ソーシャルテレビ元年を振り返る
この1年は、まさに「ソーシャルテレビ元年」というべき1年でした。
私たち nifty が提供しているソーシャルテレビサービス「実況テレビ番組表みるぞう」は、ソーシャルテレビブーム前夜の2011年10月に提供を開始しました。この1年はみるぞうにとってもまた、ソーシャルテレビの盛り上がりと共に歩んだ1年でした。
みるぞうのサーバーには、この1年間収集したテレビ実況ツイートのデータが蓄積されています。このデータの分析をベースに、ソーシャルテレビの1年を振り返ってみたいと思います。
今回は、「テレビ実況ツイート量の推移」と「盛り上がった番組ランキング」の2つの切り口で振り返ります。
集計/分析手法
- ツイート収集基準:「放送局のハッシュタグ」もしくは「番組のハッシュタグ(※)」がついたツイートを収集
※「実況テレビ番組表 みるぞう」のサービスにて、独自の基準により選別したものを適用- 集計期間:2011年12月4日(月)~2012年11月17日(土)
- 対象テレビ局:NHK総合、NHK Eテレ、日本テレビ、テレビ朝日、TBSテレビ、テレビ東京、フジテレビ、tvk、TOKYO MX
テレビ実況ツイート量は昨年比176%にアップ!
まず最初に、テレビ実況ツイートの量が、この1年でどう変化したかを見ていきたいと思います。
上のインフォグラフィックをご覧ください。中央にあるグラフは、みるぞうが日々収集しているテレビ実況ツイートを集計したもので、一週間ごとのテレビ実況ツイート量の推移を表しています。これによると、昨年12月には88万ツイート/週の水準だったものが、今年11月時点で158万ツイートに増加(176%アップ)しています。
「劇的に増えた」といえる数字かどうかは微妙かもしれません。しかし、テレビ番組を視聴しながらツイートを楽しむ「ソーシャルビューイング」という視聴スタイルが、この1年で着実に増えていることを感じさせる数字です。
ちなみに、この1年間で最高のツイート量を記録したのは、7月初旬(163万ツイート/週)です。
この時期、特に日本中が注目するようなイベントがあったわけではありません。ロンドン五輪開催にはまだ早いですし、サッカー日本代表のW杯予選などが行われていたわけでもありません。
ではなぜこの時期にツイート量が増えたのか。
理由のすべてがわかっているわけではありませんが、日本テレビ「金曜ロードSHOW!」において、『千と千尋の神隠し』『となりのトトロ』『サマーウォーズ』が3週連続で放送されたのがこの時期とちょうど重なっていることは、注目すべきポイントかもしれません。
また、6月から7月にかけて、ソーシャルテレビアプリが続々と登場したことも影響しているかもしれません。(各社ともロンドン五輪にリリースタイミングを合わせた結果、この時期に集中したのでしょうか。)では、「初のソーシャル五輪」として注目されたロンドン五輪の時期はどうだったのでしょうか。
みるぞうが収集したツイートデータで見る限り、ロンドン五輪が開催された7月下旬から8月上旬の時期は、その前の時期に比べ、むしろツイート量が低下しているように見えます。
この点について、私たちは以下のように理由を推測しています。それは、アニメ/特撮番組に関する実況ツイート量の低下です。
私たちがこれまでテレビ実況ツイートデータを見てきた経験から、アニメ/特撮番組に関する実況ツイートの量は、他の一般番組に関するそれの水準をはるかに上回ることがわかっています。ロンドン五輪開催中、深夜アニメなどの枠が、ロンドン五輪関連番組に差し替えられるケースがありました。多くの実況ツイート数を稼ぎだしていたこれらのアニメ/特撮番組が休止されたことで、通常時よりもむしろ実況ツイート量が減ってしまったのでは、という推測が成り立ちます。
この1年で実況ツイートが最も盛り上がった番組は?
次に、実況ツイートが盛り上がった番組のランキングを見ていきたいと思います。
先ほどのインフォグラフィックにもランキングのさわりだけ記載していますが、あらためて詳細なランキングをご紹介します。
「総合」「一般部門(=アニメ/特撮以外)」「アニメ/特撮部門」と分け、それぞれについて以下、3つの切り口でランキング化しました。
・ツイート数ランキング
・ツイート参加者数ランキング
・ 瞬間最大ツイート速度ランキング
「総合」の各ランキングを見ると、アニメの比率が非常に高いことがわかります。
先ほども触れましたように、 アニメ/特撮番組に関する実況ツイートの量は、他の一般番組に関するそれの水準をはるかに上回ります。そのことが、このランキングに如実に表れています。ちなみに、アニメ/特撮番組に関する実況ツイートは、放送局ハッシュタグではなく、番組ハッシュタグをつけて投稿される割合が非常に高いため、放送局ハッシュタグのみで収集したツイートデータに基づく分析では、同様の結果は表れていないかもしれません。
ただこれだと、アニメに偏りすぎていて、それ以外の番組の傾向がよくわかりません。そこで、「一般部門」と「アニメ/特撮部門」に分けたというわけです。
さて、このランキングデータから主なポイントをピックアップしてみます。
[一般部門]
年末年始の特番が盛況
・第62回NHK紅白歌合戦(NHK総合)
・ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!大晦日年越しSP!! 笑ってはいけない空港24時!!(日本テレビ)
・トリビアの泉 祝10周年 あけましてムダ知識(フジテレビ)
・第88回東京箱根間往復大学駅伝競走 (日本テレビ)
など、年末年始の番組が数多くランクインしています。
