結城浩の「コミュニケーションの心がけ」

Vol.254 結城浩/複数の本を並行して書く/書くことを通して、楽しみつつ学ぶ/

2017/02/07 07:00 投稿

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Vol.254 結城浩/複数の本を並行して書く/書くことを通して、楽しみつつ学ぶ/

結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2017年2月7日 Vol.254

はじめに

おはようございます。結城浩です。

いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。

 * * *

『数学ガール6』の話。

第3章の苦戦は続いています。 そんななか、編集長と打ち合わせをして、 『数学ガール6』よりも『数学ガールの秘密ノート9』 の刊行を先行させることにしました。

先週はレビューアさんに、 その旨をお知らせするメールも配信しました。 仕切り直してスケジュールも組み直しです。

『数学ガールの秘密ノート9』のテーマは「積分」。 副題は「積分を見つめて」になる予定です。 『数学ガールの秘密ノート5』で「微分」はすでに書籍化してあるので、 二冊合わせて「微分&積分」のセットができるのです。

昨年11月ごろの私は、 「積分を見つめて」に関する作業をだいぶ進めていました。 昨年の自分からバトンを受け取った気分ですね!

本の予定をリスケジュールするのは心苦しいものですけれど、 とにかく本書きは長期勝負。 うまく仕切り直して再起動を掛けましょう!

 * * *

体調不良の話。

そんなこんなでバタバタしているうちに、 体調不良になってしまいました。 少し熱が出て数日寝込みました。

 ◆ねつあがった(イメージ図)

2017-01-31_fever.jpg

「がんばらねば!」などといっても、 体調を崩しては何にもなりませんね。 今回は睡眠不足が続いたことが特に効いてしまったようです。

睡眠重要です。

 ◆イラストで追う、2017年1月末の体調不良
 https://twitter.com/i/moments/808470529686446080

こんなイラスト描いてないで寝てろってことですよね……

 * * *

『数学文章作法』セールの話。

Kindleで『数学文章作法』がポイント還元セールです。 『基礎編』と『推敲編』のどちらも20%ポイント還元とのこと。 フェアは2017年2月16日までなので、どうぞご活用ください。

 ◆『数学文章作法 基礎編』Kindle版
 https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00O9YUJUE/hyuki-22/

 ◆『数学文章作法 推敲編』Kindle版
 https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00UWBR406/hyam-22/

 * * *

格安SIMの話。

ymobileのPocketWiFi(モバイルルータ)をずっと使っていたのですが、 最近、電源コネクタの接触が悪くなり、不便になってしまいました。

この機会にアップグレードしようかなと思ったのですが、 新たに「二年縛り」をするのもちょっと気が進みません。

Twitterでいろんな方から意見をうかがった結果、 この機会にいわゆる「格安SIM」というものを試してみようと思いました。

複数人からオススメされたので、 SIMは「IIJmio タイプ D データ通信専用 SIM 10GBプラン」を、 モバイルルータは「NECプラットホームズAterm MR05LN」を、 それぞれ使ってみることにしました。

店頭にまったく行かずネットだけで「えいや!」と購入。 数日後に機材が自宅に届きました。

(「えいや!」というのは大げさですけれど、 気分的にはまさにこういうかけ声をかけています。 自分でやったことがないのを最初にやるときって、 そういう気分になりませんか。 インターネットプロバイダに申し込むときとか、 スマートフォンを最初に買うときとか、 新しいサービスを使ってみるときとか……勢いって大事です)

さて、送られてきたnanoSIMを、送られてきたAtermに挿して、 ちょこちょこ設定。 小一時間でネットが使えるようになりました。 特にトラブルはなく、あっけないほどでしたね。 ネットで購入の情報をくださった方々に感謝です。

今回の結城メルマガも、 カフェで執筆&配信手続きしているので、 この新たなネット環境で配信準備していることになります。

ちなみに、届いたルータを設定するときって、 マニュアルを「読まない工夫」がいると感じました。 ていねいなマニュアルはありがたいのですが、 大量の細かい手順を読んでいるうちにいやになってくるんですよ。

マニュアルから、 自分に無関係なところを見つけて効率よく飛ばす工夫をしないと、 肝心の作業までたどりつくまでに嫌になってしまいます。 細かい情報まで具体的に書くのは確かに大事ですけれど、 メリハリというものも必要です。

何年か前にセットアップした或る機器では、 マニュアルの最初に、

 「わかっている人は以下の情報だけでつなげるはずだよ。
  がんばって!」

と書かれたコーナーがありました。 あれはたいへん便利でしたね。

ともあれ、モバイルルータが格安SIMになり、 これで「二年縛り」から解放されました。

 * * *

「あなたという個人」の話。

先日、こらっぴさん(@colappy)がこんな動画を紹介していました。

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 生徒一人ひとりにオリジナルのハンドシェイクをして
 教室に迎え入れる先生。
 これをやることで授業に活気が出るそう。
 いい先生だなあ。記憶力もすごい。
 https://twitter.com/colappy/status/827402424801337344/video/1
 --------

