こんにちは、SMM Labの藤田です。
10月30~31日に東京国際フォーラムで開催された日本最大級の国際的デジタルマーケティングカンファレンス、第4回「ad:tech Tokyo(アドテック東京)」。
1日目の午後は、「Eメール」、「O2O」、「ダイレクトマーケティング」というキーワードから、ソーシャルとリアルの融合によって変化するマーケティングの今を紐解く、Dトラックの3セッションをご紹介します。実際の事例も多く、実践でのヒントが詰まった内容となっていますので、ぜひご参考下さい。
[D-4]Eメールマーケティング: Eメールマーケティングは終わったか? 成功事例から見る、最先端Eメールマーケティングを語る
パネリスト
加藤 公一 レオ氏
株式会社 売れるネット広告社 代表取締役社長
塩見 直輔氏
株式会社リクルートライフスタイル ネットビジネス推進室 ゼネラルマネージャー
竹盛 晋也氏
味の素株式会社 健康ケア事業本部 ダイレクトマーケティング部
山崎 洋志氏
株式会社ワンスター 執行役員 制作部 部長
モデレーター
岡本 泰治氏
株式会社ディレクタス 代表取締役
「ブログやツイッター、FacebookをはじめとしたSNSなど、新しいコミュニケーションツールが登場するたびに前時代的な扱いをされるEメールですが、データベースに基づいてマンツーマンで、パーソナルなメッセージを直接届けられるマーケティングツールは、実は未だにEメールだけなのではないでしょうか? 今回のアドテックで一番実用的な使える内容の事例紹介とEメールマーケティングのこれからについてお話ししていただきたいと思います。」というモデレーター岡本氏の挨拶通り、Eメールマーケティングの奥深さを改めて再考させられるセッションでした。
最初に登場した株式会社 売れるネット広告社加藤氏は、まだ効果がわからないソーシャルメディアよりも、今強いメディアとしてEメールを徹底的に活用するべきと語りました。加藤氏のクライアントにおける現在の、Email、Facebook、Twitterの売り上げ構成比は100:5:1だと言い、売り上げの向上に最も重要なのは、いかにして本商品を買ってもらうか、リピートしてもらうか、他の商品を買ってもらうかというLTVを上げていく施策であり、こうしたCRM施策ではEメールが最強のツールであることを強調しました。そのために必要なのは、初回レスポンス、引き上げ、リピート、アップセル、クロスセル、それそれぞれのステージに合わせた専用のフォローメールとランディングページ、そして消費サイクルと初回購入時間を意識した配信タイミングだと言います。
「お客様を獲得したらそれぞれのステージで専用のフォローメールとランディングページを用意しましょう。消費サイクルを意識しましょう。初回購入時間に合わせてその後のメールを配信しましょう。ツークリックで申し込みを完了させましょう。ソーシャルメディアはあくまでも補完です。現時点では通販において王道の仕組みを作っていくことがとても大事です」と力強く語りました。
次に登場した竹盛氏は味の素で、通販限定健康食品のプロモーションを担当。自社のEメールマーケティングの効率を圧倒的に改善した、フォローメールの見直しポイントとして、「配信数の拡大」、「配信頻度の再設計」、「メールの開封率の改善」、「メールクリエイティブの見直し」の四点を挙げました。
この改善策の中で一貫しているのは、まずEメールを「お試し商品を購入した方たちにお伝えすべき連絡事項」の伝達という位置づけに徹底した事。そして差出人名を担当社員の個人名にし、どういう担当かということをはっきりさせた上で、お客様がメールを読む心理的なハードルを下げる工夫をしたところ、開封率が150パーセント改善。また、LTV向上を目的に定期購入を丁寧にご紹介し、最後は「お気付きの点をメッセージでお聞かせ下さい」と、お客様と会話し長くお付き合いしていきたいという姿勢を表現したところ、定期購入率が三割増、メールをお送りした方のうちの購入率はなんと4倍に改善したという数字が紹介されました。
「そんなに目新しい施策ではないですけれども、この程度のことをしただけでもかなり改善してきますので、もしまだやられていないという企業さまがいらっしゃいましたら、ぜひお試しいただければと思います。」と、一見見過ごしてしまいがちな細かな改善の大切さについて、実感を持って語りました。
単品系通販企業のウェブマーケティングを支援する株式会社ワンスターの山崎氏は、ステップメールを徹底的に作り込むことが商品点数の少ない企業にとって最も効果的にEメールマーケティングできる手法だと語りました。
