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なぜ鳥居みゆきの舞台は見る人の「所有欲」を刺激するのか?(前編)(2,829字)

2012/10/02 06:00 投稿

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先日、鳥居みゆきさんのライブ「狂宴封鎖的世界『方舟』」を見た。
ライブというからお笑いの単独ライブを想像していたら、これが完全な舞台劇だった。2時間の公演の最初から最後まで、一本の連続した芝居であり、鳥居さんの他にも出演者がたくさんいた。
それを見てまず驚かされたのが、「とてもお金がかかっていること」だった。セットも豪華だったし、間に差し挟まれるVTRも、アニメやCGを多用したり、遠方にロケに行くなどして凝っていた。小道具も豪華だった。

舞台というのは、まず稽古場を用意したり劇場を借りたりするだけでお金がかかるから、ロングラン公演を満員にできるような劇団でない限り、黒字にすることは難しい。だから短期公演だと採算が取れないので「なぜこれだけお金をかけられるのだろう?」と疑問に思ったのだが、しばらくして、その理由が分かった。「なるほど、これはDVDにして回収しているのだな」。鳥居さんのDVDは、お笑い界の中でも最も売れることで評判が高い。その売上げが最初から見込めているから、舞台にこれだけのお金をかけられるのだ。

実際、観劇している間から、ぼくは鳥居さんの作り出す舞台――鳥居さんの生み出す世界に浸ることに心地良さを覚え、「ああ、この世界をずっと見ていたい」という感覚に浸っていた。そして劇を見終わったら、その世界から離れなければいけないことに残念さを感じ、自分がいつの間にか時の経つのも忘れていたことに気づかされた。
で、当然の帰結として「また見たい」と思ったのだけれど、鳥居さんの公演は4日間しか上演されないので、それは叶わない。であるならば、DVDでもう一度見返したいと思うまでには、さほど時間はかからなかった。

ところで、お笑い芸人でも人気があるからといって、そのままDVDが売れるというわけではない。鳥居さんよりテレビのレギュラー本数が多く、ライブをすれば鳥居さんより観客を動員できる芸人でも、DVDにして売り出してみたら全く売れなかったというのはよくある話だ。
これは数年前のことなのだが、折からのお笑いブームに乗ってとあるレコード会社がお笑い芸人のDVDを出したら、2桁(数十本)しか売れなかったという笑えない話も聞いたことがある。それも並の新人ではなく、誰もが知っているビッグネームがそうだったのだ。
だから、お笑いのDVDが売れるか売れないかというのは、人気であったり売れっ子であったりするのとはまた別の話なのだ。

そう考えると、鳥居さんのDVDが売れることは希有だし価値があることなのだが、そこで今回は、「鳥居みゆきさんのDVDはなぜ売れるのか?」ということについて考察してみたい。
パッケージ商品が売れるというのは収益性が高いので、ビジネスとしては魅力的だ。だから、多くの人が「どうしたら売れるようになるか?」というのをいつも考えているのだけれど、最近ではなかなか「これ」という答えを導き出せずにいる。おかげでパッケージ産業はずっと右肩下がりなのだが、そういう時代に逆行して売れる鳥居みゆきさんのライブを分析すれば、その答えを導くためのヒントになるのではないだろうか。

そうして、鳥居みゆきさんのライブを分析してみたのだが、するとそこで、見る人の所有欲を刺激する四つの理由――というものが見えてきた。以下、それについて詳しく書いていく。
 

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