結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2013年11月12日 Vol.085
はじめに
おはようございます。 いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
子供の話。
先日のこと、中学生の息子から数学の問題を解いてほしいと頼まれました。 聞くと、数学のプリントで先生が解答を渡し忘れたものがあるとのこと。 いくら考えてもわからないので教えてほしいと。
子供が私に数学や理科のことを聞くときには、 「お父さんなら当然知っていると思うけど」 という不穏な枕詞をつけてきます。 それがまたまたプレッシャーになる。
こんなふうに子供に尋ねられるのは誇らしい気持ちになる反面、 父親の威信を保てるかどうかということでいささか緊張します。 見てみると幸いそれほど難しい問題ではなく、すぐに方針が立ちました。 でも、複数の変数が入り組んでいるので、実際に計算するのはめんどうそうです。
おおまかな方針を示し、
こういうときは、
何を元にして何を求めようとしているかを
はっきりさせるといいんだよ。
などともっともらしくまとめました。 そして、
じゃあ、あとはわかるよね。
根気よく計算してごらん。
と逃げてしまいました。 めんどうくさがりな著者は「証明は読者の演習問題とする」などとうそぶく ……という数学書ジョーク(?)があるのですが、 そのような著者の気持ちが少しわかったような気もしました。
* * *
教える話。
先日、高等学校で数学の特別授業を行ったという話はこの結城メルマガでも、 またWebの日記でもご紹介してきました。
◆東海大学付属第三高等学校で「フィボナッチ数列の表現」という特別授業をしました
http://www.hyuki.com/d/201310.html#i20131025120000
この高校から、特別授業を受けた生徒さんの感想文を送っていただきました。 ひとりひとりがプリントにたくさんの感想を書いてくださり、 読みながら私はずっとにこにこしていました。
授業中は比較的おとなしめな生徒さんだったのですが、 感想文では元気いっぱいいろんなことを書いてくださいましたよ。 私のキャラクタ(スレッドお化け坊や)のバリエーションを たくさん書いてくださった方や、 もっと年とった先生かと思っていたとか、 公式をぽんぽん話す難しい授業だと思っていたけど、 そんなことはなくておもしろかった……などといった 率直な感想が書かれていました。
担当してくださった先生が
「子供たちからは、いつも元気をもらいます」
ということをおっしゃっていましたが、 その気持ちの一端がわかりました。
ともかく、生徒たちはそれなりに楽しんでくださったようなので、 私としてもほっとしています。
結城メルマガでは、そんな特別授業をベースにした読み物、 「数学ガールの特別授業」を連載しています。 今回はその二回目、PDFにてお送りいたします。 詳細はこのメルマガの後半で。 生徒さんが描いてくださったイラストもちょっぴりご紹介しますね。
* * *
ブログの話。
結城はいくつかのWebサイトで書き物を公開しています。
◆結城浩のWeb日記(メインの日記)
http://www.hyuki.com/d/
◆結城浩のはてな日記(技術的な話やTipsなどの話)
http://d.hatena.ne.jp/hyuki/
◆結城浩のタンブラー(毎日の仕事)
http://hyuki.tumblr.com/
◆Twitter
https://twitter.com/hyuki/
他にもいくつかアカウントがあります。
先日はMedium.comで試しに書いてみましたが、 そこでは数式が使えないのでちょっとつまらないとも思いました。
そういえば、と思い出したのはQiita(キータ)というサイトです。 アカウントだけ作って放置していましたが、 技術的なTipsなどはこちらに書くのもよさそうです。 ということで、LaTeX関連のちょっとした記事を試しに書いてみました。
◆Qiita
http://qiita.com/hyuki
たとえばこんな記事です。
◆LaTeXの小さなサンプル
http://qiita.com/hyuki/items/afe6b4124a01d27b1e77
◆TikZの小さなサンプル
http://qiita.com/hyuki/items/10dffbf3dbc676f250aa
◆ザ・インタビューズをダウンロードするRubyスクリプト
http://qiita.com/hyuki/items/104fbdc7614b3db6683b
これをご覧いただくとわかるように、Qiitaは技術者向けのサイトなので、 プログラム(やLaTeX)のソースコードを張りやすくできています。
細かいTipsや実験的に作ったものは、すぐに散逸してしまうものです。 このようなWebサイトにアップしておけば、散逸しにくくなりますし、 他の人にとっても参考になります。
自分のWebサイトがあるのですから、 こういう細かい記事を自分のサイトで公開する手もあります。 でも、いろんなサイトで試しに書いてみるのも勉強になるものです。 特にQiitaはKobitoという専用の更新アプリがあって、 ドキュメントを編集・更新するのがたいへん楽になっています。 こういうツールも、遊び気分で試してみると学ぶことが多いですね。
◆Kobito - プログラミングのメモやスニペットの記録に最適なMacアプリ
http://kobito.qiita.com
* * *
別の話。
ブログに書くほどでもないけれど、 Twitterでテキストを流しておしまい、にはできない情報というものがあります。
たとえば、LaTeXを学んでいて「こんなPDFファイルができたよー(見て見て!)」と言いたいとき、 小さなPDFをサーバ上においてURLをツイートしたい。
