2012年10月18日発行 第0720号 特別
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 ■■■    日本国の研究           
 ■■■    不安との訣別/再生のカルテ
 ■■■                       編集長 猪瀬直樹
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 本日10月18日12時、第7回動画「尖閣購入の真相」をアップしました!
 http://ch.nicovideo.jp/channel/inosenaoki (猪瀬直樹TV)

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 新装開店した猪瀬直樹公式ホームページ(http://www.inose.gr.jp/)には
「作家の部屋」と「副知事の部屋」の二つの入口があります。

 両方の側面を持つ猪瀬ならではの構造で、少しホームページを覗いていただ
ければ猪瀬直樹という人間の「面白さ」が伝わるはずです。
 さらに猪瀬直樹TV(ニコニコ動画・猪瀬直樹チャンネル)など、新しいコ
ンテンツも追加。

 ツイッター、フェイスブック、ブログとも連携し、ホームページを始点に幅
広い分野におよぶ猪瀬の活動を網羅することができます。
 是非、ご覧ください。
 http://www.inose.gr.jp/
                *

 
 メールマガジンでは、今週も引き続き、猪瀬直樹TV掲載のインタビュー動
画をテキスト化してお届けします。

 本日のテーマは、「『尖閣』と中国ナショナリズム」です。

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ニコニコ動画 猪瀬直樹チャンネル
一問一答「第6回 『尖閣』と中国ナショナリズム」

――尖閣諸島問題をきっかけに、中国で日本の企業がおそわれたり、日本人が
  ラーメンを頭にかけられたりということがありましたが、どのようにお考
えですか。

■猪瀬□ 中国は近代国家なのかということが問われていると思います。仮に
     尖閣諸島が自分のもので、日本がじゃまをしているという考えが前
提にあったとしても、日本企業の店で略奪・暴行してもいいのかということは、
全く次元のちがうことです。外交的に争いがあって暴動がおきてもそれを取り
締まらないというのは、近代国家とはいえないと思います。尖閣は自分のもの、
じゃあ略奪してもいいというのは論理が成り立ちません。

――中国は過去の歴史においても暴動が何度もありました。

■猪瀬□ 1900年に義和団事件がありました。当時は清朝でしたが、暴動が起
     き、外国人があぶないという状況になりました。これは「北京の55
日」という映画で描かれ、派遣された日本軍の軍人役で伊丹十三が出ていまし
たね。清朝ではどうにもならないので、北京にいた仏、伊、独、米などの軍隊
が暴動を押さえて解決した。中国は暴動が噴出することがあります。

――暴動が起き王朝が変わるという歴史があります。

■猪瀬□ 中国は始皇帝以来、専制君主が支配し、科挙という試験制度で選ば
     れた官僚が治めるのだけれども、民衆はそれとは別のところで生き
ていますね。そういう世界だと思います。

――それを今の中国共産党は恐れているのではないでしょうか。

■猪瀬□ そういう意味で伝統的な中国の支配構造の歴史が繰り返されていま
     すね。支配構造が成立しては崩壊するというような。

 僕は中国のある学者と話をしたときに、中国は上海、広東、北京、福建、四
川とみんな言葉が違う。それならば、ヨーロッパのEUのような緩やかな連合
体にしたらいいんじゃないかと。そうすれば、民主主義が進んでいって平和に
なるんじゃないかと言ったことがあります。しかし彼は、中国には「中原で覇
を競う」という言葉があって、黄河流域の肥沃で豊かなエリアで覇権を争い、
覇王が生まれてきた。エリア、エリアで成り立つ世界ではないといっていまし
た。

――中国はEUにはなれないということですね。

■猪瀬□ ヨーロッパでも19世紀は、英、独、仏、伊などはしょっちゅう戦争
     をしていて、20世紀に入って、第一次世界大戦で徹底的にやり合っ
た。第一次世界大戦を最大の戦争、Great Warといっているほどです。レマル
クの「西部戦線異状なし」にも描かれていますが、ライト兄弟が発明してから
間もない飛行機を使って爆弾を落とす、毒ガスもまく、戦車はバリケードを乗
り越える、塹壕で撃ちあったりして2000万人が死にました。シャーロック・ホ
ームズの作家であるコナン・ドイルでさえ、あまりの悲惨さから厭世観という
か、生きていく勇気がそがれて落ち込んだとあります。

――19世紀から20世紀にかけてはヨーロッパにとって大きな転換期であったわ
  けですね。

■猪瀬□ 殺戮をくりかえしていくうちに、このままではヨーロッパが成り立
     っていかないと、1928年にパリ不戦条約を結びました。もう戦争は
こりごりだということになった。こうして、EUへのおおきな流れができた。
ヨーロッパのそれぞれの国のナショナリズムが成熟したナショナリズムにかわ
っていったんです。