「ステップメールの効果を最大化させるための工夫として、まず1つ目は顧客のストーリを作りましょうということです。基礎化粧品ならば、石鹸、化粧水、そして乳液なのかクリームなのか。きちんと商品の組み合わせを決めてストーリーを作り、それぞれに合わせてステップメールを送りましょう。例えば、開封率が85%から90%といわれている商品購入後のサンクスメールですが、各メールに細かい工夫をこなして積み重ねていくと、定期購入の引き上げが20%から25%向上します。そして、定期購入に至らなかったお客さまに対しては、もうちょっと買いやすい商品を案内すると、ここでもプラス5%位はコンバージョンが獲得出来ます。」ゼロから始めた顧客の事業規模を30億円まで引き上げたと実績を持つ山崎氏は、「とにかくこのステップメールを徹底的に磨き上げることがEメールマーケティングの成功の秘訣だ」と締め括りました。
最後に登場した株式会社リクルートライフスタイルの塩見氏は、「成熟したマーケット環境考えるとほんのちょっとの差が大きな違いになってくる」といい、自社が取り組んでいる「ちょっとの差を産む施策」を4つ紹介しました。
・じゃらんという宿泊予約サイトの予約内容確認メールの下部に、予約した宿の所在地にあわせて、ホットペッパーグルメの飲食店情報を掲載。ホットペッパーグルメの地図やクーポンのメールには、その夜すぐに泊まれるホテルの案内を載せる等、自社で運営されているサービスや、扱ってる商材でこうした組み合わせができれば、オリジナリティのある施策になります。
・現在「softbank.ne.jp」のメールアドレスには、携帯向けのテンプレートを送るかスマートフォン向けのテンプレートを送るかが、初回では判別出来ませんが、1度でもスマートフォンで見たユーザーに対しては乗換えと判断して、以降スマートフォンのテンプレートで送るようにしたところ、コンバージョンレートやCPCが爆発的に向上。そのうちみんな気付くと思いますが、半歩先を行くというのもちょっとした差を作るアイディア。
・ポンパレと言うフラッシュマーケティングのサービスでは、メルマガでどのクーポンをオススメするかを、経験と感のある編集者が決めていたんですが、ビックデータを使って分析のプロが解析したものの方が15%以上売り上げがアップしました。
・メールを送った後の振り返りの手法として、AとBというような送信パターンだけでなく、送らないクラスタも作り比較するようにしました。メールを送らなかった人達とBのメールを送った人達が同じコンバージョンがあった場合、Bは送らなくてもよかったメールということになります。メール配信はコストがかからないのでそれでも送ればいいと思うかもしれませんが、メールを送れば必ず一定数の離脱が起きるので、そのリスクを考えるとBは送らなかった方がよかったという結論にもなります。なるべくロストを出さないと言うのが、長期で見ると大きな差になるのではと思っています。
塩見氏は最後に、「この会社のメールは開封してもいいなという信頼性を伴ったメールアドレスというのは、我々マーケターにとって、最大のマーケティング資産ですので、大事にしていきたいと思います。」と語りました。
四人からの具体的な示唆に富んだプレゼンテーションを受けて、モデレーターの岡本氏は、「一つは“シナリオ”。結局一つ一つのメールというよりもシナリオを作るということなのかなと感じていて、おそらくビックデータとかデータの分析というのは、そのシナリオ作っていくために活用されるべきなんだろうと感じました。そしてもう一つは徹底した“PDCA”。それによって次の戦略を作っていくという部分が皆さんに共通していた。」と締め括りました。
[D-5]O2O: O2Oコマースとは?新しい消費者エンゲージメント手法
パネリスト
市橋 邦弘氏
式会社フェリシモ 事業本部 eビジネス部 部長代理
倉田 浩美氏
コーチジャパン シニアバイスプレジデント
小川 和也氏
グランドデザイン&カンパニー株式会社 代表取締役社長
津幡 靖久氏
ヤフー株式会社 マーケティングソリューションカンパニー 新規事業本部 本部長
モデレーター
石黒 不二代氏
ネットイヤーグループ株式会社 代表取締役社長兼CEO
モバイルによってオンラインとオフラインを自由に行き来する消費者が増えた事で、ソーシャルとリアルの境界線がシームレスになりつつある今、コマースの現場で注目されるO2Oを事例を元に考察したセッションでした。
まず最初はApp Storeで教育カテゴリの1位にも輝いた「Family Apps」の「おしごと体験」の事例を、グランドデザイン&カンパニー株式会社の小川氏が紹介しました。
