兵頭新児の女災対策的随想

夏休み千田有紀祭り(第二幕:ゲンロンデンパ さよなら絶望学問)

2013/08/02 19:31 投稿

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 ワックワクのテッカテカ 捏造放題やってもいいっすか?
 KYに噛みついて 引っ掻き回してウププのプ
 悪びれずにブロ荒らす エクストリームなフェミクマ音頭♪
 というわけで前回に引き続き「千田有紀祭」です!!
 今回は第二弾。
 先に採り挙げた『女性学/男性学』に加え、『ジェンダー論をつかむ』、『喪男の社会学入門』などから、師匠の考えを探っていくことにしましょう。

*     *     *

ゲンロンデンパ さよなら絶望学問

 ――ぼくの名は怒シンジ(声:緒方恵美)。
 超高校級の不運の持ち主。
 ある日突然、入学した者が将来を約束されるという、フェミヶ丘学園への入園案内を手にし、こうして喜び勇んでやってきたわけだが……。
???「ようこそフェミヶ丘学園へ。ぼくは学園長のフェミクマ(声:大山のぶ代)です。ぐふ↑ふ↑ふ↑ふ↑ふ↑ふ↑ふ↑」
シンジ「何だ君は?」
???「そうよそうよ! バカにしてんの? あんたみたいなのが学園長!?」
 入学案内を受け取ってやってきた、ぼく以外の生徒たちもアゼンとしている。
フェミクマ「そうですよ。一見愛らしいクマのぬいぐるみをあしゅら男爵風の雄雌ハーフにしたような姿をしたぼくが学園長ですよ?」
シンジ「そのフェミクマとやらがぼくたちをこの学園の生徒に選んだ理由は?」
フェミクマ「はい、ここでオマエラには、討論形式でフェミニズムを学んでもらいます」
 その言葉に、不良がかった生徒がいきり立つ。
???「あぁ? 何だよそりゃあ?」
フェミクマ「何だよとは何だよ? オマエは超高校級のAV監督・爆尿英武威太(ばくしーしーえーぶいた・声:櫻井孝宏)ですね?」
爆尿「おぉ、そうよ! フェミはポルノを否定しているんだ! そんなヤツと組めるかよ!! ぐわっっ!!」
 突然英武威太の立つ床下から槍が突き立ち、その身体を貫いた。
フェミクマ「えくすとりーむ! フェミニズムへの誹謗中傷を並べた者に対しては、厳しいおしおきが待っています。そんな公正な条件下で、オマエラはフェミニズムの神髄が学べるのです。ドッキドキのテッカテカだよね」
 おびただしい血を流しながら息絶える英武威太を前に、一同が戦慄する。
???「フン! 知りもせずフェミニズムを否定するとは愚かな男でござるな。これじゃ死ぬのも自業自得でござろう」
 デブ――と言うよりは球形に近い体格の眼鏡の男が冷笑する。アキバ系のブロマガを運営する超高校級のアルファブロガー・御宅山同人男(おたくやまどうじんお・声:山口勝平)だ。
シンジ「そんな!」
 ぼくは思わず彼へと食ってかかった。
シンジ「殺されて自業自得ってことはないだろう!? そんなの非道いよ!!」
 と、そこへ。
フェミクマ「よろしい! それでは第一回フェミ裁判のテーマはこうしましょう! 『フェミニストはオタクの敵か、味方か』!!」
 フェミクマの声で、フェミ裁判は開始された――。

 フェミ裁判開廷!!
 テーマ『フェミニストはオタクの敵か、味方か』

 議論開始!!

