Vol.308 結城浩/やりたいことを見つける/問題解決と他者との関わり - 仕事の心がけ/いまの自分にしか書けない文章/

結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2018年2月20日 Vol.308

はじめに

結城浩です。

いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。

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『数学ガール/ポアンカレ予想』の話。

『数学ガール/ポアンカレ予想』がアマゾンで予約開始になりました!

ありがたいことにアナウンスして一日後、 数学一般書籍でランキング第1位となりました。 みなさんの応援に感謝です!

書籍全体では、 最大瞬間風速で第181位まで上がっていたようです。

またTwitterなどでもたくさんの方が言及してくださり、 結城のアナウンスツイートは、 あっというまにたくさんRTしていただきました。 感謝です!

 ◆『数学ガール/ポアンカレ予想』(アマゾン)
 https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4797384786/hyuki-22/

先週はイラストとカバーの打ち合わせがありました。 「数学ガール」と「数学ガールの秘密ノート」シリーズを、 ずっといっしょに手がけてきたチームで、 久しぶりの本編新刊を喜びました。 何しろ6年振りですからね……

今週末には初校ゲラ(書籍と同じように版組をした紙) がどさっと届く予定。 来月の初めには初校読み合わせになります。

気になっていた大きめの修正は、 先週ほとんど片付いたので、 ここからは細かい部分に注目していきます。

応援よろしくお願いいたします!

 ◆『数学ガール/ポアンカレ予想』
 http://www.hyuki.com/girl/poincare.html

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本で学んだことをブログに書くときの注意点の話。

質問

本から学んだことをブログで発信したいと思っています。

でも著作権のことがよくわかりません。

どのようなことに気を付ければいいでしょうか。

回答

すべてをここに書くことはできないので、 基本的なことだけ書きます。

著作権は「アイディア」ではなく「表現」を守るものです。

著作権は「アイディア」を守るものではないので、 本に書かれている「アイディア」を理解し、 自分の言葉でブログに書き表すのは問題ありません。 ただし、あたりまえですが、 他人のアイディアを自分のものにするわけにはいきません。

著作権は「表現」を守るものですから、 本に書かれた文章をそのままブログに書くことは、 著作権の侵害になります。 ですから、あなたがブログに書くときには、 自分の言葉、自分の表現で書く必要があります。

本の内容をまるまる一冊要約し、 本を読まなくてもすむような記事を書くのは、 翻案と見なされる場合があります。 これは著作権侵害となります。 詳しくは文化庁の以下のページをごらんください。

 ◆最新のベストセラー小説のあらすじを書いて、ホームページに掲載することは、著作権者に断りなく行えますか。
 http://www.bunka.go.jp/chosakuken/naruhodo/answer.asp?Q_ID=0000338

本で学んだことをブログに書く場合、 本に書かれた文章そのものを書きたくなる場合があるでしょう。 その場合には適切な形で「引用」する必要があります。 引用する場合、 今度は勝手に自分の言葉にしてはいけません。

引用の際には、 以下の注意が必要になります(これだけではありません)。

 ・引用元を明確にする。
  (書籍名や著者名など、どこから引用したのかわかるように)
 ・引用範囲を明確にする。
  (カギカッコや引用のマークアップで、どこが引用部分かわかるように)
 ・引用したものが主従関係の「従」になるようにする。
  (文章の大半が引用で、最後に一言感想というのはだめ)