3~6歳の未就学児を対象とした「Family Apps」の「おしごと体験」は、「仕事」を通じて親子がコミュニケーションしながら知育出来る「キッザニア」的アプリとして人気となりました。「仕事」への興味・関心に、アプリを提供する企業が寄り添うことが出来るため、自然な形で企業への愛着が醸成出来たと言います。ハウスウェルネスフーズでは、お父さんのためにおいしい料理を作るゲームを楽しんだ後、実際に親子で参加出来る料理教室を開催。また、三井ホームではアプリで体験した家作りを展示場で再体験出来るようにしたことによって、通常は高額な宣伝費、販促費を使っている展示場への集客に成功したそうです。「Family Apps」の成功について小川氏は、最初のきっかけは緩い関心だが、ゲーミフィケーションの要素を楽しむうちにジワジワと醸成されたエンゲージメントが、リアルな場所への動員に効果を発揮したと解説。
「O2Oはクーポンだけじゃない。そこにエンゲージメントやゲーミフィケーションの要素をいれることで長期的に関係を作っていく。一元的にユーザー情報をデータベース化していって長く顧客とエンゲージメントしていくことが重要。」と語りました。
続いて、O2Oをオンラインとオフラインの交わりで考え、現状の課題解決に役立てたアイディアを株式会社フェリシモ 市橋氏が紹介しました。
一つ目はモバイルサイトの離脱解消と、マス施策により繁閑の差が生じるコールセンターのリソース活用という課題に対して、モバイルの「通話」機能に目を付けたアイディア。モバイルサイトの離脱の多い場所に「電話する」ボタンを設置、専用電話回線へ引き込んでログと紐付け、オペーレーターによるシームレスな対応を行ったところ、商品購入コンバージョンが改善されたそうです。
二つ目はオフラインtoオンラインの事例。商品を手に取って、実際に見ないと買わないお客様がいらっしゃるため、定期的に百貨店で催事を行っていますが、そこで購入していただいたお客様に、いかにオンラインで購入してもらうかが課題でした。百貨店では個人情報が取得出来ないので、まず配送センターから既存のお客様に催事のお知らせを配送。まだ購入経験のないお友達と一緒に来てくれるようにクーポンを送り、事前にエントリーしていただくことで、二回目以降の連絡先を取得。百貨店にとっても新しい集客になるため、双方にメリットのある施策となったとのこと。
どちらもほとんど予算をかけず、アイディアと工夫で課題解決に成功しました。市橋氏は、クラウドを利用したため、初期の設備投資が要らなかった事でチャレンジする事が出来たと語りました。また、モデレーター石黒氏からの「オンラインとオフラインが共同で創出した成果をどう扱うのか?」という問いには、「最終コンバージョンが生まれたコールセンターの成果として評価している。そうすることでコールセンターでもエンゲージメントを意識してくれる。O2Oの取り組みはネットとリアルの共同作業。社内的な組織やスタッフの対応も設計すべき。」と答えました。
プラットフォーマーの立場からO2Oに取り組むヤフー株式会社の津幡氏は、「スマホベースでビジネスを進めていくにあたってはO2Oは避ける事の出来ない重要領域。オンラインだけでなくオフラインでも、データが取りやすい世の中になってきた。消費者の購買活動について、チェックインの情報、決済・ポイントのログを集約して、お店の側には有益なビジネスインテリジェンスとして、消費者にはより精度の高いリコメンドとして提供していきたいと考えている。」と語りました。
また、オンラインで発行したクーポンをリアル店舗で引き換え、来店交換率60%、ついで買い平均1,761円、60%が1,000円以上購入という、高い販促効果を実現した「ウルトラ集客」と、飲食店のオーダーエントリーシステムから空席情報を自動に収集し、リアルタイムに把握して近隣のスマホユーザーに配信する「飲食『満・空』情報」のサービスフローが紹介されました。
コーチジャパンの倉田氏は、「オンラインからオフラインにコミュニケーションして誘導するというのは、オフラインからオフラインに比べてハードルが高いので、このギャップをいかに埋めるかが課題」と語り、オンラインからオフラインだけでなく、オフラインからオンラインで相乗効果を狙うために、あらゆるメディアを駆使したキャンペーン事例を紹介しました。