御宅山「フン! 『フェミニストはポルノを否定している』など、あぁいったミソジニストの陥りがちな過ちでござる。拙者はオタクの中では珍しいフェミニズムに対して親和的な考え方の主である故、フェミニズムは決してオタクの敵ではないことを、もっと多くのオタクが知るべきと、かねてより考えていたのでござるよ」
シンジ「それはヘンだよ。フェミニズムにとってポルノは女性差別であるのは常識なんだから」
御宅山「貴君はもう少し常識を疑ってみた方がいいでござるな。見たまえ、このリンクを!」

「うぐいすリボン 堺市立図書館BL小説廃棄要求事件を振り返る(http://www.jfsribbon.org/2012/10/bl.html)」

「フェミニズムは敵ではありません」と、ジェンダーの話題を怖がるオタクたちへのメッセージを、 印象的な言葉で語っていました。

上野は一貫して「表現の自由」擁護の立場。「想像力は取り締まれない」と壇上で発言したら拍手を受けた。

御宅山「――とあるでござろうが!! ちなみにこの上野というのは上野千鶴子教授。そう、日本のフェミニストの代表選手とも言える彼女がこう言っているのでござるよ!」
???「オタクたちがジェンダーの話題を怖がってるっていう前提も意味不明だけど……」
御宅山「君は超高校級の腐女子、腐女川文学子(声:沢城みゆき)!」
腐女川「ひっ!? そ……それがどうしたって言うのよっ!?」
御宅山「男性ジェンダーを風刺するBLを描く腐女子と異なり、男オタクどもはそうした女性たちを恐れ、それ故に二次元に走っているのでござるよ!! 貴君は腐女子なのにジェンダーに対する認識が遅れているでござる!!」
腐女川「ひっ!? そ……そういうの止めて……あたし、確かに腐女子だけど、フェミのケはないのよ!」
御宅山「ふん! 使えない腐女子でござるな……ついでだ、これも見るでござるよ」

「上野千鶴子さんインタビュー@韓国・IF(http://wan.or.jp/group/?p=366)」

「まずポルノはそれを不法化しても抑えることができません。そして私は『ポルノは理論であり、レイプは実践』だというマッキノンの主張に同意しません。インターネットであれ、DVDであれ、バーチャルな性的表現物をたくさん消費する男性が、実際の性生活で必ずしも積極的ではないという調査結果があります。」

御宅山「わかったでござるかな? マッキノンというのは過激なラディカルフェミニストで、ポルノの法規制を訴えた人物。確かにこうした行きすぎたフェミニストがいるのも事実でござる。が、上野教授がこのように言っている以上、フェミ全体がポルノを否定しているという妄言は、信じられないでござるな。とにかく以上、証明終了でござる!!」
 あれ……? あの人の発言っておかしいよな……ぼくの知っている事実と明らかに矛盾する……。

 論破!!

シンジ「それは違うよ! ちょっと待って御宅山君、これを見てよ」

「上野千鶴子氏 売春は強姦商品化でキャバはセクハラ商品化(http://www.excite.co.jp/News/society_g/20130609/Postseven_191042.html)」

 対価を払って同意を得ているから買春してもいいという人がよくいるが、カネを払えば女性の身体を自由にしていいのか。資本主義だって何でも商品にしていいわけではない。

やはり、風俗は完全になくすべきだという結論以外にない

シンジ「こうしたことを言う人が、果たして表現の自由を認めているのかな? だって、漫画やラノベは置くとして、売買春を全面否定するのならAVや何かだって、『完全になくすべきだという結論以外にない』はずだよ。AVなんて、“売買春記録物”でしかないんだから」
御宅山「む……! 貴君はそれでもオタクでござるか!? 惨事女に見切りをつけ、二次元の世界に旅立った選ばれし者、それがオタクでござる!!」
シンジ「いや……ぼくはオタクじゃないし……て言うか、頼まれもしないのにござるござる言ってる君も、オタクにはあんまり見えないんだけど――」
腐女川「自分たちのルールを非オタにまで押しつけないで欲しいわね……」
シンジ「そうだよ。オタク以外はどうなってもいいって言うの?」
御宅山「ぐ……ぐぅぅぅっっ!」
腐女川「何? オタ山もうダウン?」
御宅山「お……御宅山でござる! 君、失敬でござろう!!」
フェミクマ「あぁもう! しょうがないなあ、御宅山クンは!」
 苛立ったように、今まで立会人に徹していたフェミクマが立ち上がった。
フェミクマ「いいかい? 上野千鶴子教授は時と場合で言うことがころころ変わることが、よく指摘されている人物なんですよ?」
シンジ「だからと言って、矛盾は厳正に追求されるべきだと思うけど……」
フェミクマ「上野教授はもうさすがに過去の人物だと言えるのです! 以降、上野教授についての言及はNGだよ」
シンジ「そんな! フェミニストは何かというと内輪揉めをして、『その人物はフェミ内でも嫌われてるからフェミニストの例に挙げるな』とか言うけどさ……」
フェミクマ「はい、これ以上上野教授について云々すると、おしおき対象になりますよ、オマエラ?」
腐女川「ひっ!?
シンジ「仕方ない……ここは上野教授の弟子である千田有紀教授に注目することにしよう」
腐女川「せんだゆき?」
シンジ「ぼくがこの人に注目するきっかけになったのは、今年の『東京新聞』6月16日付のコラムなんだ」

