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『カエルの楽園』第三章
 
   
 ハスの上にはまた別のカエルが上がっています。
「あれは誰ですか?」
 ソクラテスはハンドレッドに訊ねました。
「知らんよ。とにかく今日は、デイブレイクが三戒を守ろうというカエルを片っ端から集めて来たんだろうよ。さっきから、三戒を破棄しろというカエルは一匹もハスの上には上がっていない」
 ハスの上でそのカエルが大きな声で叫んでいます。
「わたしは他のカエルを殺すくらいなら、殺される方を選びます。三戒を守って、黙って死んでいきます」
 沼のカエルたちの多くが拍手しました。
 ソクラテスは「殺すよりも殺される方を選ぶ」という言葉を聞いた時、言いようのない違和感を覚えました。というのも、ナパージュに来るまで多くの仲間たちが殺されるのを見てきたからです。殺されるというのは、本当に恐ろしいものです。目の前で母親を殺された、足が生えたばかりのオタマジャクシも見ました。また生まれたばかりのオタマジャクシを殺された母親も見ました。