また、コーチが有する購買顧客500万人、PCメール80万人、モバイルメール70万人のデータベースの活用法として、同じ消費者に3つのチャネル全てでアプローチすると、売り上げの生産性が10倍〜30倍高いという興味深いデータを公開しました。そして現在、来店したが購入しなかった方とのオンラインコミュニケーションを目的に、40店舗の店頭で、FeliCaによるメールアドレス登録を進めていると話しました。
「グローバルなヨーロッパブランド系はデータ重視ではない企業が多いが、コーチの成功の要因の一つとしてマジック&ロジックというのがある。マジックはブランドのストーリー、魅力ある商品をお客様に伝える事。それから素晴らしいカスタマーサービス。それと同時にロジックの部分もやっていかないとビジネスとしてのバランスが取れない。」と、ブランド力を陰で支えるデータの重要性を語りました。
モデレーターの石黒氏は「消費者との関係は、最初はちょっと知ってもらうだけでいい。少しずつ関係を深めていって、長くお付き合いしていただくのが大切だと考えると、断続的なことではだめで、今やっていることが次にやる事にどう繋がって行くかというシナリオを書いていく事が必要。また、オンラインとオフラインをシームレスに捉えて考えなくてはいけないO2Oは、お客様とのエンゲージメントだけでなく、社内のエンゲージメントもどう作っていくか?今までネットを敵のように感じていたリアルの現場に、オンラインが大好きだと思わせるような組織作りや、人事制度、評価制度も考えていかなくてはいけないだろう。」と締め括りました。
[D-6]Direct Marketing: ダイレクトマーケケティングとリテイラーの関係性 ~顧客と向き合うマーケティングの行方~
パネリスト
長谷川 秀樹氏
株式会社東急ハンズ 執行役員 ITコマース部長
小玉 毅氏
イオン株式会社 Eコマース事業最高経営責任者
坂本 孝治氏
ヤフー株式会社 執行役員 コンシューマ事業カンパニー長
清水 俊明氏
株式会社スタートトゥデイ マーケティング本部 本部長
モデレーター
浮田 俊彦氏
株式会社博報堂 ダイレクトマーケティングプラニング部長
まず、この夏、「イオンスクエア」でEビジネスの新しい第一歩を踏み出したイオン株式会社の小玉氏が、イオンの今後のEコマース事業の展開について語りました。
「リアルの世界では1位として、ひたすらショッピングモールを作る事に注力してきたが、ネットの世界では何もしてこなかった。最後発であるという危機意識と自戒がある故に思い切って、『イオンスクエア』はモノを売らないサイトに特化していく。 現在は、ご来店いただいている9億人のお客様と繋がるための情報サイトという位置づけだが、第2ステージ、第3ステージでは双方向のコミュニケーションサイトの機能も盛り込んでいきたいと思っている。また、お客様へ提供出来る経済的価値として、電子マネーWAONでリアルとネットのポイントを完全に一体化していこうとしている。」
「ダイレクトマーケティングをどう捉えてどう取り組んでいるのか?」という問いには、
「イオンは元々、三重県発祥の岡田屋という呉服屋。250年以上の歴史があるのは、日本で50社ぐらいしかない。お客様に満足していただくという事を250年の間ずっと考えてきて、フェイストゥーフェイスの顧客との会話を通じて顧客満足の知見を体得してきたが、その中でお客様の期待に応え続ける事で、イオンは成長してきた。だから、お客様の期待を高めていかないと、顧客満足度は上がっていかない。ダイレクトマーケティングの究極の目的は、お客様からのイオンへの期待を高める事が一番重要な最終目的なんじゃないかと思う。」といい、「大切なのは、顧客の利便性と安心・安全」として、お客様目線に立った、ネットとリアルのシームレスな統合を約束しました。
同じくリアル店舗での小売りが本業である株式会社東急ハンズの長谷川氏は、「ずっと顧客と向き合って商売をしてきた自分たちにとっては、まずは本業であるリアル店舗で顧客に必要とされている情報をネット上にきちんと公開する事が先決」と語りました。「お客様から店舗にかかってくる電話の7割は在庫の問合せ。何が売っているのか?在庫はあるのか?それを提供した上で、ネットとリアル、双方のメリットをどう活かしていくかを考えている。たとえば、ネットで注文したものをリアルで受け取る。リアルで気に入ったものをネットから購入出来るなど、最終的には全てがリアル店舗の売り上げに向かえるようにすべき。」
