Vol.226 結城浩/『読み・書き・自己言及』 - 結城浩ミニ文庫/どうしてあの人は/教えるときの心がけ/

結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2016年7月26日 Vol.226

はじめに

おはようございます。

いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。

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特別授業の話。

この結城メルマガが配信される火曜日に、 結城はある中学校で特別授業(講演会)を予定しています。 人前で話すのは年に一回か二回ほどのことなので、 少し(かなり)どきどきしています。

飛行機に乗るのも久しぶりで、 乗り遅れたらどうしようなどと子供のようなことを考えています。

 ◆飛行機に乗ります(「いらすとや」のイメージイラスト)

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講演会は書籍を書くこととずいぶん違いますので、 その準備の中でいつもと違う学びがあります。 どんなときでも「人に何かを伝えよう」とするときには、 学びがあるものです。なぜなら、人に何かを伝えるためには、 その「何か」のことをよく理解している必要があるためです。

しっかり伝えようと願えば願うほど、 その気持ちは「何か」を深く理解しようという気持ちへつながっていきます。 深く理解しようという気持ちが、学びを生まないわけがありません。

広い意味での「熱意」といえます。

特別授業の様子は、スライドつきの読み物に変換して、 後日この結城メルマガで配信する予定です。 これまでも、

 「数学ガールの特別授業」

として何回か配信してきました。 どうぞお楽しみに!

 ◆数学ガールの特別授業
 http://www.hyuki.com/girl/lesson.html

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重版出来の話。

先日、出版社より、 『数学ガールの秘密ノート/式とグラフ』の増刷決定の連絡がありました。 いわゆる「重版出来(じゅうはんしゅったい)」の連絡ですね。 読者さんの継続的な応援に感謝です!とってもうれしいです。

 ◆『数学ガールの秘密ノート/式とグラフ』
 http://note1.textfile.org/

「重版出来!」のドラマで、

 「重版出来は、本に関わる人みんなが幸せになれる言葉」

という主旨のセリフがありました。私もそう思います。 自分の本の重版出来はもちろんうれしいですけれど、 他の人の本の重版出来を聞いても、とてもうれしいですね。 思わずにこにこしてしまうニュースです。

重版出来は「版を重ねる」ということですが、 「刷(すり)を重ねる」という方が実際に近いでしょう。 第1版が第2版になるわけではなく、 第1版第1刷が第1版第2刷になるということですから。

一回の刷り部数は本によってさまざまですから、 刷数が多い方が出版部数が多いとは限りません。 「なんとすでに○○刷突破!」という宣伝文句だけで、 何部売れたかまではわからないのです。

しかし、それでも重版出来のニュースはうれしいものです。 「本が売れている・本を買う人がいる・本を読む人がいる」 ということが集約されている言葉だからなのかもしれませんね。

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文章を書く話。

結城は「文章を書く」ということについて、いつも考えています。

 ◆文章を書く(「いらすとや」のイメージイラスト)

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どうして文章を書くことについていつも考えているかというと、 それが「考える」に直接的に結びついているからだと思います。 誰しも毎日いろんなことを考えますよね。 見たものについて、聞いたことについて、感じたことについて。

結城の場合には、その「考える」というプロセスと、 「文章を書く」というプロセスが分かちがたいほどに絡み合っています。 そういう人は少なくないはずです。 文章を紡ぎながら、ああかな、こうかな、と考えているのです。

プログラミングのときもそうですね。考えながらプログラムを書く。 書いているうちに、自分の考えていることが明確になり、 不思議な感慨に至る。

 「ああ、私が考えていたことは、こういうことだったんだ」

文章でも同じことが起きます。考えながら文章を書き、 考えるために文章を書いているうちに気付く。

 「ああ、私が考えていたことは、こういうことだったんだ」

変な話ですよね。自分のことなのに、改めて書かないことには、 自分が何を考えていたのかわからないなんて。 あなたはそういう経験はありませんか。

頭の中で考えているというのは、 考えることの途中の段階にすぎないんじゃないでしょうか。 書き上げてはじめて、考えるという行為が完成する。 いや、もっとかな? 書き上げて、人に伝えて、そして人に伝わって、 はじめて完結するのかもしれません。

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縦書きと横書きの話。

先日、村上春樹の文庫をKindleで読んでいて、 何となく横書きで読みたくなりました。 固定レイアウト型ではなく、リフロー型でしたから、 横書きに切り換えることができてもよさそうですが、 どうもできないみたいです。

 ◆『風の歌を聴け』(村上春樹)
 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B01G6MF4J2/hyam-22/

iPhoneのKindleアプリで読むとき、縦書きより横書きの方が読みやすく感じます。 視線の動きが少ないからかもしれませんし、 横書きに慣れているからかもしれません。 何しろ、いまや私が読むもののほぼすべては横書きですからね。