記事(引用者註・『東京新聞』の別な記事)ではむしろ「表現の自由」を守るためにこそ、ヘイトスピーチは取り締まられなければならないことを指摘している点で秀逸である。ヨーロッパの試みの根底には、「表現の自由」の名を借りたヘイトスピーチが、ナチスドイツのユダヤ人迫害などにつながったという猛省がある。

シンジ「つまり彼女は、弱者を守るためなら表現の自由を制限すべきとの考え方の主なんだ。そしてコラムはこう続いている」

米国の法学者の中には、ポルノ一般を、女性という「集団」に対する「ヘイトスピーチ」と考える人もいる。現実にさまざまな犯罪につながっている児童へのゆがんだ欲望のつくられ方を抜きにして、「表現の自由」の御旗を振ることはできないだろう。

シンジ「児ポ法に対して疑問を呈してはいるけれども、これを素直に読めば、彼女の本心は女性差別であるポルノを法規制せよ、というものであるとしか思えない」
腐女川「ちょっと待って……BLはどうなるの、BLは?」
シンジ「BLは少なくとも“女性差別”ではないよね。彼女のBLに対するスタンスは著作『ジェンダー論をつかむ』を見ればわかると思う。そこで書かれた『男同士の絆の裂け目とボーイズラブ』というタイトルのコラムなんだけど――」

 同性愛者の男性が「差別」されるのは,男性でありながら「女」のように男性に挿入されるからです。

 この差別を逆手にとっているのが,主に女性によって描かれ,女性によって読まれる男性同性愛の物語(ボーイズラブ)です。女性は男性のジェンダーに自分を仮託しながら(なので,ボーイズラブではどのような職業に就いているかも重要です)、性の場面においては既存の「男」と「女」の役割を男性2人によって担わすことで,そこに「対等」な性愛の可能性をみようとするのです。「男」と「女」の役割を担っているのは男性ですから両者の役割は基本的に互換可能であり、役割がお互いの了解のもと決められ,読者である女性はどちらの立場にも共感可能であるというわけです。
 ここは女性を排除してつくられる男同士の関係を,女性が自分たちの解放のために読み解くという転換があります。