一方、ネット専業のファッションショッピングサイト「ZOZO TOWN」を運営する株式会社スタートトゥデイ 清水氏は、500万人近い会員がいながらも、リアルでお客様と触れ合う機会が少なかった「ZOZO TOWN」が、初めてリアルイベントとして開催した「ZOZOCOLLE」について語りました。「構想は随分前(3〜5年前)からあったが、ECでの販売が上手い人とリアルでの販売が上手い人とは適性が違う。単純に実店舗を真似たら陳腐になってしまうので、ECならではのやり方に悩んだ。結果的には、試着というリアルに求められるニーズに予約販売というネットならではの取り組みを持ち込んだことで成功した。」
「消費者が大量の情報を嫌悪し始めている今、どういうタイミングでアプローチすれば、広告ではなくて親切なサービスだなと思ってもらえるか?そういったタイミングを重視した時に我々の持っているビッグデータをどう活用するかがスゴく大事になってきていると感じている。
弊社では2010年からCRM(Customer Relationship Management)ならぬCFM(Customer Friendship Management)という取り組みに注力しているが、お客様の購買の行動を重要な変化と捉えて、変化の兆しが見つかった瞬間にタイミング良く話しかける。顧客を想像し突き詰めていくと、友だちに対して思っている感覚にすごく近づいていく。ネットの世界であっても一人一人のお客様を友だちのように、今日知り合った方も、ずっと知り合いの方もちゃんとアプローチするというのが大事だな、と思う。」と続ける清水氏に、モデレーターの浮田氏は、「CRMってビジョンと実践の部分に乖離があるように感じる。ビジョンの話だとロイヤリティーだとかエンゲージメントを如何に高めるか?というが、実践になると急にRFM分析に代表されるようにお客さんを塊として捉えて、どうアプローチしていくかというように急に効率論になってしまいがちだ。CFMという考え方は、このCRMの効率論に対するチャレンジなんじゃないかと感じた。」と語りかけました。
リアルとネットを繋ぐサービスの必要性を語ったのはヤフー株式会社の坂本氏。「小売りの流通市場は130兆円だが、ネットはまだ7%程度10兆円に行かない位。データを基点にリアルとネットを繋ぐ取り組みが必要だと感じている。しかし現状はネットだけ、リアルだけというポイントシステムばかり。事業者の都合で、消費者はリアルとネットを使い分けせざるを得ない状態にされているだけ。ポイントを統合する事で消費者の行動が変わってくるかもしれない。利便性が高まれば、消費者も自らデータを紐付け始めるのでは?リアルとネットの統合は、過去のデータを活用するだけでなく、未来のデータを作る取り組み」。
「現在のリコメンデーションは、小売店鋪のように時間軸も含めたきめ細やかな接客が出来ていない。リコメンドは心地いい感じとうっとうしさが紙一重。心地よさに変える仕組みを作り、お客様のライフスタイルにちゃんと合わせたマーケティングが出来ると、今は読んでもらえないEメールもお客様にも受け入れられるかもしれない。実は、メールを開くか開かないかというところに、ブランドとの絆とか信頼関係というものが一番現れるんじゃないかと思っていて、ブランド指標の一つとしてメールの開封率を重要なKPIとしてつねに見るというような視点が、データってものをベースに考えた時には重要になってくるんじゃないかと思います。」
最後にモデレーターの浮田氏は当セッションのサマリーとしてスライドを投影し、「ダイレクトマーケティングというと、効率論とか手法論が注目されがちだが、その本質は顧客理解のイノベーションでは?すべては顧客理解をいかにして高めるかという作業であって、企業に求められているものも変わってきている。これから、個に対して企業も個として向き合っていかないといけない時代、これはダイレクトマーケティングの世界に留まらず、全てのマーケティングに求められている。」とまとめました。
消費者はもはやO2Oという言葉を使うまでもなく、オンラインもオフラインも区別なくシームレスに活動しており、そのライフスタイルが今までとは大きく異なってきている以上、企業は改めて顧客理解に一から取り組む必要に迫られているのかもしれません。その時一番大切な事は何か? 顧客を個客と捉え、一人一人と向き合う姿勢なのではないかと、3つのセッションを聞きながら考えました。
観察と想像、理解と提案、緻密なデータ分析を元にしながらもクールな定量の世界に居座るのではなく、人間的な情感を大切に現場に出掛けていく。ネットとリアルの融合は、定量と定性の両面で行われなくてはならないとを改めて感じました。
■元記事 ・http://smmlab.aainc.co.jp/?p=14035
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