「赤ひげ」は美しい映画である。黒澤明監督が脂が乗りきっているときに作った、最高傑作の一つだ。
上映時間は185分と長いのだが、見ていて飽きない。
いや、実は初めて見たときは途中でちょっと飽きたところがあって、眠さをこらえながら見ていたからあまり好きにはなれなかったが、後年見返したときその真価に気づかされ、今では黒澤映画の中でも一、二を争うほど好きになった。

そこで今回は、「赤ひげ」の魅力と、その正しい楽しみ方のようなものを書いてみたい。


「赤ひげ」というのは、加山雄三演じる保本という若い医師が、さまざまなできごとを通して成長していく成長譚である。しかし、主役はこの保本というわけではなく、保本が師事する新出というベテラン医師だ。この新出、ひげが赤いことから「赤ひげ」と呼ばれているのだが、これを三船敏郎が見事な演技で演じているのである。

保本はエリートで、もともとは幕府に召し抱えられることになっていたが