腐女川「く……くくくくくくく……」
御宅山「な……何でござるかな、その腐女子にありがちな暗く厨二病っぽい笑いは……?」
腐女川「失礼。何だか『腐女子を知らない人』が書いた典型的な文章っぽくて……」
御宅山「せ……千田教授は腐女子には詳しいと思うでござるが……」
腐女川「世代的にも詳しそうよね。でも、腐女子がホモ差別に何か意見しているかのように言うのって、お偉い先生たちが腐女子を利用して言う詭弁の典型例だわ。あたしたちはただ美少年の絡みに萌えているだけで、何かに異議申し立てなんてしたいと思ってるわけじゃないもの」
シンジ「うん、腐女子はホモが差別されてるのされてないのについては、何とも思っていないと思う」
腐女川「いずれにせよここまで矛盾に満ちた文章は、なかなか書けるものじゃないわよ」
御宅山「矛盾?」
腐女川「ほらここをご覧なさい? コラムにはBLキャラについて「両者の役割は基本的には互換可能」と描かれているけど、ならば責め受け論争で腐女子がケンカなんかするわけはないでしょ? あたしたちにとって大事なのは『○○クンがヒロイン(=あたしが自己投影する理想の女性)』であること、なんだから」
御宅山「し……しかしほら、リバシとか言って……」
腐女川「へえ、結構詳しいのね。でもそうした言葉がわざわざ作られていること自体、一般的にはカップリングの受け責めは互換可能ではないということの証明よ」
御宅山「む……むぅ……」
腐女川「そもそもフェミニストが言うように男女の性役割が絶対的に不平等なものだとするのなら、『既存の「男」と「女」の役割を男性2人によって担わす』ことは単なる性役割の“再生産”であり、『そこに「対等」な性愛の可能性をみようと』するという解釈には初めっから論理的破綻があることは明らかでしょうに」
御宅山「し……しかしでござるな……」
シンジ「上野教授も『風と木の詩』が出てきた時、“対等な性”“ジェンダーレスワールドの実験”などといった評を与えていたんだ。でもBLの現在を見る限り、それとは決定的な乖離が生じている。ところが頭のいい人たちの業界ではどれだけ思想と現実が乖離しようとそれには目を塞ぎ、“政治的にこうでなければならないからこうなのだ”といった評を何十年にも渡り罷り通らせ続けるんだ」
腐女川「ホント、あたしたち現場の腐女子からしてみたらメーワクな話よね」
御宅山「う……うるさい、このクソブスが!! お前らオタ女のズリネタなんぞよりサブカル少女漫画における少年愛表現の方が遙かに歴史があんだよっっ!!」
シンジ「御宅山君……ホンネが出ちゃってるよ」
腐女川「ん? ちょっと見て、このコラムのオチって――」

しかしまた,女性によって男性同性愛者の表象がなされることを「差別だ」と感じる男性同性愛者もいて,事情は複雑です。

腐女川「BLはサベツだから取り締まれって言ってるわよ、このアマ!!」
シンジ「あはは……いや、そこまでは言ってないと思うよ……」
腐女川「どうして? 『ポルノはヘイトスピーチだから取り締まれ』と考えている女が『BLはホモ差別だ』と言ってるのよ!? なら『取り締まれ』という発想になるはずじゃない!!」
シンジ「確かに理論的にはそうした結論も考えられるけど、ぶっちゃけるとフェミニストにも腐女子は多いし、そうはならないと思うよ。事実、御宅山君が最初に出したリンク先では、『公共図書館でBLが女子小学生に貸し出されているが、それを禁ずることは表現の自由の侵害でありホモ差別だ』といった主張がなされてるんだから」
腐女川「そ……それもよくわからない理屈だけど……」
御宅山「つまり、フェミニストは表現の自由を弾圧する敵には、断固として戦いを挑むと言うことでござる!! ほら、君の持ち出した『ジェンダー論をつかむ』の『売買春,セックスワーク,ポルノグラフィ』の節を見るでござるよ!! ここで千田教授は『女がポルノを見ることは悪いことではない』と繰り返した上で『ポルノグラフィに出る人は,自発的に楽しんで出ている人も多いでしょう。』と言っているでござる!!」
シンジ「そりゃ確かにそう書いてはいるけど……」
御宅山「それに千田教授の別な著書、『女性学/男性学』ではバトラーというフェミニストの考え方を紹介しているでござるよ。バトラーはドウォーキンやマッキノンの主張する法によるポルノ規制を批判しているでござる。
 そして『喪男の社会学入門』。千田教授と漫画家のカラスヤサトシ氏との対談形式で一般の人向けに書かれた本でござる。ここでも2010年の都の「青少年健全育成条例」の改正について『今回の都条例改正に関しては、私は全面的に反対。』と断言しているでござる。千田教授がポルノの敵などという考えは間違っているでござるな」
 あれ……? あの人の発言っておかしいよな……ぼくの知っている事実と明らかに矛盾する……。

 論破!!

シンジ「それは違うよ。『喪男の社会学入門』を見ても――」

すごく変態なマンガがいっぱいあって、みんながずっとそんな漫画を読んでいると、みんなが女の子にエロい眼差しを向けるようになる、というようなことって、あり得ないわけではないでしょう?

そうすると、悪い作品が社会を悪くするってこともあるんじゃない?

