10月19日(金)、「ヤフーがカカオジャパンに資本参加 “カカオトーク” を共同展開」というニュースが発表された。
CNETによるとカカオジャパンは、KAKAO Corporationとヤフーを割当先とする第三者割当増資を実施。今回の資本参加により、カカオジャパンはKAKAO Corporationとヤフーの2社が50%ずつ出資する合弁会社となるとのことだ。
KAKAO TALK と、ライバルのなる LINE
KAKAO TALK は無料通話ができるサービスで、その面だけに注目すればSkypeや050Plus、Viperなどのアプリと競合する。以下に、MMD研究書が10月18日に公開した国内IP電話サービスの一覧があるので参考にしていただきたい。
だが、市場の注目は国内のメッセージングサービスとして急成長を遂げるLINEとのシェア争いだろう。
LINEの利用者は2012年10月2日発表ではグローバルで6500万人、国内利用者は約3000万人。2012年7月27日発表時点から3ヶ月足らずで国内利用者が700万人増と驚異的なペースで増えている。このペースはSNSサービスTwitterやFacebookと比べても明らかに早い(下図参照)。理由としては、TVCMを始めとする積極的なプロモーション活動もあるだろうが、電話帳データを基にネットワークを広げていくというアルゴリズムが、従来のSNSの「能動的な招待、もしくは検索活動」に比べて著しく敷居が低かったという点が根本にあるのだろう。
さて、それに対してカカオトークの国内ユーザー数は2012年にFrodo Park CEOが日経トレンディネットに語ったところによると230万人〜240万人。当然その時点からの増加はあるだろうが、国内ユーザー数ではLINEに遠く及ばない。
ただし、カカオトークはグローバルでは4600万人、アプリのインストール数だけだと9000万に上ると言われている。利用者の中心は韓国で、約8割が韓国ユーザーだという(同じく日経トレンディネット)。
カカオトークはシェアを覆すことができるのか
国内利用者の実数ではLINE3000万人に対して、カカオトークが300万人弱だろう。この時点で2500万人程度の差があるわけだが、シェアとしてはどうだろう。
日本の国内携帯電話契約件数は約1億件、D2Cが発表したインターネット調査の結果ではスマートフォンの利用者数が約36%(フィーチャーフォンとの併用含む)、comScoreが8月22日に発表した数値では23.5%となっている。これらの数字から
国内のスマートフォン契約台数は約3000万とすると、LINEの「3000万人」という数字がいかに圧倒的かわかるだろう。
LINEはPC、フィーチャーフォンでもサービスを展開しているが、その多くがスマートフォンであることは疑いない。また、インストール後のアクティブ率も80%弱と高い割合を誇っているようだ。
これらのことを考え合わせると、保守的に見積もってもLINEは国内スマートフォン市場の70%以上を獲得していると推測できる。これはマーケットシェア占有率の目安となるクープマンの目標値で言うところの「独占的市場シェア」にかなり近い。そして何より恐ろしいのは、先ほどのD2Cのスマホ普及率調査でみるスマホ普及スピードを超える速度でLINE利用者数が増えている点だ。
つまり、2012年度のスマホ利用率は携帯全体の25.5%。その後半年で36.4%と約11ポイントの伸びとなっている。利用者数は1000万人程度増えたのだろう。一方、LINE国内利用者数の伸びは先ほども述べた通り、2012年7月27日から3ヶ月足らずで700万人増。この数字からは新たなスマホユーザーのほとんど全てがLINEユーザーとなっているのではないかと思わせられる。
国内利用に限って言えば、覆すのは難しいのでは
ここまで、かなり駆け足で数字の整理と分析をしてきたが、新しいスマホユーザーがそのままLINE利用者になる傾向が今後も続くとすると、カカオトークがそのシェアを切り崩すのはかなり難しいと考えられる。特に、カカオトークのようなメッセージングサービスはネットワーク外部性が働くため、一度独占的なシェアを確保されるとユーザーはなかなか他のサービスにスイッチしづらい。
カカオトークも、女優・藤原紀香やアーティストのX JAPAN YOSHIKI、K-POPスターなどが「Plusカカとも」などで情報を発信するなどサービスの拡充を図っているが、LINEと似通ったターゲットを狙ったこれらの施策はいわゆるフォロワー戦略であり、そもそも逆転を狙ったものではなかったのかもしれない。
2012年6月、カカオジャパン CEOのFrodo Park氏は日経トレンディネットの取材に対して、今後の競争戦略について以下のように述べている。
ユーザーがカカオトークを使う理由をはっきり示していくべきだと思っている。まずはその土台作りをしてから、マスメディアなどで告知をしていく流れにしたい。日本では特にコンテンツ、情報提供に特化したサービスに力を入れていく。その一つのテーマが地域活性化だ。そのための情報コンテンツの流通プラットフォームとしてカカオトークを日本で展開したいと考えている。
Yahoo!との提携後も、この戦略のアウトラインが活きているならば、遠からずカカオトークも大規模なマスメディアを使ったPRを用意していることになる。そしてその前提となるのが「カカオトークを使う理由」、もっと言えば「LINEではなく、カカオトークでなければならない理由」の確立だ。
Yahoo!との提携で広くアプリを紹介する可能性は広がったと考えられるが、特徴的なポジションを打ち出せるかどうかはまた別の問題だ。韓国のアプリランキングでは上位を独占するカカオトークだが、今日本市場ではニッチやチャレンジャーの戦略が求められる。Yahoo!「爆速」スイッチが入る前に、日本における独自のポジションを見極めることができるのか。繊細な分析と大胆な投資が求められるだろう。
終わりに
ここまでお読みいただきありがとうございました。
それと2時間前、この記事を書くきっかけをくださったShojiさんに、心より感謝申し上げます。
by 許 直人
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