こうすれば大丈夫という保証はできませんが、 以上の点は最低限でも理解しておかなければなりません。

 ◆文化庁「著作権なるほど質問箱」
 http://www.bunka.go.jp/chosakuken/naruhodo/index.asp

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人生における選択の話。

質問

私は目標があり、そこに向かおうと、 険しいとわかっている道を一年前に選択しました。

しかし、一年が過ぎると「苦しいことばかりで逃げたい」 と思うことが多くなってしまいました。

ただの努力不足かもしれませんが、 この状況をどのように乗り越えればいいのでしょうか。

アドバイスがあれば教えてください。

回答

あなたは険しい道とわかってながら、 一年前に大事な選択をしました。

そして一年が過ぎ、 その選択を見直そうとしています。

どちらもすごいことです。 なかなかできることではありません。 私は、えらいと思います。

もちろん私は内容を知りませんので、 「がんばろう」とも、 「逃げた方がいい」ともいえません。 それはあなたが再び選択するしかありません。

考えよう。悩もう。 続けるもよし。 思い切って道を変えるのもよし。 どちらであっても、あなたの貴重な選択です。

選択の結果、 より大変な状況になるかもしれないし、 思いがけず新たな道が見つかるかもしれません。 未来を見通せない人間の身には、 何が起こるかはわかりません。

考えよう。悩もう。 ときには知り合いに相談しよう。 ときには一人でじっくり考えよう。

人生に失敗はありません。無駄もありません。

あなたの選択は、 まちがいなくあなたの人生を切り拓いていくことになるでしょう。

応援しています。

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悩んだときには視点を変えるという話。

私たちはいろんなことに悩みます。 同じことをずっと悩み、考えます。 それでも糸口が見つからないこともよくありますね。

同じことを同じ視点から見ていると、 同じ思考をたどって同じ結論に達するものです。 ですから「視点を変える」のが重要になります。

たとえば、 何かを作成することで悩んだとしましょう。 文章でも、絵でも、あるいはプログラムでもいいです。

典型的な「視点を変える」方法は、 たとえば次のようなことです。

 作成の過程(プロセス)で悩んでいるならば、
 作成した物(プロダクト)に注目する。

 作成した物(プロダクト)で悩んでいるならば、
 作成の過程(プロセス)に注目する。

噛み砕いていうならば、 次のようになるでしょう。

 「どう作ればいいのかなあ」と思うなら、
 「そもそも何が完成すればいいのか/よかったのか」を考える。

 「完成したものの出来が良くない」と思うなら、
 「どんなふうに作るか/作ってきたか」を考える。

「視点を変える」というのはいわば比喩ですが、 おもしろいもので、 その比喩と同じように行動するとうまくいくことがあります。 どういうことかというと、

 ・いつも考えている部屋や場所を変える
 ・家の中にいたら家の外に出る
 ・机の前に置いてある本やものを入れ換えてみる

こんなふうに、自分が「リアルな目で見ているもの」 を実際に変えてしまうのです。そうすると、 悩みごとについての視点も変わってくることが多いです。

ぜひ、お試し下さい。

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難しい文章を読む話。

質問

難しい文章や長い文章を読んでいると、 頭がパンクするような気持ちになり、 どうしても途中で挫折してしまいます。

自分の能力で理解できないような難しい文章や、 長い文章に挑むにはどうしたらいいのでしょうか。

回答

その文章をどうしても読まなければならないなら、 「分割統治」するしかありません。

長い文章を短く区切ります。 自分が理解できるほど小さな部分に分け、 少しずつ攻略していくことになります。

もしも、小さな部分に分けても攻略できないなら、 大きな全体を攻略するのは無理ですから。

小さな部分に分けても攻略できないなら、 もっと小さな部分に分けます。 もしかしたら、 最後は「単語一つ」になってしまうかもしれませんが、 とにかく小さな部分に分けることを意識します。

各部分の攻略ができたなら、 今度はその理解を組み上げていきます。 各部分の理解を組み上げていき、全体を理解していきます。

そのような読書と理解のプロセスは、 当然ながら一筋縄ではいかないでしょうし、 時間が掛かるはずです。 すらすら読めないような難しくて長い文章に挑戦しているのですから、 あたりまえのことですね。

分割統治をうまく進めるためには「読む」だけではなく、 「書く」ことも必要になるでしょう。 目の前の文字をじっと見つめるだけではなく、 自分の理解を書き留めたり、図にして考えたりするということです。

理解していない状態で書くわけですから、 最初から完成品を書こうと思わない方がいいです。 完成品を書こうとすると書く手が止まりがちですから。

そうではなく、 自分の理解を補助するために書くことを意識しましょう。 「こういうことかな? あ、違うな」 という繰り返しを恐れないということです。

難しくて長い文章を読んで理解するというのは、 森を通ったり、迷路を抜けたりするようなものです。 自分がたどった道を記録しておき、 まちがった方向にいったら後戻りするのは当然です。

がんばってください!

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それではそろそろ、 今回の結城メルマガを始めましょう。

どうぞ、ごゆっくりお読みください!

目次

  • はじめに
  • やりたいことのある人がうらやましい - Q&A
  • 問題解決と他者との関わり - 仕事の心がけ
  • いまの自分にしか書けない文章を、書こう! - 文章を書く心がけ
  • おわりに