シンジ「と書かれているし、『ジェンダー論をつかむ』を見てご覧。これを読む限り彼女は売買春には徹底的に否定的なんだ。悪名高い矯風会の売買春禁止運動についても、道徳を押しつけすぎている、売春婦を“救おう”というスタンスは傲慢である、といった批判を採り挙げつつ――」

しかし当時,それ以外に売買春に反対するロジックがありえたのかといえば,同情的にならざるをえないところもあります。

シンジ「と、根本のところで肯定してしまっている。いいかい? 彼女は『これこれのロジックで売買春はNGだ』と言っているんじゃない。『売買春を否定するためならいかなるロジックも持ち出せ』と言い切っているんだ」
腐女川「て言うか、この人はそもそも売買春は何でダメって言ってるワケ? ま、仮に美少年AVが売られていようが、あたしは惨事男子にはキョーミないけど!」
シンジ「うん、ここで彼女の売買春批判をまとめてみよう――第一に売買春は経済的不平等があるからいけない、というんだ」
腐女川「ちょっと待って……それがダメなら経済的に全く平等な者同士以外、取り引きはならんということにならない?」
シンジ「もちろん、極度に力関係のある場合、弱い側が不利な取り引きをさせられる、ということはあるけど、それをあらゆる売買春に適用できるかというと――」
腐女川「そ……それもまた極論よね」
シンジ「そして問題点の第二は、ほとんどの場合男性が買い手、女性が売り手である点だというんだ」
腐女川「や……やっぱりそうなるとポルノなんか全部ダメってことになりそうね」
シンジ「これじゃ男は常に悪と言っているのといっしょで、『男はダメだからダメ』というトートロジーでしかないよね。
 そして彼女が第三に挙げているのが暴力の問題」
腐女川「え……? 何それ?」
シンジ「ここでは売買春時における殺人事件を例に挙げるなどしているんだけど、例外事例を挙げて文句をつけても仕方ないよね。彼女のホンネは『売買春行為が暴力そのものである』とでもいったものなんじゃないかな。
 そして第四に売春婦が“スティグマ”を負い、一般の女性と分け隔てられる問題。でも読む限りここでは売春婦がスティグマを負う、つまり差別される原因として“良家の子女は夫以外と性交渉を持たない”ことが前提されていて、しかもそれを悪しきことだと問題にしているのだから、ならば論理的帰結として、問題は“良家の子女”にこそあり、奔放な売春婦は正義ということになってしまうよね」
腐女川「あの……意味がわからないんだけど……」
シンジ「つまりフェミニズムは大前提として、女性が一人の男性の所有物となる制度である(と彼女らが妄想している)結婚そのものを否定しているんだ。だからその理屈では売春婦を肯定せざるを得ないのにね、っていうお話」
腐女川「ご……ごめんなさい、話を聞いてもやっぱりわからなかったわ……」
シンジ「第五に不本意な売買春の強制があり得る、ということ。でもこれも売買春独自の話じゃないよね。
 結局、売春を特化することなく経済問題として扱い、『フェアトレードせよ』と言うのであれば、リクツはわかる。彼女らがそうしないのは、善意に解釈すれば売買春というトピックスが橋下発言を見てもわかるように人々の情緒を強く揺さぶるものだから、という戦略的側面があるかも知れない。でもそれって彼女らが嫌っているはずの“オンナを利用する”行為そのものだよね。意地悪な見方をするならば、ポルノ批判を見ても感じるけれどもやっぱり彼女らは、自分たちの“オンナ”を使うことで、こうしたツンデレ的な形であれ男たちに関わり、“自分が女だ”という自己承認欲求を満たしたい、という欲望があるんじゃないだろうか。
 いずれにせよ、彼女は売買春に反対するロジックを全く構築できていない、と言わざるを得ないよね」
御宅山「異議あり! 貴君はさっきからずっと売買春のことばかりを言っているではないか! 問題はポルノであろう! それも惨事ポルノは我々二次元へと旅立ったオタクには無用の存在!!」
腐女川「くくくくく……こらオタ山」
御宅山「無礼な! 御宅山でござる!」
腐女川「あんたが大事に抱えてるフィギュア、中国製よね?」
御宅山「は? それが何か?」
腐女川「フェミニストの言い分は、売買春には経済的不平等があるからいけない、ってことよね?」
御宅山「それがどうしたでござる!?」
腐女川「未来のフェミニズムの教科書には、中国で美少女エロフィギュアを作ってたこと、売買春の一種だとか書かれてそうよね……」
御宅山「はう……っっ!?」
シンジ「まあ、さすがにそれは冗談だとしても、フェミニストが実写のポルノを禁止せよと言い出した時、御宅山君は自分は困らないからと言って、それに賛成するの?」
御宅山「ぐ……ぐう……しかし、アニメなど非実在少年を被写体にするものについては、無問題だと……」
シンジ「じゃあ、もう少し見ていこうか。アニメや漫画についても『ジェンダー論をつかむ』に書いてあるよ。千田教授は『これはとても難しい問題です。』と留保しつつも漫画が犯罪に繋がる影響力があることを示唆して、例の上野教授は否定していた『ポルノが理論で,レイプが実践』という言葉を引用し――」

