結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2015年10月20日 Vol.186
はじめに
おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
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新刊の話。
ちょうどいま、カバー画像が到着しました!
秋の雰囲気でいいですよねえ!
さて、来月2015年11月に刊行される『数学ガールの秘密ノート/ベクトルの真実』 ……と毎回この結城メルマガに書いています。
ここまで書けました……レビューアさんのメール読んでます…… 脱稿しました……初校ゲラを読んでます……そんなことをずっと書いています。 そして、現在は再校ゲラを待っている状態です。再校ゲラは、 この結城メルマガが届く火曜日には、出版社から結城へ送られていることでしょう。
今週は再校ゲラを読む週です。 一冊の本ができあがるまでには、たくさんの行程があり、 そこを通過していくうちに、少しずつではありますが、 本は確かに良くなっていきます。
最初はあちこちにアラが目立つ。 でもそれを一個一個直していくうちに、 いつのまにか「けっこういい」状態に仕上がってきて笑みがこぼれる。 そのプロセスはいいものです。
今週は再校ゲラを読み、来週には(なんと、もう10月も終わりです!) 再校の読み合わせがあります。そこでいったん私の手から離れます。 あとは11月に入ってサイン本を作り、出版です!! 待ち遠しい!
◆『数学ガールの秘密ノート/ベクトルの真実』
https://bit.ly/girlvector
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そうだ、サイン本!
刊行直前に販売される《サイン本》とは別に、 結城は個人的に《サイン本無料プレゼント》の企画を行っています。 今回のベクトル本もいつも通り《サイン本無料プレゼント》を行います。
〆切は2015年11月3日ですが、早めにお申し込みくださいね。 詳しくは以下に書きましたのでお読みください。
◆『数学ガールの秘密ノート/ベクトルの真実』《サイン本無料プレゼント》
https://bit.ly/vector2015
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リサージュ図形の話。
『数学ガールの秘密ノート/丸い三角関数』にはリサージュ図形の章が出てきます。 いろんなリサージュ図形を描くプログラムを @norioc さんが作ってくださいました。 感謝です。楽しい!
◆p5.js リサージュ図形(解説)
http://qiita.com/norioc/items/442a1cf4c170a081e5fa
◆実際に試すサイト
http://noriok.sakura.ne.jp/p5js/lissajous-curve.html
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パソコン教室の話。
阿部和広先生(@abee2)が、 パソコン教室の「現実」について書いていらしたのでご紹介。 「不幸なパソコン教室が生まれていること」についての現実と考察です。
◆幸せなパソコン教室のために(PDF)(情報処理2014年6月号)
https://www.ipsj.or.jp/magazine/9faeag0000005al5-att/5506.pdf
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積分の話。
Web連載「数学ガールの秘密ノート」は10月になってから「積分」がテーマとなりました。 秘密ノートシリーズは「やさしい数学」を扱うので、 積分といってもやさしい内容にするつもり……で、始めたのですが、 実際に書いてみると、なかなか思うとおりにはいかないようです。
「どうしても難しくなってしまう」という意味ではありません。 「やさしい内容を語っていたつもりが、 深い内容まで自然と入り込んでしまう」という意味です。
たとえば、先週金曜日に公開された第133回のこと。
◆第133回 はさみはさむ(前編)
https://bit.ly/girlnote133
積分を学ぶ話として面積を求める話をし、 面積を求めるために区分求積法という方法の話をする。 それはまあよくあることなんですが、 区分求積法で極限の概念を説明していると、 数学ガールの一人、中学生のユーリが「グラフにスキマがある」と言い出しました。 スキマがあるから面積は正しく求められてないと。
もちろんそこが極限のキモになるのですけれど、 《お兄ちゃん》の「僕」がユーリにていねいに説明していると、 いつのまにか、大学で登場するεδ論法の一部が自然に登場してきました。 さらには「面積というのはいったい何だろう」 という深い議論にもちょっぴり入りかけたりして。
結城は二人の会話を書き留めながら、 「なるほど!」と感動することしきりです。 数学っておもしろい。学ぶっておもしろい。 そんなふうに思う瞬間です。
第133回の記事がWebで公開されて、 何人かの方は、結城が感動したのと同じことに気付き、 たいへん楽しまれたようでした。
中学生・高校生の数学だからといって、あなどることなく、 きちんと考えたり説明したりすることはとても大事なんだな…… とそんなふうに思えた体験でした。
◆Web連載「数学ガールの秘密ノート」
https://cakes.mu/series/339
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ゆきのさん( @sequen_11235813 )が、 プラ板で数学ガールのロゴ(恋の冪級数)を作ってくださいました。 ありがとうございます!
◆ゆきのさんのツイート
https://twitter.com//status/652440805030780928
私も何となく手書きしてみました(iPhoneのZenBrushというアプリ)。
そうしたら、ゼルプスト殿下(@tenapyon)が、「計算しました!」とツイート。
◆ゼルプスト殿下のツイート
https://twitter.com/tenapyon/status/652475101628076032
こういうやりとりは楽しいですね。
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先月末の話。
月末から月初めにかけては有料メルマガ発行者にとってはどきどきの時期です。 なぜなら課金は月単位なので、何人が新たに購読解除するだろうかと思うからです。
でも、よく考えてみると、そんなにどきどきする必要はないともいえます。 というのは、購読解除する読者さんというのは、 配信されているメルマガを継続して読みたくはない気持ちを持っているわけですから。 それを無理に継続してもらっても、不満が募るばかりでしょう。
そこで試しに、9月末に何回かこんなツイートをしてみました。
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結城メルマガを購読している方で、
購読ストップしたい方は今日のうちに解除忘れずに!