紙の本だったら縦書きでもいいのですが、 iPhoneで読むなら横書きの方がしっくりくるようです。

あなたはいかがですか。

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Webページの見え方の話。

結城はふだん小さなWebサイトを作って遊んでいます。 だいたいは自分がユーザなのですが、 公開しているWebサイトは他の人もアクセスします。 そうすると気になるのが、 「他の人にはどう見えているんだろう」ということです。

Twitterのフォロワーさんから、 NetRendererというサイトを教えていただきました。 指定したURLをWindowsで見たらどのようになるかという、 まさに結城が求めているようなサイトです。 たとえば、結城のWebサイトトップページの見え方は、 このように違います。

 ◆Windowsで見たトップページ(NetRenderereによる)

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 ◆Macで見たトップページ(MacBook Safariによる)

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だいたいのレイアウトは同じですが、 フォントの違いで印象は少し変わりますね。

 ◆NetRenderer
 http://netrenderer.com/

その他に、Microsoftが提供している同様のページも教えていただきました。

 ◆Browser screenshots
 https://developer.microsoft.com/en-us/microsoft-edge/tools/screenshots/

こちらも、URLをいれるだけで、 OSとブラウザでの見え方の違いがわかるようになっています。

結城はMacとiPhoneで見ているので、 WindowsユーザやAndroidユーザにどう見えているのが気になります。 こういう気持ちも《読者のことを考える》の一つなのでしょうか。

それにしても「こういうの、ほしいな」 と思うツールがすでに存在しているのは、 驚くと共にありがたいことですね。 それにすこし「ほっ」とします。 それは、自分が考えることが見当違いでないと気付くからです。

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時間の話。

先日 @key1jp さんのこんなツイートを読んで感動しました。

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 https://twitter.com/key1jp/status/750174169086636033
 息子は年齢を聞くみたいに「パパは今何時?」「ママは今何時?」って
 個別に聞くんだけど、ああ、時間がすべての人に共通に流れるって
 前提がないんだなーと思うとなんか宇宙が見えた
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これを読んで感動した理由はいろいろあります。 一つはこのような「各人が時間を固有に持っている」かのような 息子さんの言葉に。

また、その息子さんの行動を 「時間がすべての人に共通に流れるって前提がない」 と表現した @key1jp さんに。

それから結城は「でも、私たちは本当に共通の時間を生きているのかな」 と考え始めました。たとえば、基本的な話として「時差」がありますよね。 海外と日本とでは時刻が異なります。海外とやりとりをしている人は特に、 時差を意識して活動していると思います。

さらに「同じ時間を過ごす」ってどういうことなんだろう、 とも考え始めました。好きな人とデートして、 同じ場所で時間を過ごすのは楽しいものです。 そしてそれは確かに「同じ時間を過ごしている」感覚があります。 でも、現代では遠くの人とチャットしたり、ゲームしたり、 物理的な制約からは自由になっています。 だから、必ずしも物理的に同じ場所にいる必要はありません。

さらにいうなら「古い本」を読むとき。 すでに著者はこの世にいない。でもその本の中では言葉が生きていて、 読んでいる自分に強く語りかけてくる。 まるで同じ時間を過ごしたかのような気持ちになることは、 決してめずらしくありません。

先日の @key1jp さんのツイートから、 そんなことを考えて、私はとても豊かな時間を過ごしたのでした。

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「作戦」の話。

最近、一週間単位で自分の「作戦」を考えるのが好きです。 最初はただの「目標」にしていたのですが、 ある方から「ガールズ&パンツァー」に出てくる「作戦」みたいですねと言われ、 それから「作戦」と呼ぶようになりました。

たとえばある週は「わざとゆっくり作戦」を掲げました。 その週は何かにつけて「わざとゆっくり」するという作戦です。 文章を書くときに、あわてて手を動かさない。 まずはゆっくり考える。ゆっくり考えて、 自分の「手」が書きたがったとしても、すこし焦らす。 そのくらいゆったりと時間を掛け、そこから書き出す。

作業を切り換えるときもそうです。 作業Aが終わってすぐに作業Bを始めない。 作業Aが終わったらゆっくり作業Aでやったことを振り返る。 少し休憩する。そして作業Bに移る。 それが「わざとゆっくり作戦」なのです。

「わざとゆっくり作戦」の他に、 「背筋をピンと作戦」や「まずは、深呼吸作戦」 をこれまでに実行してきました。 何だか子供みたいな話ですけれど、 こういう「作戦」を自分で決めてそれを守るのは、 意外におもしろいものですよ。

あなたは今週、どんな「作戦」で行きますか。

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では、今週の結城メルマガを始めましょう。

どうぞ、ごゆっくりお読みください!

目次

  • はじめに
  • 『読み・書き・自己言及』 - 結城浩ミニ文庫
  • わかりやすい説明 - 教えるときの心がけ
  • どうしてあの人は、私が思ったように動いてくれないんだろうか
  • おわりに