放送時間が長いという理由ももちろんありますが、この点を差し引いても、年末年始の番組はテレビ実況に向いているということがいえそうです。
番組側がソーシャル視聴参加促進を行った番組が盛況
ツイート参加者数ランキングで上位にランクインしている『爆生レッドカーペット』では、番組指定のハッシュタグでツイートを募集するという取り組みが行われました。もともとツイートを誘発しやすい番組特性にこの取り組みがうまくマッチした結果、多くの視聴者に実況ツイート参加を促す効果が生まれたと考えられます。
また、瞬間最大ツイート速度ランキングで上位にランクインしている『踊る大捜査線 THE MOVIE3』と『平清盛』ではいずれも、プロデューサーや監督が番組放送中にTwitterで実況解説を行うという試みが行われました。
さらにその中で、特定のタイミングでいっせいにツイートするよう、視聴者への呼びかけが行われました。
この呼びかけに応じた視聴者が一斉にツイートしたことにより、上位にランクインする結果となりました。(ちなみに余談ですが、みるぞうは、この2番組の取り組みと連動し、視聴者の実況ツイート参加を促進する特設ページを提供しました。)
ロンドン五輪中継はランクインせず
初のソーシャル五輪として話題になったロンドン五輪ですが、ランキングにはひとつも入りませんでした。
もっとも、ロンドン五輪では、多くの視聴者がハッシュタグをつけずにツイートしていた、という可能性を考慮する必要はあります。
普段から実況ツイートをする習慣のある視聴者は、ハッシュタグをつけてツイートすることに慣れていますが、ロンドン五輪においては、普段はテレビ実況ツイートをしない視聴者が、競技の興奮を多数ツイートしたと考えられます。
今回の分析では、放送局ハッシュタグもしくは番組ハッシュタグのついたツイートのみを収集対象としているため、こうした実態をつかめていない可能性があります。
[アニメ/特撮部門]
『天空の城ラピュタ』があらゆる側面で他の番組を圧倒
「バルス祭り」でソーシャルテレビブームの火付け役 となった『天空の城ラピュタ』。その後1年間でソーシャルテレビ分野が拡大したとはいえ、いまだにこれを上回る番組は出てきていないようです。最終的にはコンテンツのパワーありきということでしょうか。
金曜ロードSHOW!のアニメが圧倒的に強い
『天空の城ラピュタ』に限らず、金曜ロードSHOW!で放送されるアニメ映画には、スタジオジブリ作品や『ヱヴァンゲリヲン』シリーズ、『ルパン三世』シリーズなど、国民的人気を誇る作品が数多くあります。これらの作品には、映画中に登場する名ゼリフをいっせいにツイートする視聴者行動を引き起こしやすいという共通した特徴があるといえます。
また、『天空の城ラピュタ』の「バルス祭り」は自然発生的なものでしたが、『サマーウォーズ』『ヱヴァンゲリヲン』放送時には、日本テレビ自ら「JoinTV」を使った視聴者参加企画を実施しました。こうした施策も功を奏したといえるかもしれません。
連続アニメでは『スマイルプリキュア!』が強い
各ランキングに複数話ランクインしている『スマイルプリキュア!』にも注目です。
この番組の放送時間は日曜日の朝8:30。テレビ朝日の日曜6:30〜9:00は、アニメ/特撮番組が続けて放送されており、テレビ実況の世界では、知る人ぞ知る「黄金の時間帯」となっています。それにしても、数あるアニメ/特撮番組の中でも、『スマイルプリキュア!』のツイート量は常に群を抜いています。
『スマイルプリキュア!』でツイートしている視聴者の多くは、大人の男性(いわゆる「大きいお友達」)であると推測されます。
この番組がなぜここまで支持されるのか、いまのところ答えを得るには至っていませんが、今後詳しく調べてみたいと思っています。
[全般]
「一般番組=広く浅く」vs「アニメ=狭く深く」
ツイート数ランキングでは上位8番組がアニメであるのに対し、ツイート参加者数ランキングでは一般番組が7番組と逆転しています。
このことから、以下の傾向を読み取ることができます。
・一般番組=実況参加者の裾野は広く、一人あたりのツイート量は少なめ
・アニメ/特撮=実況参加者の裾野は狭めだが、一人あたりのツイート量が多い
また、アニメ/特撮番組に関する実況ツイートは、放送局ハッシュタグではなく、番組ハッシュタグをつけて投稿される割合が非常に高いという特徴があります。テレビを見ながらツイートする(それを視聴者同士で共有する)というスタイルがより定着していることが伺えます。
このように、番組によって、視聴者の参加スタイルが異なっているとすると、全番組一律で数値を単純評価することには、若干無理があるのかもしれません。
番組の特性に即した分析を行い、そこからいかにして意味のある情報を取り出すかが、これからのテレビ実況ツイートデータ分析における課題ではないでしょうか。
次回は、「テレビ実況の世界では、どの時間帯にどの局が強いのか?」という視点で、局ごとの盛り上がりヒートマップなどを交えて分析します。
筆者:伊與田孝志(ニフティ株式会社)
ソーシャルテレビサービス「実況テレビ番組表みるぞう」プロデューサー/ディレクター。
みるぞう運営のかたわら、ソーシャルメディアマーケティング支援ツールの企画開発に従事。
今回の調査結果ならびに「みるぞう」に関するお問い合わせは
以下のお問い合わせフォームよりご連絡ください。
https://eq.nifty.com/webeq/pub/bpo_00/miruzow_support
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