結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2017年9月26日 Vol.287
はじめに
おはようございます。結城浩です。
いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。
* * *
びっくりした話。
結城は、金曜日更新のWeb連載を木曜日に書きます。
木曜日の朝。「さてこれから書くぞ」と、 結城はMacのEvernoteアプリを開きました。 そこには連載内容のメモが書いてあるからです。
ところが、 そのメモの内容をファイルに移そうとして、 うっかり削除してしまいました。 しかも、何か誤操作をしてしまったのか、 アンドゥも効きません!
ノート全体を削除したのなら「ゴミ箱」に入るのですが、 今回はノートはそのままで、 書かれているテキストだけが失われた状態です。
これは、まずい!
頭の中で緊急サイレンが鳴り出したような状態になり、 必死で対策を考えます。
結城は急いで手元のiPhoneを「機内モード」にしました。
これでiPhoneのEvernoteアプリの状態が保全されます。 「機内モード」にすれば通信が行われません。 ですから、EvernoteサーバとiPhoneの同期を防ぐことができ、 ひいてはiPhone内にまだ残っていたメモも削除されずに残るのです。
これで一安心。
焦りながらも、 iPhoneに残っていたメモ書きを別途コピーして、 無事に復旧することができました。
とっさに機内モードにした私、えらいぞ!
それにしても焦りました…… もちろん、バックアップは別途取っていますから、 ほんとうにどうしようもなくなったら、 バックアップから復旧することは可能です。 でも「さあいまから書くぞ!」というときに、 そんな作業をしていたら時間を食ってしまいますし、 何よりやる気が削がれてしまうでしょう。
ああ助かった……
ちなみに、後ほどフォロワーさんから、 Evernoteプレミアム会員には、 ノートの「履歴」をたどる機能が提供されているので、 それを使っても復旧できたはずと教えていただきました。 なるほど!
* * *
パスワードの話。
ネットで各種サービスを使うとき「パスワード」の管理は欠かせません。 多くのサービスがあり、それぞれにパスワードが必要になりますから、 必然的に多くのパスワードを管理する必要が生じますね。
結城自身も自分のパスワードを管理しています。 自分で心がけていることはおおよそ以下のことです。
・暗記できるほど単純なパスワードは使わない。
・パスワードの使い回しをしない。
・大切なサービスでは非公開メールアドレスを使う
「暗記できるほど単純なパスワードは使わない」 というのは奇妙に聞こえるかもしれませんが、 結城は大事なことだと思っています。 単純なパスワードを使うなとはよく聞きますが、 じゃあどれほどなら単純なのか。 その目安として結城は「暗記できたらだめ」 と思っているのです。
乱数をもとにして複雑なパスワードを作り、 それを紙に書いて、物理的な鍵と同じように扱う。 というのが結城が選んでいる方法です。
利便性を考えると、 パスワード管理ツールのようなものを使う方が一般的かもしれませんが、 そのツールが破られるととても恐いのでなかなか難しいところです。
「パスワードの使い回しをしない」 というのは当然のことです。 あるサイトのパスワードが何らかの理由で破られたときに、 他のサイトまで破られる危険性がありますから。
「大切なサービスでは非公開メールアドレスを使う」 というのはパスワードとは直接関係ありませんが、 大事なことだと思っています。
多くの知人や友人が知っているメールアドレスは、 世の中に広く知られた情報です。ということは、 そのメールアドレスが攻撃の足掛かりになりうるということです。
非公開までいかなくても、 「メールアドレスを知っている人をできるだけ少なくする」 のはよい心がけだと考えています。 それによって、攻撃を受ける可能性を減らすことができるからです。
さて、先ほど結城は 「暗記できるほど単純なパスワードは使わない」 という話をしました。以下はそれとは別の話題です。
パスワードを直接覚えるのではなく、 「エピソード記憶」をもとにして強いパスワードを生成する、 EpisoPassというシステムを考えている人がいます。 日本語入力支援システムPOBoxを開発した増井俊之さんです。
EpisoPassは個人的な「エピソード記憶」をもとにしています。 「エピソード記憶」を使えば、決して忘れることがなく、 しかも強いパスワードを生成できるとのこと。 興味のある方は以下をごらんください。
