結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2019年4月2日 Vol.366
目次
- 文章を書き出すためにバランスを崩そう - 文章を書く心がけ
- 自分もいつかメルマガを書いてみたい - 仕事の心がけ
- 文章を書くときに「いまさらこんなこと」と思ってしまう - 文章を書く心がけ
- 人と話すときに緊張してしまう
はじめに
結城浩です。
いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
四月です! 何だか新しいことを始めてみたくなる季節ですね。
折しも、2019年4月1日には新しい元号が「令和(れいわ)」になると公開されました。
あなたは何か新しいことを計画しているでしょうか。
結城は現在『数学ガールの秘密ノート/ビットとバイナリー』を一生懸命書いています。
先日、早くもアマゾンで予約が開始しました(!)。
◆『数学ガールの秘密ノート/ビットとバイナリー』
https://bit.ly/hyuki-note11
がんばって書かなくては!
* * *
キャッシュレスの話。
「スマートフォンやクレジットカードがなくてもできるキャッシュレスの技術を考えたぞ!」
「それはすごいビジネスチャンスだな。どんな技術?」
「紙を使うんだ」
「紙を使う?」
「そう、紙だよ。偽造困難な印刷技術を使って金額を印刷した紙を製造する。そしてその紙を流通させるんだ!」
「それは紙幣だ」
* * *
ツイート履歴のバックアップの話。
結城は、日々たくさんツイートをしていますが、年に一度くらい「すべてのツイートをダウンロード」しています。ツイートした内容というのは自分にとって重要な情報が詰まっているので、万一アカウントが停止されたり、Twitterのサイトがなくなっても大丈夫な状態にするためです。
すべてのツイートをzipしたファイルをダウンロードするには、Twitterの「設定とプライバシー」メニューからたどって「全ツイート履歴をダウンロードする」でダウンロード申請をします。ダウンロード申請といっても、ボタンを押すだけの簡単なことです。
しばらくするとzipの受け取りリンクがメールで届くのでそのリンク経由でダウンロードを行います。
ダウンロードしたzipを展開すると、ファイルになった過去ツイートをブラウザで読める状態になります。
あなたにとって自分のツイートが重要なものなら、ときどきは全ツイート履歴をダウンロードしておくといいかもしれませんね。
* * *
それでは今回の結城メルマガも、どうぞごゆっくりお読みください。
文章を書き出すためにバランスを崩そう - 文章を書く心がけ
文章の書き出しは難しい。どうせ書くならしっかりした文章を書きたいと思うとなおさら書き出しは難しくなる。なぜなら、文章を書き出すためには「バランスを崩す」必要があるからだ。
例を挙げよう。
多くのことを知っている人がいる。
ほんの少しのことしか知らない人がいる。
このような二つの文を読むだけで、読者の心にはいろんな思いが浮かぶ。「わたしは少ししか知らない」と思う人もいる。「普通に考えると多くのことを知っている方がいいんだけど、実際にはどうなんだろう。数は問題じゃないのではないか」と思う人もいる。
たった二つの文を読むだけで、読者の心は多様な思いで満たされる。この二つの文を成り立たせているのは「知っていることの数」の対比である。ある人は「多くのこと」を知っていて、別の人は「少しのこと」しか知らない。つまりこの二つの文を提示しただけで「知っていることの数を切り口として考えよう」という基準が示されたのだ。
しかし、この基準は恣意的なものだ。書き手はこの基準を切り口として何かを語ろうとする。二つを対比させていることから、読者がどちらか片方に与するのを期待するかもしれない。読者が思ったであろうことに賛同して話を継いでいくかもしれず、逆に読者の発想をひっくり返すことを目指すかもしれない。
基準は無数にあり、切り口は無数にある。何を選んで語り始めるかという判断は書き手のものだから、どうしてもそこには恣意性が入り込む。それはしかたのないことだ。すべての方向に完全な対称性を保ったままではつるつる滑って切り分けることができない。分けることができなければ分かることもない。
完全な切り口は存在せず、完全な文章は存在しない。書き手は思い切ってバランスを崩さないと、文章を始められない。それはちょうど、バランスを崩さないと歩き出せないのに似ている。バランスを保ったままで歩き始めることはできない。
恣意的な基準かもしれない。バランスを崩してしまったと感じるかもしれない。しかし、いったん一歩を踏み出せばそこから話はきちんと展開していく。「次の一歩」を踏み出すきっかけも生まれる。
だから、バランスを崩れるのを恐れてはいけない。むしろ自分から進んでバランスを崩し、思い切って書き始めてみよう。
文章を書こうとするとき、そんなことをよく考える。
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