⌘ 2015年06月11日発行 第0850号
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■■■ 日本国の研究
■■■ 不安との訣別/再生のカルテ
■■■ 編集長 猪瀬直樹
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日本の「安心・安全」はどうして成り立ってきたか――。敗戦・占領、再武
装、復興の象徴・東京五輪警備……。民間警備会社の黎明期の秘話から戦後史
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「綜合警備保障創業者の村井順は昭和27年、時の宰相吉田茂に日本版CIA
をつくるべきだと進言し、初代内閣官房調査室長に就任した。しかしその翌
年、村井は思わぬスキャンダルに巻き込まれ、使命感に燃え自ら設立した職
を追われることになる……」
日本人人質殺害事件をきっかけにふたたび浮上している「日本版CIA構想」
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「権力闘争に屈した村井の『使命感』」
綜合警備保障の創業者の村井順の使命感とはなにか。昭和27年(1952年)に
吉田茂首相に内閣調査室をつくるべきと進言し、初代内閣官房調査室長になっ
たことを前回で書いた。
ところが村井順は内調室長就任後、1年半で辞めている。僕は赤坂の綜合警
備保障の白いビルの応接室で村井順の息子である村井温会長と向かい合って、
歴史を遡ろうとしている。
「なぜ、1年半で辞めなければならなかったのですか。情報機関のあり方やそ
の主導権をめぐって吉田首相の回りで権力闘争が起きていたからではないでし
ょうか」
「わたしの父はあまり恨みをもつ人間ではないので、そういうことは言いませ
んけどね」
村井会長は静かな口振りで弁解したが、僕の問いかけを否定はしなかった。
松本清張の小説『深層海流』には、「総理庁特別調査部長川上久一郎(内閣
官房調査室長村井順のこと)が、ロンドン空港で英国官憲から身体検査を受け、
3000ドルの闇ドルを没収されたというニュースは、日本の新聞に報道され
た」とある。この新聞記事は、リーク情報にもとづいており事実としては間違
いだらけの怪文書の類いであったが、この時点では真相は明らかにされず、村
井の進退はのっぴきならぬところまで追い詰められていったのである。
村井は1953年(昭和28年)夏、渡米してワシントンへ行き、CIA長官アレ
ン・ダレス(国務長官ジョン・フォスター・ダレスの弟)に面会した。吉田首
相からダレス長官宛の親書を携えている。日本側の内調の拡充案、それが日本
版CIAといえるものかはともかく、その案を提示するためである。
村井は密使である。表向きの外遊理由は、スイスで開かれるMRA(道徳再
武装運動)大会への私費旅行としての出席だった。カモフラージュのためワシ
ントンからロンドンへ足を伸ばし、さらに西ドイツのボン空港へ降りた。ロン
ドンからは英国秘密情報部(MI6)の諜報員が同行してきていた。ボン空港
で外務省職員の出迎えを受けるのだが、この外務省職員が曲者だった。
「西ドイツで米国の諜報部の最高責任者と会見しようとしたが、ロンドンから
同行した英国の諜報機関の二人の人物に妨害された」と本国へ、電文を打った
のである。それが外務省から記者クラブへとリークされ、別の闇ドル事件の怪
情報と重ねられて信憑性があるかのようなスキャンダルに仕立て上げられた。
こんなふうに報じられている。
「ヤミドルを没収されたとか、スパイに尾行されていたとか、渡欧中奇々怪々
なウワサをふりまいた内閣調査室長の彼は22日、パンアメリカン機で羽田空港
に帰って来た。タラップを降りきらぬうちから“事実無根だ”とウワサの否定
におおわらわであったがこのウワサの出所は何と西独ボン市の日本公館に勤務
する若い外交官某(特に名を秘す)が外務省にあてた私信からであることがわ
かった。この私信には彼が渡欧中、某国情報部員2名に尾行され、身体検査ま
でされたのに何故か一言の抗議もしなかったとあるが、ことの真偽はこの外交
官某と彼とを対決させなければわからない」(読売新聞昭和28年9月23日付)
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初回は「ビッグデータは人を幸せにできるか」ゲストは人の動きのデータ
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「日本国の研究」事務局 info@inose.gr.jp
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