しかし,なにを表現しようとしているのかも,考えられなくてはなりません。
(中略)
人種差別を表現することは,実際に人を傷つけることと変わらない行為だからです。

キャサリン・マッキノンは,これら「表象」の理論を使いながら,近年はポルノグラフィという表象,女性を痛めつけるポルノの表象が,実際にポルノをみる人を傷つけ,痛めつけているのだということを理論的に展開しています。表現の自由は,無制限に認められるものではないのです。

腐女川「すごい……結局この人たち、表現の自由は自分たちのお気に召す範囲内って言い切っちゃってるのね……」
シンジ「公正を期しておけば、彼女はここでもバトラーの理論を引いて国家に規制させるべきではないとも言っている。また表現の自由派の論理をもっともだと首肯してもいるんだ。だから法による規制をよしとしない、という点は一応、表現の自由派と一致していると思う」
腐女川「でも『東京新聞』の記事を見る限りは、法的に取り締まれと言ってたけどね」
シンジ「確かに流れからはそう取れるし、恐らくは『そうしたい』というのがホンネであるところを、リベラル的な理念を受け容れてこらえている、といったところが実情だと思う。でも、ひとまずは彼女の法規制はよくないとの理念を信じるとして、でも彼女がその上で結局ポルノを認めないと言うのであれば? 例えばだけど、かつてのPTAが不買運動を起こしたり、漫画の作者をつるし上げたりしたことを思えば、それが法による規制よりマシなのかというと――」
御宅山「ま……マシなのではござらんか?」
シンジ「そうかな? 『女性学/男性学』を見てご覧。さっき御宅山君が引用した箇所、その後にはこう書かれている」

法による規制ではなく、ポルノにみられる意味を揺らがし、提示された意味づけを横領し、読みかえることによって、新しい表現を生み出し、書き換えることに希望をみいだしているといえるでしょう。

シンジ「ポルノのあり方を認めることなく、それを書き換えたいと言っているんだ」
腐女川「書き換えるって……どうやって?」
シンジ「ジェンダーフリー教育が、莫大な予算を投じて子供に偏狭な価値観を押しつけるものだったことを思い起こせば、ぼくには彼女らが法規制よりも強引なやり方を考えている、としか思えない」
御宅山「し……しかしそれは……」
シンジ「児ポ法反対の先頭に立っているリベラリストも、こうしたフェミニストたちの論調を批判するどころかスルーし続けている――いや、それのみならず、彼らの書く漫画評論などを見ると、フェミニストのロジックをそのまま受け容れてポルノを差別表現だ何だと腐していたりする。彼らはあくまで国家権力を相手に政治的闘争をするという目的ばかりが先行していて、漫画だのオタク文化だのポルノだのを守りたいと考えているとは、ぼくには到底思えないんだ」
御宅山「バカな! オタク文化はともかく、サブカルは我々の、体制に対する闘争のための重要な武器だ!!」
腐女川「御宅山君……ござるが抜けてるわよ」
シンジ「もう少し先を読んでいこう」

いたるところにポルノが溢れ、ポルノというファンタジーを撮るために、ドキュメンタリーという名目で、現実の「女」の「身体」に暴力が加えられている日本の現状は、批判されるべきであると思います。

