多くのビジネスが気づかない「勘違い」
多くのスタートアップがサービスアイディアやテクノロジーを中心にビジネス展開するケースが多い。他の企業が行っていないオリジナリティ溢れるサービスを提供しようとするのはとても良いが、実は大きな成功と無惨な失敗とを分けるのは、上記2つの要素ではない。
実のところ、その決定的要素とはデザインである。
それはなぜか?
単純に考えると、ユーザーにとってのサービスの価値は、その裏にあるテクノロジーやロジックではなく、使い易さや見た目の良さであるからである。
特に昨今のオープンソースやクラウド環境等の充実により、多くのスタートアップの勝敗を分けるのは、コアテクノロジーではなく、見せ方や使わせ方になってきている。言い換えると、Webサービスやモバイルアプリを通して得られる体験やフィーリングの質こそがその製品の価値を左右する。そして、最終的にはデザインこそが、ビジネスの結果に影響を与えるのである。また、単純な収益だけではなく、投資家からの資金調達の有無にもデザインの善し悪しが影響する。 人間は感情的な動物であり、一見ロジカルに見えても、多くの場合、最終決断を司るのは感情である。したがって、感情に訴えるデザインのビジネス価値はかなり大きい。
得にエンジェルを始めとした個人投資家は感覚一発で決めてしまう事も多いので、感情に訴えるのは重要だ。良質なデザインは非デザイナーにも”なんだかよくわからないけど、なんか良い”と感じさせる。
それでは本題に入ろう。スタートアップにおけるデザインの役割は大きく分けると下記の3つになる。
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ユーザーインターフェース(UI)& ユーザーエクスペリエンス(UX)
Webサービス、モバイルアプリ、ソフトウェアに関わらず、見た目の美しさや使いやすさは人気を得る最大の秘訣の一つである。
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マーケティング
プロダクトのマーケティング展開におけるビジュアル要素の役割は大きい。潜在ユーザーを上手い事コンバートするには、卓越したマーケティングコミニュケーションを行う必要がある。
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ブランディング
ユーザーが企業やプロダクトに対してどのような感覚を持つかを司るのがブランディングである。優れたブランディング戦略はユーザーにポジティブな印象を与える。
ビジネスにおいてデザインが持つ3つの役割
では、前項で挙げた3つのポイントについてそれぞれ説明しよう。
UI&UX (使い易さ)
多くのスタートアップが提供するサービス自体が、そのデザインクオリティから大きな影響を受ける。特に、無数のアプリケーションやサービスがリリースされるこの時代において、成否を分ける主要な鍵はまさに、使いやすさである。
TwitterやYouTube、Instagramのような、シンプルさを極める人気サービスを例にとってみても、その人気の秘密はその裏にある真似のしにくいテクノロジーではなく、その使い易さにある。彼らが凄いのは、サービスにおける最終目的一つだけに注力し、他のどの企業のものよりも使いやすくしたことである。逆に、使いやすさを犠牲にし、機能をどんどん追加することは致命的な結果に至る。
そのいい例が、Windows Vistaだ。実に使いづらく、劣悪なUIやUXは混乱を引き起こした。幸運な事に、その拷問のような使い心地を多くのユーザーが経験する前に短い製品生命を終えた。 サービスの成功のカギを握るのは、技術における優越、誇大広告等のファクターによるのでもなく、ただ最高に優れた製品デザインにあるのである。
もう一つデザインに注力した製品の良い例として、Tumblrが挙げられる。アカウントのサインアッププロセスはシンプルの極みで、何分どころか何秒かあればプロ並みの見栄えのするブログを持つことができる。加えて、簡単に誰でもブログをアップできる優れたエクスペリエンスを提供している。Tumblrの製作チームはもちろん技術者能力も高いが、彼らはデザイン、すなわちUIそしてUXには誰よりも気を配っている。そこからも分かるように、昨今の生活者向けのWebアプリにおいては、技術よりも使いやすいデザインが重要である。
マーケティング (コミュニケーション)
潜在ユーザーにとっては、プロダクトの初期イメージは、マーケティングキャンペーンから受け取るメッセージが全てになる。プロダクト自体がたとえ新鋭スタートアップのものであったとしても、マーケティングにおけるヴィジュアル要素やデザインクオリティーが高ければ、大企業のような競合他社にも十分対抗可能になる。
