ぼくはある時、「映画とは結局、役者の演技こそが最も重要だ」という結論に至った。

それは、一つにはぼくがくり返し見る映画というのは、結局どれも役者の演技が素晴らしいものばかりだということに気づいたからだ。ストーリーが面白いからとか、カメラワークが素晴らしいからとか、音楽が素晴らしいという理由で、映画をくり返し見たことはなかった。映画に魅入られる時は、いつも役者の演技に魅入られていた。これまで紹介してきたどの映画も、役者の演技が素晴らしいものばかりだ。

もう一つ、ぼくが「映画とは役者の演技のことだ」という結論に至ったきっかけがあった。それは、ある作品を見たことだ。そこで、その作品の監督がどのような演出をしているかを知った時に、「やっぱり映画とは役者の演技のことなのだ」と、その考えを強くするに至ったのである。

その作品こそ「赤ひげ」だった。この作品を見て、ぼくは「映画とは役者の演技だ」と確信したのだ。