「本当のレイプではない。『演技』なのだから」という常套句がありますが,人に加えられる痛みや暴力に対して,「演技」や「フィクション」は成り立つのか,という問題がたてられると思います。

腐女川「すごい! すごいわ!! すごすぎる!!!」
御宅山「む……むぅぅ……」
腐女川「くくくくくくく……オタ山涙目ね! こうなると『仮面ライダー』とか速攻で放送中止よ! 歴代の昭和ライダーを演じた俳優なんか全員速攻で死刑ね!!」
シンジ「ちょ……ちょっと待って……平成ライダーはいいの?」
腐女川「いいに決まってんじゃない! イケメンだから!!」
シンジ「いや……そういう理屈は……」
腐女川「わかったわよ、ライダーはいいから戦隊は全員死刑」
シンジ「ははは……それはいいとして、一応言っておくと、上の文章はドキュメンタリーAVで強姦致傷が認められたケースについて論じる文脈で出てきたものではある。でも、そうした例外的事例を持ち出して論じること自体が、彼女のスタンスを明確に物語ってもいるよね」
御宅山「ぐ……ぐむむむむ……」
シンジ「『セックスは全てレイプ』といったようなフレーズは、少なくともぼくが見た限り、彼女の文章からは見出せなかった。でも、彼女がそれに極めて近しい考えを抱いていることは、もう疑い得ないと思う――ぼくはポルノが人に悪影響を与えることを否定しないし、嫌いな人、子供に見せないようにするという意味でのゾーニングなら大賛成だ。でも、フェミニズムの歪んだ考えが根底にある反対論は、許容することができない――!!」
御宅山「ぐむ?」
腐女川「反論はできないみたいね」
フェミクマ「うぷ↑ぷ↑ぷ↑ぷ↑ぷ↑ぷ↑ぷ↑ この辺で投票タイムと行くよ? 果たして『フェミニストはオタクの敵か、味方か』? オマエラ、お手元のスイッチで投票してください!」

 投票開始

フェミクマ「はい、投票の結果、『フェミニストはオタクの敵』になっちゃいましたぁ。というわけでこれから、シンジ君に論破されてフェミニストを憎まれ役に仕立て上げてしまった御宅山クンのおしおきを行います」
御宅山「何? 待てよ!? 俺は今までずっとフェミニズムに尽くしてきたんだぜ!? ずっとオタクに『フェミは仲間だ』と言い続けてきたんだ!! 男性差別クラスタを嘲笑ったりして、フェミが正しいと言い続けてきたんだ!! それを……!!」
フェミクマ「今回は超高校級のアルファブロガーである御宅山同人男クンのために、スペシャルなおしおきを用意させていただきましたぁ!」
御宅山「イヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだ!!」
フェミクマ「では張り切って行きましょう! おしおきたーいむ!!」
御宅山「イヤだーーーーーー!!」

 GAMEOVER
 オタクヤマくんがクロにきまりました。
 おしおきをかいしします。

 御宅山のブログが壁面モニタに映し出される。
 アニメに対する当たり障りのない、薄っぺらな感想の書かれたそのブログのコメント欄には――。

 ブログ炎上

 キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい

 死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね

御宅山「う……うわああああ~~~~~~~~~~~っっっ!!! やめてくれ~~~~~~~~~~っっっっ!!!!!」

 気づくと御宅山はショック死していた。

フェミクマ「えくすとりーむ! アドレナリンが染み渡る!」

 フェミクマは一人、はしゃいでいる。
 ぼくらが目の当たりにしたもの……それは絶望。
 これをそう呼ばずして、何と呼べばいいのだろう。
 果たして御宅山君は「オタク」だったのか。
 それとも誰かから何らかの命を受けて、「オタク」を演じ続けていたのか。
 或いは「オタク」でありながら、心底フェミニズムに心酔していたのか。
 それともまた、「オタク」である自分にコンプレックスを感じ、心の隙間を埋めるために権威ある学問としてのフェミニズムに依存しようとしていたのか。
 御宅山君が死んだ今、彼の本心を知る術はない。
 でもぼくは……彼の死を乗り越えようと――いや、彼の死を引きずったまま、前に進もうと思うのだった――。


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