西條剛央さんの「チームの力」を非常に興味深く読んだ。

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西條さんは、哲学をベースとした「構造構成主義」という人間科学理論の提唱者で、物事の本質を追求することを生業とされている。また、東日本大震災の折、「ふんばろう東日本プロジェクト」というボランティア団体を立ち上げて、大きな成果を残したことでも有名だ。

ぼくは昨年、西條さんと仙台で開かれたドラッカー学会で知り合った。西條さんが、そこで講演されたからだ。そこで西條さんは、物事の本質について追究する流れの中で、ボランティア団体という「チーム」を立ち上げ、それを大きな成果に結びつけた――ということを話されていた。
それで、ぼくはびっくりした。なぜならそれは、ぼく自身の取り組みと、とてもよく似ていると思ったからだ。

ぼく自身も、子供の頃から「物事の本質」に非常なる興味があった。そして、それを追求する過程で、エンターテインメントに関心を覚えた。それは、エンターテインメントが本態的に追求する「人間の価値観」というものが、物事の本質を見極める上で、非常に重要な役割を果たしていると感じたからだ。

人間は、「人間の価値観」を抜きにしては、なかなか物事を見ることができない。そのため、人間が「物事の本質」を見極めようとする場合、そのフィルターである「人間の価値観」を、避けて通ることはできないのだ。
そこでぼくは、エンターテインメントを研究しながら、「人間の価値観とは何か?」ということをずっと追求してきた。すると、それがある程度深まってきたところがあったので、それを基に一つのエンターテインメント作品を実例として作ってみた。すなわち「もしドラ」を著したのだ。

西條さんの取り組みも、これと似たような構造を取っていると感じた。西條さんも、物事の本質を見ていく中で、「人間の価値観」というものをずっと突き詰めてきた。その過程で、それが象徴的に立ち現れる「組織」というのものに大きな関心を寄せ、ずっと勉強を続けてきた。

そうしたところ、東日本大震災が起こったことをきっかけに、ご自身が組織を立ち上げられることとなった。そこで、これまで培ってきた知識や経験を総動員して、それを経営されたのだ。


「チームの力」という本は、そんな西條さんの活動の記録と、その背景となるこれまでの勉強や知識について語られた本である。
これは、ぼくの書いた「『もしドラ』はなぜ売れたのか?」と似ていると感じた。西條さんも、おそらくその知識と経験とを書き、伝えることは、必ずや誰かそれを必要としている人にとって貢献になるという考えがおありだったのだろう。ぼくも、そういう思いで「『もしドラ』はなぜ売れたのか?」を書いたからだ。

この「チームの力」という本は、一人の人物が何かことをなす過程で、どのような知識と出会い、またそれをどのように活用したのか、あるいはそこでどのような行動を取ったのかということを知りたい人にとっては、得がたい内容となっている。
この本を読んで、ぼくは非常にインスパイアされた。これから何かを考えたり、したりするときに、ここに書かれていることを参考にしたり、指針にしたりできると感じたからだ。


筑摩書房特設サイトで、この本の「序章」と「あとがき」全文が無料で試し読みできます。

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