現代ならばEvernoteやDropboxというサービスを使うのが一般的だと思います。 これらのクラウドサービスには「ファイルを共有する」という機能が必ずあって、 URLを伝えるだけでクラウド上のファイルを他人と共有できるのです (参照のみという形か、参照+編集という形で共有可能)。
ただ、EvernoteとDropboxは結城の普段使っている重要ツールなので、 あまりそれを不特定多数との共有には使いたくないなあと思っていました。
そこで、マイクロソフトのSkyDriveというサービスを使ってみることに。 SkyDriveはDropboxと同じようなクラウドストレージサービスです。 無料で7GBもの容量を自由に使うことができます。
◆SkyDrive
https://skydrive.live.com
先日からここに「試しに作ってみたepubファイル」や「実験的に作ったPDFファイル」などを 放り込んで、Twitterで「こんなん作りました」とツイートをしています。
◆Eulerフォントを使ったPDFファイル
http://sdrv.ms/1fvcmqN
◆めえめえさんが、しんぶんはいたつをするおはなし(epubファイル)
http://sdrv.ms/1iYj0FM
上記の「めえめえさん……」というepubファイルは、 実はiPhoneのみで作成から配送まですべて行っています。
1. iPhone上のEvernoteのノートにテキストを入れる。
2. iPhoneのEverEPUBというアプリでepubに変換する。
3. できたepubファイルをEverEPUBから「SkyDriveで開く」で配布する。
できたepubファイルは上記のようにシンプルなものですけれど、 このくらいのepubファイルなら、 テキストさえ用意すればiPhoneだけで配布までできるのだなあと感動しました。
EverEPUBというアプリは、Evernoteに入れたノートをもとにしてepubファイルを作るものです。
◆EverEPUB
https://itunes.apple.com/jp/app/everepub-for-evernote/id487503625
画像のノートを入れておけば、画像を含むepubファイルも作ることができそうです。
* * *
別の話。
近藤嘉雪さん (@yoshiyuki_kondo) 経由で知った「バイナリーツリーは存在した!」。
◆Binary trees - they really exist!!
https://twitter.com/yoshiyuki_kondo/status/397879819846688768
アルゴリズムに登場する「二分木」が実際の木として存在したという話。
* * *
しょいんさん(@shoin39)の「数学ガール痛車」の 動画がありましたのでご紹介します。 茉崎ミユキさん作画による数学ガールのキャラクタが 車体の全面に描かれていて圧巻です!
◆「痛車フェス」に行ってきました! 25 - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=raSuROi3bYk
* * *
自己分析の話。
ブログをあれこれ試したり、 小さなepubやPDFファイルを作って遊んだりしているのには理由があります。
一言でいえば、 『数学ガールの秘密ノート/整数で遊ぼう』の初校読みの反動です。 校正を読むときにはすごく細かいところまで神経を使うので、 もっと大ざっぱにざくざく文章書いたり、本を作ったりしたくなるのです。
Evernoteにテキスト入れて、画像入れて、EverEPUB動かして、 はい電子書籍一丁あがり!って気分になりたいのですね。
* * *
そしてその『数学ガールの秘密ノート/整数で遊ぼう』ですが、 先週末に初校の読み合わせが終わりました。
読み合わせでは毎回「それには気づかなかった、あちゃー!」 というシーンがあります。 今回編集長に指摘されたミスで驚いたのは、次の二つです。
・99までの素数で43が抜けていた(43は素数)
・134+30=174 という計算をしていた(本当はもちろん164)
・11より小さい素数を2,3,7と書いていた(5が抜けている)
こういう大ポカを指摘されると「やられた」と思うと共に、 「編集長にしっかり読んでいただいている」と感じてうれしくなりますね。
逆に編集長が気づかなかったミスでレビューアさんが気づいたものとしては、
・音引き(ー)を書くべきところが半角マイナスになっていた
というミスがありました。 これには編集長も、うなっておりました。
そんなこんなで現在は、 編集部と印刷所にボールが渡っている状況です。
再校の読み合わせは来週の末か、再来週の初めです。 それが済めばあとは年末の刊行を待つばかり。
新しい本が出るというのは、いつもわくわくします。
今年はなぜか例年になくたくさんの新刊を出す年となりました。
・『数学文章作法 基礎編』
・『数学ガールの秘密ノート/式とグラフ』
・『数学ガールの誕生』
・『数学ガールの秘密ノート/整数で遊ぼう』
この四冊です。幸いそれぞれに売れ行きも良く、 読者さんからたくさん応援をいただいています。 ほんとうに感謝なことです。
今年も早11月です。 来年もまた、一生懸命すこしでも良い本を作るように 努力していきたいと思っていますのでよろしくお願いいたします。
* * *
さて、そろそろ結城メルマガを始めましょう。
今回のメインコンテンツは「数学ガールの特別授業」です。 先週の予告では「数学文章作法」でしたが、 準備の都合上、来週にシフトさせてください。 それから読者さんの「Q&A - Evernoteを執筆にどう活用するのか」です。 先週もEvernoteの質問でしたが、その続きの質問がやってきました。
どうぞお楽しみください!
目次
- はじめに
- 数学ガールの特別授業
- Q&A - Evernoteを執筆にどう活用するのか
- 次回予告 - 数学文章作法
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