人の顔を特別回路でいち早くプロセスする様に設計されているのだ。従って、素材写真等のコンテンツを利用する際には、人の顔が映っているものの方がより効果が高いと言える。そしてその場合被写体はは視線はなるべくカメラを向いている方が良い効果が高いとされる。
facebookがこれだけヒットしているのも理解出来る。まさに顔を表示する事に特化したサービスであるからだ。
6. 難しい論文よりも物語仕立ての方が理解しやすい
優れたストーリーテラーは同時にユーザーをエンゲージさせるのが上手い。最も良い例はスティーブ・ジョブスだろう。人間の脳が情報を処理する際には、物語になっている場合が一番処理しやす事が実証されている。従ってサイト上に文字コンテンツを掲載する際にはなるべく難しい表現を避け、なるべく分かりやすく読んでいて面白い物語チックに仕立てるのが良い。
恐らく人気のあるブログのコンテンツで難しい内容のものはないはずだ。
7. 簡単なアクションを少しずつ起こさせる
例えば好きになった相手に速攻プロポーズする場合は少ない (イタリア人以外は) 。恐らくまずはお友達から始め、食事や映画などのデートを通じ、愛を育んでから最も大きな決断を迫る。Webサイトにおけるユーザーエンゲージメントにおいても同じで、ユーザーにとってはごく簡単であまり考えなくても良いアクションを少しずつしてもらい、最終的に最も求める行動を起こさせる方法。小さな行動を起こして行くうちに少しずつ “その気” にさせる=エンゲージさせる方法である。
例えば “まずは資料請求から”, や “メールアドレスを入れるだけでOK”, “無料サンプルダウンロード” 等がある。
上記のポイントを踏まえたエンゲージメント設計を行い、より高いコンバージョンの達成を目指したい。
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