結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2018年10月23日 Vol.343
はじめに
結城浩です。
いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』が刊行しました!
ありがたいことに、さっそく数学一般書でアマゾンランキング第1位となりました! 応援してくださる読者さんに心から感謝です!
◆『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』
https://bit.ly/hyuki-matrix
今回のテーマは「行列」です。現代の高校生は学校で「行列」を学びません。でも、行列は数学に欠かせないものの一つですし、大学に行ったら必ず線形代数で行列に接することになります。そのときに行列の基本的な概念に親しんでいるのといないのとでは大違い。『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』は数学を楽しむだけではなく、高校から大学へのスムーズな移行にも大きく役立つと思います。
「行列」と並んで重要なのは「線型性」です。これは数学に留まらず、数理分野の至る所に登場する概念ですね。「数学ガール」シリーズでも繰り返し「線型性」については触れてきましたが、特に今回の『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』では、あちこちに登場する線型性を整理し直してまとめています。自信作です!
といっても、難しい本になったわけではありません。いつも通り、数学ガールたちが数学トークを繰り広げ、具体的に数学を楽しんでいます。自分に読めるかなと心配な方のために《Web立ち読み版》も用意しました。第1章がまるまるWebで読めます。もちろん無料。Webブラウザでいますぐ読むことができますのでぜひご覧下さい。
◆《Web立ち読み版》『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』
http://ul.sbcr.jp/MATH-PAwkh
今年は結城が最初の本を出版してからちょうど25年目。今回の『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』で結城の著書はちょうど40冊目となりました(!)。これからも継続的な応援をよろしくお願いいたします。
◆結城浩の著書一覧
http://www.hyuki.com/pub/books.html#pubs
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なぞなぞ。
コーヒーショップで表計算をしています。さてここはどこでしょう。
答えは後ほど。
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パズルゲームの話。
結城はiPhoneでパズルゲームで遊ぶのが大好きで、執筆の合間に頭をリセットするのに使います。最近のお気に入りはCosmic Expressです。
スペースコロニーの中を動かす電車の路線を自分でデザインして、そこにへんな宇宙人に乗せるというもの。空の車両が前に来ると宇宙人がそれに飛び乗る。そして自分の住居を通過すると、そこで飛び降りる。そんなパズルです。難易度もちょうど良くてとても楽しいですね。
◆Cosmic Express
https://cosmicexpressgame.com
パズルゲームを解いてるときに毎度体験することがあります。たとえば、何回チャレンジしても解けない面があるとします。何回続けて繰り返しても絶対解けない。これは難しすぎるよ……と諦めかける。でも、次の日にもう一度チャレンジすると、一発で解ける。こういう体験、本当によくあります。そしてそれはパズルでの経験のみに留まらず、仕事でのヒントにもなります。
うまい解決法が見つからないトラブルにぶつかって、いくら考えても突破口が見つからない。そういうときには続けて考えるのではなく、別な仕事をやってみることが功を奏するのではないかというヒントです。
「あいだを置く」というの、大事なんですよ。
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外でお仕事する話。
結城は毎日カフェでお仕事をしています。
ある日、気分を変えてファミレスで書き物をしていました。するとようすが見えるくらい近くの席で女性が仕事っぽいことをしています。同業者かな、と思いつつちらちらと観察。
どうも、文章書きの人ではなくて漫画家さんのようですね。ファミレスでばさばさと紙を広げてどうやらネームをしようとしているようです。
しかし、なかなか仕事に取りかからず、手にしたスマートフォンでずっとゲームをやっています(手の動きが明らかにゲーム)。
ねえねえ、せっかくファミレスに着地したんですから、ゲームはそろそろ切り上げて、ネームに取りかかりましょうよ!と心の声を送る。
そして気がつく。
結城自身も、せっかくファミレスに着地したんですから、漫画家観察はそろそろ切り上げて、原稿に取りかかりましょうよ!
まったくその通りですね!
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面接官「面接始まるのでスマホはしまってください」
就活生「あっはい。開始…っと」
面接官「どうして机の上にスマホを置いたんですか」
就活生「いえ、大丈夫です」
面接官「どうしてマイクがこっちに向いてるんですか」
就活生「いえ、大丈夫です」
これは、圧迫面接の話題がTwitterで流れていたので想像した小咄です。
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Scannableの話。
iPhoneアプリのScannable(スキャナブル)はすばらしいですね。日々の生活シーンで「10枚くらいの書類をささっとPDFにしたい」というときってよくありますよね。ScanSnapを使えばPDFにできますけど、それすらめんどうなときがあります。ScanSnapが置いてある部屋に行って、電源入れて、コンピュータをつないで……という手間がすでにめんどう。
書類が目の前にあるとき、手元のiPhoneでScannableを起動するだけでさっと撮れる。複数枚を撮影して、ページの入れ換えや切り取り枠の変更もアプリ上でできる。あとはPDFに変換してEvernoteに送る。紙の書類にメモ書きした上でPDFにする場合もあります。手軽でとてもいい。
たとえば、事務的な書類が郵便で届いたとします。「この書類のことはあの人にも送りたい」というときにPDFにしてメールで送る。あるいはまたDropboxに入れて複数人で共有する。あるいはまた純粋に自分の記録用として保存する。そんなときに手軽にPDFにできるのはうれしいことです。
ScannableはPDFでも画像でも保存できます。手書きメモを単に写真撮ると変な陰影がついたり斜めになったりするけど、Scannableではそれを補正して、あたかも白い紙にまっすぐ書いたように直してくれます。それがほんとに便利。そういう機能はScannableに限らず、いわゆる「スキャンアプリ」ならどれでもやってくれる。まったくいい時代になりました。
◆Evernote Scannable
https://itunes.apple.com/jp/app/evernote-scannable/id883338188?mt=8
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現場の話。
先日、自動販売機でコーヒーを買ったとき、BOSSコーヒーのこんなキャッチコピーに目が留まりました。
時代がどうあれ、現場で働く。
これはなかなか渋くてカッコいいですね。コーヒー飲みながら頭の中でこれを改変してみました。こんなふうに。
時代がどうあれ、会社で働く。
「現場」を「会社」に変えただけでキャッチコピーにならなくなりますね。不思議です。「現場で働く」と「会社で働く」では、いったい何が違うんでしょう。
「現場」という単語で思い出すのが「踊る大捜査線」の映画に出てきた有名なセリフです。
事件は会議室で起きてるんじゃない!