――中国や韓国ではどうでしょうか。

■猪瀬□ 日本は第二次世界大戦で300万人の命を失っていますから、ある
     程度落ち着いたナショナリズムにかわりましたね。ナショナリズム
には年季が必要で、犠牲もあります。中国や韓国は一度も敗北していない、試
練にあっていないナショナリズム、若いナショナリズムなんです。ですから、
ちょっと強気の言い方がでても、それを反省する材料がない。中国は秦の始皇
帝以来、専制君主と革命、専制君主と革命をくり返してきて、定期的に暴動が
起き、それを上書きしてきた。そのために近代国家としての国民意識もできあ
がっていないし、共産党一党支配なので、選挙制度も正式ではない。われわれ
はそういう国と対峙していることを、知る必要があると思います。

――日本は近代化して150年です。

■猪瀬□ 日本もイギリスもドイツもイタリアも、小さな国の連合体でした。
     日本は江戸時代には300もの連合体だった。それを統一した。そ
の時に国語の統一とか、議会制度をつくりました。それで近代国家、国民国家
になった。イギリスは典型的につくり上げています。日本はイギリスに似てい
て、うまく取り入れて近代国家をつくった。中国や韓国には戦国史しかないの
だと思います。

――歴史的にみて、中国や韓国、北朝鮮は国民国家になれていない、近代化の
  途上だという認識をもって、冷静に尖閣問題を考えていくべきですね。

■猪瀬□ 中国は1911年の孫文の辛亥革命で国民国家になりかけましたが、各
     地の軍閥を抑えきれなかった。韓国と北朝鮮はある意味では悲劇で、
第二次世界大戦の処理が終わりきっていないまま固定化されてしまったため、
ナショナリズムが成熟されにくい構造があります。そういう世界と向き合って
いるのでコミュニケーションをとりにくいところがあります。それが今回、尖
閣問題で噴き出したかたちになりました。日本はある程度おちついて対処して
いますが、中国はナショナリズムの成熟しきっていない、国民国家になりきれ
ていない姿を世界にさらすことになったのではないでしょうか。


                                (了)


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 「日本国の研究」事務局 info@inose.gr.jp


猪瀬直樹の新着情報━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■出演情報

・10月21日(日)18:00~18:55 日本テレビ『真相報道バンキシャ!』で、
 オリンピック招致についてコメントします。
 
■掲載情報

・日経BPネットの好評連載「猪瀬直樹の『眼からウロコ』」最新号。
 「『知的書評合戦』に参戦、昨年の2倍超す ビブリオバトル首都決戦2012、
 秋葉原で10月21日に開催」はこちら。
 http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20121015/326878/

・10月10日発行『THE 21』11月号の巻頭インタビュー「『想定外』を『想定内』
 にするメンタルコントロール術」に「『自己責任時代』の“平常心”の保ち
 方」が掲載されました。

・10月5日発行『潮』11月号、連載対談「日本を変える次世代の騎手たち」
 第6回に工藤 啓氏との対談「若者の雇用を守るニート支援の最前線」が掲
 載されました。

・9月26日発行『一個人』11月号に、連載エッセイ「解決する力」の第14回が
 掲載されました。テーマは「2度目の東京オリンピックに向けてーーロンド
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 1983年に世界文化社から刊行され、文春文庫になり、『猪瀬直樹著作集』に
入り、ロングセラーとして版を重ね昨年6月に中公文庫に収録された作品です。

 巻末には勝間和代さんとの特別対談「日米開戦に見る日本人の『決める力』」
が収録されました。

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          (中公文庫 税込700円)
 
      天皇崩御そして代替わり。その時何が起こるのか。
  天皇という日本独自のシステムを〈元号〉を突破口に徹底考証。
         処女作が待望の復刊です。   
 
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「天皇は実在するが、また同時に人びとの意識の底にとり憑いた幻想のひとつ
でもある。曲がりくねった鏡張りの回廊を歩くときに歪んだ自分の姿が無数に
映るばかりで天皇の影は見当たらない」(「あとがき」より)

 巻末には作家・批評家の東浩紀氏との特別対談「今、ここにある皇室の危機」
が収録されました。

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      □■『言葉の力――「作家の視点」で国をつくる 』■□
            (中公新書 税込777円)

「東京都副知事で作家の言葉論。ツイッターで文章力を鍛えるには口語体では
なく文章語で書くことだと説く。読書は『10ページ読書』を勧める。それだけ
で頭の中に検索のキーワードができ上がると言う。また、小泉純一郎は<俳句
のように凝縮した1行の力強さがある>が、菅直人は<ページに言葉が埋まっ
ているだけ>といった分析等も興味深い」(読売新聞 8月14日付)

                *

     作家として、東京都副知事として進める「言語力再生」。
 サッカー界にも導入された「言語技術」やツイッターやフェイスブックなど
のソーシャル・ネットワークのほか、三島や太宰の文体にいたるまで、グロー
バル時代に不可欠なコミュニケーション力の目的・手段を独自の視点で解説。
 
  第一部 「言語技術とは何か」
  第二部 「霞が関文学、永田町文学を解体せよ」
  第三部 「未来型読書論」

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                □■『突破する力』■□
          (青春出版社 税込800円)

              7刷出来!  

  道路公団民営化をはじめ、作家として、東京都の副知事として、
      さまざまな世間の“壁”を突き破ってきた著者が、
     自らの体験を踏まえて綴る、人生を面白くする
          本気の仕事&生き方論。
  
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