逆に、今月分を読みたい方も今日のうちに購読登録を!
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つまり明示的に「月末ですよ」というリマインドをしたのです。 その結果、どうなったか。
いつもとほとんど変わりはありませんでした。 むしろいつもより少し購読者数が増えたくらいです。
もう少し詳細に見てみると、単純に購読者数が増えたわけではなく、 購読解除した人と、新規購読した人の両方が増えたようです。 そのプラスマイナスした結果として、 購読者数が微増したということのようです。
これをどのように理解すればいいのかは、 まだよくわかりませんけれど。
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TeXの話。
今月(2015年10月)の始めに、 使っているMacBookのOSをEl Capitanにアップグレードしました。 たくさんの方に教えていただき、 何とかEl CapitanにTeX Live 2015をインストールできました。 その経緯と要約は以下に書きました。
◆OS X El Capitan に Homebrew を使って TeX Live 2015 をインストールする手順
http://snap.textfile.org/20151006085255/
結城は何かやったわけではなく、 TeX関係の方々が解決してくださった結果を享受しているだけです。 どんなことがなされたのかは、id:doraTeXさんの以下の記事をごらんください。
◆TeX界の El Capitan 迎撃戦記
http://doratex.hatenablog.jp/entry/20151008/1444310306
id:acetaminophenさんのこちらの記事も合わせてごらんください。
◆「TeX 界の El Capitan 迎撃戦記」のコメントに対する回答と本質
http://d.hatena.ne.jp/acetaminophen/20151010/1444491444
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自宅で働くという話。
台風が来るたびに「風雨にも関わらずがんばって出社」という話がTwitterに流れる。 結城も若い時代に満員電車で会社勤めしていたことを思い出し、 事故など起きませんようにと思う。
海外でプログラムの仕事をしたときがちょっとあって、 そのときに知人が "WFH" という表現を使っていた。 WFHというのは "Work From Home" の略で、 要するに「今日は出社せずに家で仕事するよ」という意味である。
日本のIT企業でこの "Work From Home" は、 どのくらい自由に使えるのだろうか、とよく思う。 毎日自宅で仕事できるとまではいかなくていい。 毎日とはいわなくても、
今日は打ち合わせもないし、来客予定もない。
つまり、物理的にオフィスに行く必要はない。
通勤時間分をがっつり作業にあてた方が絶対はかどる。
という場合はあると思うのだ。 その場合でも出社しなければならないか、という問題である。
台風などの悪天候のときに出社するのは体力を消耗する上に、 時間も無駄になることがある。電車が乱れていると駅で待たされて無為な時間を使ったり、 振替輸送で別の路線に乗り換えるためにまた時間を使ったり。
ふだんから人に会うことが仕事になっていると難しいけれど、 開発系ならば比較的WFHはやりやすいんじゃないかな。 そういう働き方で、生産性が上がるのはいいことだと思う。 職種や、会社の状況や、各人の性格などでいちがいには言えないけれど、 WFHの方が生産性が高くなることが多いんじゃないだろうか。
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ビデオの話。
結城は映画館でたまに映画を観るけれど、 DVDをレンタルして家で観ることはほとんどない。 家で観ていると割り込みがいろいろ入って集中できないからだろうと思う。
先日からAmazonのプライムビデオというサービスが始まった。 Amazonのプライム会員になっている人向けのおまけ(?)サービスで、 ビデオが見放題になるサービスである(すべてのビデオではない)。
ふーんと思って眺めていたら『舟を編む』があったので試しに観ることに。 辞書を編纂するお話で、松田龍平、宮崎あおい、オダギリジョーらが出ている。 この映画は2013年に夫婦で映画館に観にいった。なつかしい。
AmazonのプライムビデオはiPhoneでも観られるので、 電車の中やベッドの中など、細切れの時間で観ている。 でも、あまり興ざめではない。雰囲気のいい映画なので、 一シーンをちょっと観るだけでも心に新しい風が吹くみたい。
なるほどなあ、こういう映画の見方もあるのか、と思った。
◆『舟を編む』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00GCHGF72/hyam-22/
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それでは今週の結城メルマガを始めます。 今回は「結城浩ミニ文庫」のコーナーで、
「資格について」
という文章をお送りします。 この文章は、村上春樹の自伝的エッセー『職業としての小説家』を読みつつ書いたものです。
では、どうぞごゆっくりお楽しみください!
目次
- はじめに
- 『資格について』 - 結城浩ミニ文庫
- 焦りを抑える工夫 - 仕事の心がけ
- わかりやすい文章を書くには? - Q&A
- たった一つの心を抱えて
- おわりに
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Vol.185 結城浩/再発見の発想法 - Library(ライブラリ)/原稿依頼を受けたときに考えること/
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