結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2015年1月27日 Vol.148
はじめに
おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
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結城は最近「数学ガールの秘密ノート」シリーズの第五弾、
『数学ガールの秘密ノート/微分を追いかけて』
の執筆が山場を迎えています。
本来は昨年末に脱稿予定だったのですが、 体調のトラブルも含めていろいろあったので、 大幅に遅れています。現在は今月末を一区切りとすべく、 がんばって書いており、第4章を仕上げようとしているところ。
この第五弾は今年の春に出版になる予定です。 ぜひ応援くださいね。
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こんな寓話がある(記憶だけで書いています)。
「何をしているんですか」と聞かれたとき……
・Aさんは「釘を打っています」と答える。
・Bさんは「建物を作っています」と答える。
・Cさんは「みんなが集う教会を建てています」と答える。
という寓話である。 主旨は「作業そのものではなく、その先のビジョンに注目しよう」 ということなのだと思う。
でも、たとえば本を書くときには、 この三つの粒度を自在に行き来できる必要があるのではないだろうか。
「何をしているんですか」と聞かれたとき……
・あるときは「文章を書いています」と答える。
・あるときは「第4章を書いています」と答える。
・あるときは「数学を楽しめる読み物を書いています」と答える。
という三つの粒度である (もちろん、粒度はさらに細分化することができるけれど、一応)。
実際、本を書いているときの大半の時間は「文章を書いている」と表現できる。 もうすこし言えば「てにをはを直している」や「句読点を直している」 かもしれない。つまりは、大半の時間「釘を打っている」わけだ。
でもときどき「建物を作っている」ことを思い出し、全体に目を向けることになる。 個々の文章ではなく、構成を確かめたりする。
そして、仕事に疲れたときや、いやになったときには、読者さんのことを想像し、 「自分は、数学を楽しめる読み物を書いているんだ」と考えるのだろう。 「みんなが集える教会を建てている」ことを思い出し、 次の釘を打ち始めるのである。
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ある雨の朝、森を歩いていた。
雨の森は静かである。
傘に当たる雨の音が妙に落ち着く。
歩く。
傘に当たる雨の音。
歩く。
文章はあわてて書くものではないな。
急いで書いてもいいけれど、忙しく書くのはよくない。
ある雨の朝、そんなことを思った。
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先日、会計のことで疑問が出たので出版社に尋ねようと思った。 あまりいい加減なメールを出すのはよくないので、 過去のメールを確かめて、必要な情報を整理してからメールしようと考えた。
ところが、情報を整理しているうちに自己解決してしまった。 「そうだ、そういうことだった。忘れていたよ」 情報を整理するのに少し時間は使ったけれど、 自分の理解も深まったし、他人の時間を不必要に奪わずに済んで良かった。 そんなちょっとした仕事の上でのできごと。
もちろん、疑問が出て即座に「これどうでしたっけ?」 というメールを送るのが常に悪いわけではない。 結果的にはそれでも時間が掛からないかもしれないし、 あるいは私が考えた「自己解決」がまちがっている可能性だってあるし。
ネットを使っていると、時間を使わず即座の解決を求めることが多くなる。 そして、すぐに解決できないことへのねばりがなくなってきたかも。 Webサーバから20秒返事が来なかったから調べるのやーめた!みたいに。
無駄に時間を使うのはよくないけれど、あわてたり、 ねばりがなくなるのもよくないよね。 何か物事をなすにはそれなりの時間がかかる。 何か変化を起こすにもそれなりの時間がかかる。 重いものを動かすのに似ているかもしれない。
その意味では「時間がどれだけかかるのか」 を見極める能力は大事かもしれないな。 それは、重そうなものを見極める能力ということになる。
一人で仕事をしていると、たいへんなこともあるけれど、 構成要素が少ない点は楽である。構成要素のほとんどは自分だ。 自分だったら何にどれくらい時間がかかるか。 自分だったらどんな失敗をするか。 そういう知識が増えてくると、仕事の改善もしやすくなる。
まあ、自分が調子が悪いときには、 全体が調子悪くなってしまうのだけれど。
うまく調整しつつ、あわてず (でもなまけず)がんばりましょうかね。
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さて、それでは今週の結城メルマガを始めましょう。
今回は、「数学文章作法」の第三弾の執筆をそのままお届けする、 「数学文章作法のスケッチ(5)」です。今回は、 考えていることを目次の形式にまとめていくことについて。
また、ひさしぶりに「手書きノートのスナップショット(11)」 もどうぞ。Web連載を書くときにどんなことを考えているのかを、 手書きノートと合わせて解説します。
どうぞ、お読みください!
目次
- はじめに
- 数学文章作法のスケッチ(5) - 目次を考えながらイメージを広げる
- 手書きノートのスナップショット(11)
- おわりに
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