スタートアップにおいては、予算の都合や費用対効果を考えると、現実的にほとんどのマーケティングはオンラインマーケティングになる。オンラインマーケティングマテリアルには、Webサイト、Facebookのカスタムページ、バナー広告、ニュースレター等を始めとし、会社やサービスのプロモーションに用いられる全てが含まれ、全てのデザインに一貫性を持たせる事で、ユーザーとの一貫したブランド・コミニュケーションを図る事が可能になる。
また、オンラインマーケティングの最大の鍵となる要素は、Webサイトだろう。質の良いWebサイトは、プロフェッショナルな企業として価値と、優れたサービスを提供している事を示す事が出来る。デザインの劣るサイトは反対の結果を引き起こしてしまう。どんなに小さな企業であっても、サイトさえしっかりとしていれば、1,000人規模の会社とも対等にやり合うことだってできる。
ブランディング (認識)
“ブランド”、もしくは”ブランディング”と言う言葉は、まるで大企業向けのフレーズの様に感じるかもしれないが、実はスタートアップにとっても、とても重要なものだ。
スタートアップにとって、ブランドイメージの確立は、その他の考慮すべき事柄、例えば資金調達や製品開発などより優先順位が低く見られがちだが、これは大きな間違いである。スタートアップにとってみても、会社のブランドイメージは企業生命に対する大きなファクターとなる。 ブランドイメージの増進を誤れば、そもそもその事業が何のために存在しているのかということを、受け手が理解するのが困難になってしまう。また、ブランドとは単なるロゴではなく、会社の職業倫理や企業風土からうまれる企業価値であり、ユーザーに対しての感覚的なイメージ構築である。ロゴはブランドの代表的なヴィジュアル的要素であり、一方ブランドはユーザーの感情的な反応のことである。言い換えると、その企業やサービスをどう”感じさせるか”がブランディングの仕事であり、そこにおけるデザインの役割である。
ロゴ一つとっても、記憶に残り易いロゴは、ブランド全体のイメージを決定づける非常に重要なファクターになる。ブランドのアイデンティティとしてロゴは独自でなければならず、覚えやすく、形としてシンプルでなければならない。会社そのものを表現するものであることは言うまでもない。一方、TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアは、自信のブランドが人々にどう受け取られているかを確認する良い手段となる。ここから得られるユーザーの反応を受け止め、企業の強みや弱みを知ることで、より競争力のある、長く愛されるブランドを確立することができるだろう。 一度全体のブランディングの方向性が定まったのであれば、全てのヴィジュアルマテリアルに統一性のあるデザインを適用する必要がある。名刺や、Webサイト、レターヘッド、封筒、パンフレットだけでなく、看板、広告、メールの署名、プレゼンテーションテンプレートまでである。初期投資は多少かかったとしても、最初からクオリティーの高いブランド構築を行う方が、後日儲かってから変更するよりもよっぽど費用対効果は高い。
また、忘れてはならないのは、ロゴは一度決まったら簡単には換えられないということだ。GAPやMy_____といったブランドにどういったことが起ったかを考えてみると一目瞭然である。下手にロゴを後から変えようとして、ユーザーから猛反発を受け、一気にブランド価値が下がった(GAPは速攻元に戻したが)。
全ての中心は「デザイン」にあり
UI/UX, マーケティング、ブランディング、どれをとってもその役割の中心を担っているのはデザインである。ビジネスリザルトに大きな影響を与える。優れたデザインはもう既に、”あったら良い”ではなく、”成功する為の必須事項” になりつつある。
上記の記事は、元々、筆者(btrax CEO, Brandon K. Hill)がデザインメンターを務めるStart-up Weekendに提供した記事の日本語翻訳版である(元記事URL: freshtrax)。
サンフランシスコ・シリコンバレーを拠点に、バイリンガルスタッフがグローバル市場向けWebコンサルティング・サイト制作サービス提供している会社です。アメリカ市場や海外市場への展開を考えられている場合は、日本語でお気軽にこちらからお問い合わせ下さい。
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