[MM日本国の研究840]「猪瀬直樹流 読書のコツとは?」
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⌘ 2015年03月26日発行 第0840号
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■■■ 日本国の研究
■■■ 不安との訣別/再生のカルテ
■■■ 編集長 猪瀬直樹
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「猪瀬直樹流 読書のコツとは」
多忙なビジネスパーソンに、子育て中のパパ・ママに、本との出会いを提供
する――本の要約サイトflier (フライヤー)で掲載された、猪瀬直樹の「読書
術」をめぐるインタビュー、必読です!
*
都知事を辞任してから初の著作となる『さようならと言ってなかった わが
愛 わが罪』、そして東日本大震災の奇跡的な救出劇を描いた『救出 3.11気仙
沼 公民館に取り残された446人』を発表した猪瀬直樹氏。ノンフィクション作
家として、膨大な資料を記憶しておくための秘訣とは何か。一度読んだ本を糧
にするにはどうしたらよいのか。インタビューを通じて、猪瀬流の「読書観」
が見えてきます。
●猪瀬流「読書観」とは?
――ノンフィクション作家の方は多くの資料を読み込んでいらっしゃるのでは
ないかと想像されますが、猪瀬さんは普段、どのように本を読んでいらっしゃ
るのでしょうか。
○猪瀬 本を読むときは、その本を斜め読みするときと、じっくり読み込むと
きの両方があるよね。
ピンポイントで必要な箇所を探すという場合には、目次や索引から必要な部
分だけチェックするか、パラパラと流し読みするなかで「これは」と思うとこ
ろを見つけてくる。一つ一つじっくりと読んでいたら間に合わないから、こう
した作業的な読み方はビジネスパーソンや研究者にとっても必要なんじゃない
かな。
もう一つの読み方は、じっくりと読むこと。若い時には線引っ張ったりしな
がら、人生とは何かとか考えながら、本に対して正面からぶつかって読むよね。
歳をとってくると、そういう正攻法の読み方はだんだんしなくなるけど、若い
時はじっくりと読むべき本を見つけることが大事だよね。合わないものをじっ
と読んでいても駄目で、そういうときはすぐに乗り換えること。やっぱり自分
に合うものと合わないものがあるのは確かだからね。
でも自分にピッタリと合うものなんて簡単に見つからないから、ある程度の
量を読まないといけない。読んでみて、合わなかったら途中で止めて、別の本
に乗り換えていくことをせざるを得ない。そういうことを厭わないということ
が大事なんじゃないかな。
――若い時というのは学生くらいのことを指していらっしゃるのでしょうか。
○猪瀬 そういうのはやっぱり20代までだね。30代だともう間に合わない(笑)
今になって考えてみると、誰もが言うように「あの頃、もっと読んでおけばよ
かった」っていうのは僕にもある。常識的な本ですら読んでなかったりするも
のもあるからね。だから若い人に伝えられるとすれば、「もっと本を読んでお
いた方が良い」っていうこと。「本の虫」だから成功したという話はあまり聞
かないから、本ばかり読んでいても良くないんだろうけど、全く読まない人は
駄目。全然話にならない。
ただ、本を読む習慣がない人には「もっと本を読みなさい」と言っても全然
響かない。そもそも関心がないんだよ。だから、人生のどこかでそういう習慣
を身に付けていない人に読書を勧めても無理なんだろうな。
そう思うと、やっぱり家に本が置いてある環境って大事なんじゃないかな。
僕は中学か高校1年のときに、与謝野晶子が現代語に訳した『源氏物語』を読
んで「面白いなぁ」って思ったんだよね。高校の古典の授業でも『源氏物語』
をやるけれど、あれは勉強だからか、ちっとも面白くなかった。だけど、僕は
たまたま家に置いてあったから、「ああ、この世界も面白いんだ」って気づく
ことができた。
そういう意味では、何気なく「なんだこれは?」と手に取ってみる、ってい
うことが大切だね。電子書籍化すると本を置かなくなってしまうけれど、(物
体としての)本が置いてある環境が必要なんじゃないかな。
同じようなことを言うようだけど、本屋に行ったら、目的の本の隣にある本
を手に取って、その本も思わず買ってしまう、というのがあるよね。いまだと
ECサイトで検索して、その本だけを買ってしまう。その画面上で隣に並んでい
ることもあるけれど、本屋とはちょっと違うんだよね。
20年くらい前までは西麻布の交差点に「霞町書房」っていう書店があってね。
立ち読みしているとハタキではたかれるような、普通の本屋だったんだけど、
ちょっと覗くにはいいんだよね。いまはワンフロア全部占めているような大き
な書店が増えて、それはそれで素晴らしいんだけど、普段着で気軽に立ち読み
しにいける本屋が失われてしまったっていうのはちょっと残念だね。
――フライヤーをお使いいただいている法人のご担当者の中には、「業務に直