現場で起きてるんだ!
というもの。会議室であれこれ議論するんじゃなくて、身体を張って泥臭く動く現場との対比が伝わります。
ところでさらに頭を回転させると「実は、現場というのは多層的に存在するんじゃないだろうか」とも思えます。泥臭く働くという感じの現場だけが現場ではなく、会議室で方針を考えるのも現場じゃないかということです。
誰しも、自分に密接に関係した階層については強い関心を持ちます。そして他の階層で活動している人のことを「わかっちゃいない」と考えがちです。でも、本当にそうなのかな。
会議室で経営者が議論をするのは、現場のことをわかっちゃいないのかもしれないけれど、実は重要な活動のはずです。各階層には各階層の評価基準があり、それを満たしているかどうかで判断すべきなんでしょうね。
……などと思いつつコーヒーを飲んでいました。まあ、やぼな話です。
村上春樹が以前どこかで書いていた「長編小説が自分の主戦場」というフレーズも思い出したり。
他ならぬ、あなたの「現場」はどこでしょう。
* * *
それでは、そろそろ今回の結城メルマガを始めましょうか。
どうぞごゆっくりお読みください。
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そうだ、なぞなぞの答え。
コーヒーショップで表計算をしています。さてここはどこでしょう。
答えは「エクセルシオール(Excelしよーる)」
◆エクセルシオール カフェ
https://www.doutor.co.jp/exc/
目次
- Scrapboxでノートの「死蔵」を防ぐ - 仕事の心がけ
- 数学を好きになるには - 学ぶときの心がけ
- 不登校引きこもりからの大学受験
- 「長い文章が苦手」と言いたくなるときに考えること - 文章を書く心がけ
- 「わからない」とうまく付き合いたい - 学ぶときの心がけ
Scrapboxでノートの「死蔵」を防ぐ - 仕事の心がけ
結城は技術評論社Software Design誌に「再発見の発想法」というコラムを連載しています。この「結城メルマガ」に連載しているものとほぼ同じものになります。
◆再発見の発想法
http://www.hyuki.com/discover/
あの連載は「バッファ」や「トリガー」などといった「技術的なキーワード」をベースにして古くて新しい発想を見つけ出そうという読み物になっています。
ところで、連載コラムのためには普段から題材となるキーワードと、それに関連する話題をストックしておく必要があります。
結城はこの連載コラムのためにずっとEvernoteを使っていたのですが、最近「どうも死蔵しているノートが多いな」と感じることが多くなりました。死蔵しているというのは、ノートに保存したものの、読み返したりそれに書き加えたりすることが少ないという意味です。
Scrapboxは「キーワードごとにアイディアを広げていき、十分に熟成したら文章にする」という目的に最適じゃないか! というわけで、連載コラム用のアイディア出しをEvernoteからScrapboxへ移行することにしました。
結城は連載コラム用に「こういうことを考えたいな」というキーワードのリストを持っています。キーワードだけで中身はありません。そのキーワードを一つ一つ [ ] でくくってScrapboxにペーストするだけで、全キーワードが自動的にリンクになってくれます。そしてScrapbox上でリンクをクリックすると、そのキーワード専用のページが自動的に作られるので、そこに内容をメモしていくのです。ページをざくざく作ってガシガシと書いていくのにScrapboxは便利です。
そんな調子で連載コラム「再発見の発想法」用のたくさんのノートはScrapboxの方に全面的に移行し、EvernoteにはScrapboxへのリンクだけ入れておくことにしました。これからはScrapboxで連載コラムのアイディア出しを行いましょう。
個人利用ならprivateなプロジェクトを無料でいくつも作れるので、複数のプロジェクトで活用しています。たいへんありがたいですね。
◆Scrapbox
https://scrapbox.io
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Vol.342 結城浩/数学ガールの図版をどう作っているか/パソコン買いたい/暗号を学ぶ/再発見の発想法/ゆさぶられない人生/
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Vol.344 結城浩/本当にいい勉強法/書く時間が取れない/思考の瞬発力/