教室の入口に先生がいて、 生徒は一列に並び、 入室前に先生と一人ずつ「オリジナルのハンドシェイク」をする。 ときにはゲンコツを合わせるfist bumpをしたり、 あるいは二人でシンクロして腰を振ったり。

一人一人のアクションが違うのがすごいですね。 動画で待っている子供達もニコニコとうれしそう。

結城は動画を見ながら、「これって、

 《あなたのことを個人的に知ってます》

というメッセージだな」と思いました。

十把一絡げとして生徒を扱うのではなく、 個性のない製品のように生徒を扱うのでもない。 マニュアル化された対応でもない。

ひとりひとりが違う存在で、 その違いを認めつつ、 あなたのことを大事にしてますよ…… ということが理屈抜きで伝わる。 そんなメッセージを感じます。

先生は先生でいそがしいので、 こういう取り組みをすべての先生がやれ…… というわけにもいかないでしょう(先生も多様ですし)。 でもこの「あなたという個人」を大切に扱う姿勢は、 とても重要かもしれないと思いました。

そういえば、 カーネギーの『人を動かす』という有名な本には、 「当人の名前を呼ぶことの大切さ」が書かれていました。

 他のどこにもいない、あなた。
 他のだれでもない、あなた。

私がいま接しているあなたは、 他の人と交換不可能な、かけがえのない、あなた。 そんなメッセージを送るには「名前を呼ぶ」ことが大事です。 映画『君の名は。』も思い出しますね。

 * * *

正規分布の話。

Facebookで教えていただいた話題を脚色してご紹介。

ときどき「得点が正規分布に近くなるのはよい試験」 という主張をする人がいます。 でも、必ずしもそれは正しくありません。

先生が「あまりにもわけのわからない試験」を出したならば、 生徒はみんな当てずっぽうで答えることになるでしょう。

そうすると、解答する行為はまるで「コイン投げ」のようになり、 その結果、得点分布は正規分布に似た形(二項分布)に近くなるでしょう。

ですから、得点の分布が正規分布に近いことのみで、 よい試験かどうかを判断することはできません。

統計的な話というのは、 誤解を生んだり人を欺いたりすることがよくあります。

たとえば、年収を考えるときには、 「平均値」ではなくて、 「中央値」を考えた方が適切な場合が多いですね。 年収は極端に大きな人がいるので、 平均値では全体像を知るのに不適切なことが多いのです。

「偏差値」もよく誤解されます。 偏差値は二つの試験結果を比べることができる、 と言われることがあります。 でも、二つの試験を受けた生徒集団がまったく違うとき、 偏差値を比べることには意味がありません。

表計算アプリがあれば、 統計量を正しく計算することは難しくないでしょう。 でも、統計量を「正しく計算できるか」と、 統計量を「正しく解釈できるか」はまったく異なる話です。

そして、正しく解釈するのは、 想像以上に難しいことなのです。

 * * *

亜人(デミ)ちゃんの話。

毎週日曜日の夜、 アマゾンプライムビデオで「亜人(デミ)ちゃんは語りたい」を観ています。

先週の第5話「雪女ちゃんは冷たい」もおもしろかった! それほど派手じゃないし、ほんとに静かなエピソードなのですが、 ていねいに描かれていてたいへん好感が持てます。

今回は「自分を理解する」ことの大切さを感じました。 雪女の雪ちゃんは、自分の能力がよくわからず不安。 何が起こるか予測できないため、人付き合いを避ける。 自分はどういう存在なのか、そこに未知数が多すぎると不安になり、 他者(友人)との関わりもぎこちなくなる。 あるいは関わることを恐れるようになり、 その態度がさらなる誤解を生んでしまう……そんな、 若い人の心の動きを感じることができ、よいお話でした。

この物語で特にいいのは、 デミの女の子たちと先生とが、きちんと対話できている点です。 あまりにも理想的すぎるきらいはあるのかもしれませんが、 でもこの空間はとても心地よい。 その心地よさの根底には「他者への愛に満ちた対話」があるように思います。

タイトルの「……語りたい」は大事な意味を持っているのですね。

来週も楽しみです!

 ◆『亜人ちゃんは語りたい』(Kindle版)
 https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00U23WV3E/hyam-22/

 ◆TVアニメ『亜人ちゃんは語りたい』第3弾PV
 https://youtu.be/v1FaOeclBp0

 * * *

それでは、今回の結城メルマガを始めましょう。

どうぞ、ごゆっくりお読みください!

目次

  • はじめに
  • 数学の問題に挑戦しよう!(問題編)
  • 書くことを通して、楽しみつつ学ぶ - 文章を書く心がけ
  • 複数の本を並行して書くコツは? - Q&A
  • 数学の問題に挑戦しよう!(解答編)
  • おわりに
 

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