接関係する知識はトレーニングできるけれど、自己啓発や一般教養のような部
分はなかなか教育できない」という悩みを持っている方が多くいらっしゃいま
す。猪瀬さんは社会人の教育や継続学習についてどうお考えでしょうか。
○猪瀬 本を読んで、その内容について人と会話しなきゃ駄目だね。読んだと
きに面白いと思っても、それってすぐに忘れてしまう。だけど、「こないだこ
んな本読んだんだよね」と誰かに本の内容を話すことによって、何を読んだの
か、その本の内容はどんなだったかを思い出せる。
それに、人に話すっていうことは、その本を書評する、っていうことなんだ
よね。喋ることで「書評化」している。そうすると、どうやって説明すればい
いんだろうって考える。そのとき、「装丁はハードカバーで……」とか「出版
社はここで……」といった書籍の周辺情報を使って思い出したりする。電子書
籍にはそういう周辺情報がないのも欠点かな。
とにかく、読んだ人同士が本について会話するっていうのが大事なんだよね。
――会話以外に、社会人が心がけるべき本の読み方はありますか。
○猪瀬 最先端の情報が書かれている本だけじゃなくて、その逆の「古典」も
読むべきだね。「古典」っていうのは『源氏物語』のようないわゆる古典のこ
とじゃなくて、僕の考える古典の概念っていうのは「自分が生まれる前に出た
本はみな古典である」というもの。あなたが30歳だったら、30年前より昔に出
版された本はみな古典。
なぜそれが大事かというと、生まれてから30歳までのことは実感として記憶
しているわけ。記憶していると実感で先に分かっちゃうところがあって、想像
力を鍛えることができない。実感だけで読んじゃうと、「どうだった?」「う
ん、まあまあ」っていう風に感覚で終わっちゃう。感覚で最先端の情報の本を
読んでいても何も身に付かない。
でも、生まれる前の時代環境なんかは記憶していないし、実感が伴わないん
だよね。そうすると文字だけの世界からイメージを構成することになる。想像
力で補う、という脳の働きができてくるんだよね。だから、「古典」を読んで
想像力を鍛えることと、最先端の情報が書かれた本を読むことの両方が必要な
んだ。
それに「お父さんが読んでいた世代のベストセラーってなんだったのかな」
って興味を持って読むことが教養を広げることに繋がるんだよね。その時代の
風俗とか風景が見えてくるでしょ。ビジネスパーソンって同じ世代の人だけと
話しているわけじゃないからね、20歳の人と話すときもあれば50歳の人と話す
ときもある。50、60歳の人と仕事をするのに、その人のバックグラウンドを知
らなかったら、話が通じないよね。
自分が高校生くらいに自我に目覚めてから30歳くらいまで読んでいる本って
いうのは、限られた土壌で読んでいるわけだから、そうじゃない過去の空間に
自分を離れて飛んでいく必要がある。それは過去の空間のように見えて、実は
現代を作っている空間なんだよ。50、60歳の人が現代をつくっているんだから。
――そうやって人間の幅を広げていくんですね。
※全文は、本の要約サイトflier(フライヤー)に掲載されています。
→ https://www.flierinc.com/features/interview002
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■ 本の要約サイトflier(フライヤー)とは
「書店に並ぶ本の数が多すぎて、何を読めば良いか分からない」
「立ち読みをしたり、書評を読んだだけでは、どんな内容の本なのか十分につ
かめない」というニーズに対応し、厳選された本の『要約』を月20~30冊提供。
多忙なビジネスパーソンに優れた本との出会いを提供し、ビジネスに役立つ
知識・教養を身に付け、スキルアップにつなげる。
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■週刊読書人3月6日号で石井光太×猪瀬直樹トークライブ「3.11を語り継ぐ」
が載録されています。→http://goo.gl/jG9Tnw
臨場感―震災当日自分は何をしていたか/一通の緊急SOSを巡る一筋の
ライン/死を見つめないメディア 報道と現実との乖離――。
■クリエイターと読者をつなぐサイト cakes(ケイクス)で『作家の誕生』連
載中です。→ https://cakes.mu/series/3311
太宰治は芥川龍之介の写真をカッコイイと思った。文章だけでなく見た目
も真似た。投稿少年だった川端康成、大宅壮一。文豪夏目漱石の機転、菊池
寛の才覚。自己演出の極限を目指した三島由紀夫、その壮絶な死の真実とは。
■動画書き起こしサービス logmi(ログミー)で元プロ陸上選手の為末大さん
との対談「日本のスポーツはなぜ体罰的なのか? 為末大氏が語った”遊び”
としてのスポーツ論」がアップされました。→ http://logmi.jp/39351
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