◆EpisoPass - 記憶からパスワードを生成
https://episopass.com
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アイコンの話。
先週の結城メルマガで、 everという自分専用のEvernoteクライアントを作る話を書きました。
ever.hyuki.net というドメインのWebアプリなので、 iPhoneのSafariから「ホーム画面に登録」をすれば、 ほんとうのアプリ(?)っぽくなります。
その際に、以下の図に示すような、 apple-touch-iconという値を持つリンクを作っておくと、 Webアプリのアイコンとして画像を登録できます。
この機能を利用し、 「Webアプリを作ったぞ!」という気分を盛り上げるため、 everのアイコンもデザインしてみることにしました (仕事の逃避って、どうしてこんなに進捗がいいのでしょうか……)。
結城はあまりデザインに自信がないので、 緑色の単色背景に「E」という一文字を置いたデザインにしました。 何回か試して、どうもさびしいので、 背景の単色にわずかなグラデーションを入れてみました。 さてどうでしょう。ちょっとWebアプリっぽくなってませんか。
自分で作ったものでは「自作バイアス」 が掛かってきれいにみえるものです(我が子がかわいいの原理)。 でも、他のアプリと並べてみると、 「うーん、世の中のデザイナーさんはすごいなあ」 と改めて思います。
試しに「アイコン デザイン コツ」を検索して、 出てきたブログ記事を読んでみました。 するとそこにはズバリ、
単色の背景に一文字というデザインは
ユニークさを求めるのであれば避けた方がいいでしょう
と書いてありました。 はいっ、私、いまそれやったばかりです!
◆プロが教える最強のアイコンデザインの作り方
Growth Hack Journal
https://growthhackjournal.com/how-to-make-better-app-icon/
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《黄金の時間》の話。
『数学ガール6』を書いています。 先日第4章をレビューアさんに送り、第5章を進めているところです。
ある日のこと、急いで返事すべきお仕事メールがありました。 午前中を使って項目の整理を行い、文章に仕立てて無事に送信しました。
午後になって「さて『数学ガール6』に取りかかろう!」と思いましたが、 どうにも頭が動きません。頭が動かないことには手も動きません。 無理矢理一時間ほど作業を進めましたが、どうもだめでした。
結城の場合、じっくりと文章を書き進めるのは、 午前中でないとだめなようです。 具体的には、午前9時から11時までの時間です。 以前からその時間のことを、
《黄金の時間》
と呼んでいましたが、久しぶりにそのことを実感しましたね。 《黄金の時間》とは、一番仕事がはかどる時間。 自分の頭がうまく回る時間のことです。 「ガチで書く」のは午前中に限るのです。
その日は頭がもう回らず文章を進めるのが難しいので、 周辺作業を進めました。 たとえば、Evernoteのノートを順に見ていき、 タグを付けたり原稿ファイルに写したりという作業です。 頭がそれほど回っていなくても進められる作業。 次の《黄金の時間》がやってきたときに、 効率よく作業を進めるための準備ということもできるでしょう。
《黄金の時間》をうまく使うと満足度も高くなり、 次の一歩を進むモチベーションも上がります。
「自分にも、きっとできる」
という手応えを得ることができるからです。 進捗をしっかり出していくために、 《黄金の時間》をしっかり死守していきたいものです。
あなたには《黄金の時間》はありますか?
* * *
それではそろそろ、 今回の結城メルマガを始めましょう。
どうぞ、ごゆっくりお読みください!
目次
- はじめに
- 箇条書きが生む信頼関係 - 仕事の心がけ
- 数学の問題に立ち向かうことの意味について
- 自分自身を「ほめて育てる」 - 教えるときの心がけ
- おわりに
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Vol.286 結城浩/自分専用のEvernoteクライアント/価値観と《自分への適用》/
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Vol.288 結城浩/マストドン/女性ヴォーカル/優秀なプログラマ/文章が完成間近になったときに感じるつらい気持ち/