登戸での事件があった後、福岡で40代の男性が家族を殺そうとした後に自殺した。またその翌日には、元事務次官がゲームばかりしていた自分の息子を殺すという事件が起きた。
これらはおそらく、登戸の事件が影響している。登戸の事件が起きた影響で、全国の「中年引きこもり」がいる家庭で、少なからずトラブルが起こっているのだ。
そのトラブルが極端にこじれると、上記二件のような殺人事件になる。そう考えると、事件にこそなっていないものの、今まさに深刻なトラブルに陥っている中年引きこもり家庭は全国にたくさんあるだろう。「無敵の人」ともいわれる中年引きこもりの問題は、今後ますます深刻化していくと思われる。
ところで、なぜ中年引きこもりが生まれたかというと、1980年代に起きた社会の大きな変化に多くの人がついていけなかったからだ。特に、中年引きこもりはほとんどが男性なので、性の問題が大きかった。
日本の20歳の男女比率は、80年を境に男性の方が多くなった。それに伴い、必然的に「パートナーのいない男性」が多くなった。
しかし社会は、パートナーのいない男性をどのように受け入れたらいいか、その対処方法をまだ知らなかった。なぜなら、それまでは女性の方が多かったので、その心配がほとんどなかったからだ。
そうした状況の中で、パートナーのいない男性はどんどん自信を失っていった。なぜかというと、社会はまだ前時代の価値観を引きずっていたから、パートナーのいない男性に対して「よほど魅力がないんだろう」と差別的な眼差しを向けたからだ。
そうして、いわゆる「非モテ」が社会の中で虐げられるようになった。それは概ね2005年くらいまで続いた。1980年から2005年までの25年間で、虐げられた非モテが大量に生産されたのだ。社会は彼らを「ダメなやつ」と蔑んだ。おかげで彼らは自信を失い、引きこもるようになった。それが、中年引きこもりが大量生産された一番の要因だ。
しかも、そうした状況に教育の崩壊(学校の崩壊)や経済の崩壊(就職氷河期)が重なった。彼らは本当に踏んだり蹴ったりだった。そんな彼らの最後の逃げ場が自室だった。家の部屋に引きこもるようになったのだ。
だから、中年引きこもりが大量に生まれた最大の理由は「社会」といえる。そして、それへの対応を誤った多くの大人たちだ。
では、この問題をどう解決するか?
彼らをどう立ち直らせるか?
それは、まずいえるのは、「とても難しい」ということだ。そのため今の社会は、はっきりと口にこそ出さないが、彼らを排斥する方向へと動いている。そうなったのは自己責任、あるいは家族の責任ということにして、彼らがあまり社会に迷惑をかけない形で死んでいくことを密かに望んでいるし、そのように仕向けている。
それは、一つの合理的な選択であることは間違いない。しかし、人間はそう単純ではない。彼らを排斥することが最善の方法であると分かっていても、一方ではそれに納得できない思いを抱えている。なんとか彼らを救いたいとも思っている。
ぼくもそうだ。ぼくも、彼らを救いたいと思っている。なぜなら、ぼく自身もその年代の中で育ち、おかげでひどい青春時代を送り、引きこもりになってもちっともおかしくなかったからだ。そこで人生を狂わされて、自殺をしたり人を殺したりしても全然おかしくなかった。
ぼくは幸運にもなんとかその状況を乗り越えることができた。しかしそれは単に幸運だったというだけで、運に恵まれていなかったらどんなにひどいことになっていたかしれない。
それもあって、中年引きこもりを救いたいという気持ちがあるのだ。
中年引きこもりを救う方法としてぼくがまず提唱したいのは、上記のような状況を「把握する」ということだ。「問題解決」の第一歩は、一にも二にも状況を把握することだ。そこから全てスタートする。
だからぼくは、上記のような現状を彼らに伝えたい。しかしぼくの言葉は、なかなか届かない。このメルマガを読んでくれている人の中に、中年引きこもりはいないだろう。だからぼくには、何もできないかもしれない。
しかし、それでも伝えていくしかないと思っている。そのためぼくは、この問題の状況をもう少し整理して、分かりやすくして多くの人に伝えていきたい。そうして中年引きこもりが、状況を把握し、問題を解決していくことの少しでも助けになればと思っている。
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